表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

番外・地味王子と乙女ゲー。(パラレル)

本編とは関わりのないパラレルワールド軸のお話です。

だいたいエヴァン17歳ぐらいの時。キャロル視点。

 目が覚めたら、目の前に半透明のウィンドウがありました。

 

(なにこれ。なんの冗談?)

 

 手を上げて触ってみると、ぽわっと波紋のようなエフェクトが散る。スマホゲーでよく見たタップエフェクトだ。まさか転生してから見るとは思わなかった。

 

「何してるの?」

 

 ウィンドウを触って、ドラッグで動かせることに気づいて視界の中を引っ張り回している私をフィオナがじーっと見つめる。これ見えないの、と尋ねるとぺちぺちと頬を叩かれた。寝ぼけてるとでも思われたのだろうか。

 

「顔洗う? 水汲んでこようか」

「お願い」

 

 さっと着替えてたらいを手に出ていくフィオナを見送り、改めて目の前にあるウィンドウと向き合う。パステルピンクの角丸長方形をゴールドの細くエレガントなフレームで縁取ったそれの左上には「カレとの親密度」と記された白いプレートがくっついており、ウィンドウ内には六人の男子の顔と名前とその下にゲージが表示されている。

 

「なんでこの六人……?」

 

 ウィンドウに表示された六人の顔を見比べて、うーんと唸る。三人くらいは見覚えがあるが、これといって親しくしているわけでもない。残り三人は完全に初見だ。

 よもやギャルゲか、いや男子だから乙女ゲーなのか。そういやこの学校イケメン多いもんな、と納得しかけて地味顔もいるわと思い直す。そもそも色も匂いも感覚もある時点でこれは現実なのだ。そこまでリアルなVRは記憶では開発されていなかった。


「ていうか、なんでこんなにゲージ進んでるんだ。会ったこともないのに」


 冷静にウィンドウを見直して、なんかやけにゲージが溜まっている男子の顔アイコンにツッコミを入れる。名前はジョスリーというらしいが、ほかが一割二割くらいのところを彼だけゲージが六割くらいピンクに染まっている。面識がないのに親密度六割とは何事か。


「夢かな……いや夢じゃないわ(ひやふめひゃらいわ)


 試しに頬をつねってみて、鈍い痛みにこれが現実と改めて思い知る。顔を洗うまでもなかった。ところがどっこい……夢じゃありません……! 現実です……! これが現実……! なんてオタクしぐさしてる場合じゃない。


「消えないのかな、これ」

 

 ぐいぐいとドラッグしたりばんばんと叩いたりしてみるが、ウィンドウが消える気配はない。これでは視界の邪魔ではないか。とんだクソUIにもほどがある。

 悪戦苦闘した末、とりあえず胸にくっつけるように移動させれば視界を遮らないという結論に達した。

 

 ◇◆◇◆◇◆


 授業の後。男子に混じって戦闘訓練を受けているフィオナを訓練場まで迎えに行くと、例のゲージ六割ジョスリー君を見かけた。


「何してるの?」

「いや、ちょっと、虫が飛んでてね」


 不思議そうに見てくるフィオナには適当にごまかしを言って、胸の前に置いていたウィンドウを引っ張り出して顔を見比べる。遠目なので目の色なんかはよくわからないし髪も若干乱れてはいるが、髪色と顔立ちは顔アイコンと一致する。

 しかし現物を前にすると、やっぱり忘れてるだけとかではなく本当に初対面だったように思う。なんで「好感度」じゃなくて「親密度」表記なのに面識がない相手がゲージ六割なんだ。解せぬ。どういうことだってばよ。


 ない頭を絞ってうんうん言っていると、ふっとジョスリー君がこちらを見た。


「ジョスリー様!」


 背後から聞こえたかわいい声になんだなんだと振り向く前に、茶髪の女の子がふわっと良い香りを漂わせながら私の横を駆け抜けていく。スカートをはためかせる女の子が向かったのはジョスリー君の前だ。

 女の子はジョスリー君の知り合いなのか、ジョスリー君はこころなしか嬉しそうに女の子に対応している。女の子もハンカチを出してジョスリー君の汗を拭ってあげたりして、仲睦まじい様子だ。


 と、そんなふたりを微笑ましく見守っていたところでキラキラシュワァンみたいな音が鳴り響く。現実っぽくないいかにもサウンドエフェクトな音にすわ何事か、と辺りを見渡すが何もない。

 しかしよくよく見ると、ウィンドウ内部には変化が起こっていた。ジョスリー君のゲージがちょこっと伸びているのだ。


「……そういうことかぁ〜」

「何が?」

「あーいや、うん。ちょっとね」


 首を傾げるフィオナになんでもないですと手を振って、ウィンドウとジョスリー君達を見比べる。

 きっとこの親密度ゲージは私ではなく、あの女の子と男子の親密度を示しているのだろう。だから私が知らない男子の顔が表示されていたのだ。

 いやなんで他人の親密度が確認できるねんという疑問もあるが、かの古典名作ギャルゲにおいて好感度は友達に電話して聞くものだった。別に私とあの女の子は友達でもなんでもないけど、そのうち仲良くなって好感度のことを教えてやりなさいよみたいな意図でウィンドウが出てきたのかもしれない。たぶん。


(しっかし……エヴァン様、この中にいないんだなあ)


 ウィンドウの意味を理解したところで改めてあの女の子にとっての攻略対象とおぼしきジョスリー君以下六名の顔アイコンを眺めてみるが、その中にはエヴァン様の顔はない。

 おかしくないか、王子様やぞ。ロイヤル中のロイヤル、みんなの憧れやぞ。それこそパッケージヒロイン、いやヒーロー? になるべき器だ。神出鬼没と噂だから隠しキャラ扱いなのか、それとも王子様なんて恐れ多い! とあの子が思ってて攻略対象から除外されているのか。


 デビル腕組みをしてウィンドウとにらめっこをし、ページ切り替えとかないんかなと触ってみると、ウィンドウの右端をタップした時にスクロールバーっぽいものが表示された。バーの幅的に二ページ目があるようだ。

 スクロールバーに指を置いて、ぐいっと下げるとページがプルダウンして二ページ目が表示される。新たに現れた六人の顔アイコンの中には、一つ見慣れたものがあった。


(いやお前はいるんかい!)


 二ページ目の下段右、二割ほど溜まったゲージの上には「フィオナ・リース・クレイン」の名前といつもの澄ましたフィオナの顔が表示されていた。

◆キャロル・ステルラ・ミズーイ


男爵令嬢。

気付いたら知らない女子の親密度ウィンドウが見えていた。おったまげー!!

なおギャルゲは遊んだことがない。乙女ゲーも遊んだことがない。RPGやハクスラでレアドロ集めをするのが好き。



◆フィオナ・リース・クレイン


男爵令嬢。

イケメンなので攻略対象に入っている。



◆エヴァン・ライーズ・ルヴィルカリア


ルヴィルカリア王国第三王子。

影が薄いので攻略対象に入っていない。ファンディスク対象とかでもなく、そもそも描写がない。



◆ジョスリー君


メイン攻略対象。爽やかでいいヤツ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ