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6.9 アンサー


「俺は行くのは構いませんよ。だけど、その代わりに1つだけ、お聞きしたいことがあります。サクラを人間にする方法はないでしょうか? 例えばここに来た時のように『真実の現実』に行くためのエクスチェンジでサクラを人間として変換するとか、何か方法は考えられないでしょうか?」


 シンタロウからすれば全てがもどかしかった。サリリサの後に続く言葉が見当たらず間延びした空気を黙ってやり過ごすことが出来なかった。だからその空気を割くように唐突にシンタロウが切り出した のだ。


「結論から言えばシンタロウ君が今言ったその方法でサクラさんは人間に変換移行することが可能よ。でも、私たちの常識からすればヴィノから人間への変換移行を行うことは、本来は不可能なことだってことは知っておいてほしいわ。サクラさんだけが常識と違ったということよ。もうすでにヴィノから人間への変換が可能というバリデーションの結果が出ているわ。バリデーションの結果に間違いがないことは私も確認済みよ。私も色々なパターンを検証したけどこんなことは今まで1度もなかった。私たちもなぜそれが可能なのかまだよく理解できていないの。もしかしたら『真実の現実』からコンタクトがあったことに起因しているかもしれないし、その逆かもしれないわね。特別な存在だからコンタクトがあったと考えた方が自然かもね。でも二人とも心配しなくてもいいのよ。もしエクスチェンジで問題が発生したとしてもこちら側のサクラさんが起きることになるだけだから蓄積データも何もロストする危険もないわ。これは取引でも何でもないから試してみるといいわ。私たちもできる限りのサポートをするつもりよ。よく調べてみたいのよ。」


 シンタロウはサリリサの話を聞きながらサクラを見る。サクラもシンタロウを見ていた。サクラはシンタロウと目が合うとサムアップしてウインクを返す。


 サリリサがサクラを人間にできるとあっさりと答えたのでシンタロウは拍子抜けしていた。ノア・バーンズはインターコネクタを通る際に人間とヴィノでは性能差がありすぎるといった。マテリアルに投射するにはヴィノのサクラが持つ物質をただ移行しただけでは人間を表現するための物質も密度も足りないのだろうと容易に想像することが出来る。シンタロウはそう考えていたから、ティア2現実に出る際のエクスチェンジにも期待しなかった。


 そして『真実の現実』に出るためには正真正銘、本物のフィジカルが必要になる。これまでの中でもっとも条件が厳しいのではないだろうかと考えていた。だから、シンタロウはこの話は簡単に終わらないだろうと覚悟していた。そして簡単に引き下がるつもりもなかった。それなのにサクラが人間に変換が可能かどうかのバリデーションがすでに通っているという。真実の現実に出るまでもなくそれは実現できる。これまで一度もないというのに。


 このタイミングで『真実の現実』の住人からメッセージがあったことと、俺とサクラが『真実の現実』に行くメンバーに選ばれたことはどちらも関連しているとしか思えなかった。あまりにうまくいきすぎているので心配性のアールシュではなく、シンタロウですら逆に不安を感じた。サクラは本当に人間になれるのだろうか。人間になれたとして、それは俺やサクラが思い描いていた『人間』なのだろうか。シンタロウはこの事を『真実の現実』の住人に直接確認するまでまだ安心できないと考えた。


「もうすでにエクスチェンジを開いてくれているの。いつでも行くことができるわ。」


 サリリサは目を輝かせ、感極まったかのように声を震わせて言う。エミュレータ事業の責任者のサリリサはティア1現実とのコンタクトがどれほど重要か当然理解している。この機会を逃すはずがない。それはアールシュにとっても同じだった。サリリサと友好な関係を築くことはアールシュの世界にとって最重要事項だ。


 アールシュは、ずっと耐えてきたその時が来たのだと思った。あと少し、そう思い続けた時がまさに来たのだ。アールシュはシンタロウとサクラの顔を確かめるように見ると2人はアールシュの考えが分かっている、と言うようにうなずいている。


「私たちもいつでも大丈夫です。行きましょう。」


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