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6.2 ストラクチュアル

 エミュレータへの移住に際して先行して進められたのは、当然エミュレーションテクノロジーだった。快適に過ごすためには双方向でそのレベル差をなくす必要があった。そのため、その他のテクノロジーについては未だに技術格差が見られ、ティア2現実から急ピッチで学んでいるところだ。


 しかし、貿易分野ではティア2からティア3へのテクノロジーの輸出の一方向だけが全てではなかった。ティア3の文化は地球史が異なるティア2と当然大きく異なったものだ。ティア3への初期移住者は特に異なる特徴を持つ芸術やファッションに目を付け、それらをティア2へ輸出し始めた。ティア2の裕福層から広まったティア3の芸術やファッションはティア2の一般層にまで広がり、流行を巻き起こした。またその他にも、エミュレーション特有のテクノロジーを使ってティア3で生み出された技術のアイデアや概念がティア2に輸出されることもあり、フェアな関係を持続し続ける原動力になっている。


 今日、アールシュたちをアテンドし、エミュレータ史やそのテクノロジーを解説してくれたのはティア3住居リージョンのエミュレータ事業の創設者であるイアン・ベイカーだ。イーサン・エヴァンズは彼の話を聞きながら不思議な感情を抱いていた。このリージョンには自分が存在しない。そして、曽祖父が作ったリプロジェン社も存在していなかった。オリジナルのエミュレーションデータからの分岐のはずなのに。それなのにUCLのような組織体とエミュレータ研究所は存在しているのだ。そしてイーサンが自ら始めたエミュレータ事業はこのリージョンではこのイアン・ベイカーと名乗る男が創始者だという。私は地球史の流れの中で替えが利くロールをたまたま担っていたに過ぎないのだろうか。


「この後はエミュレータ事業責任者のドリューがご案内いたします。私はここで失礼させて頂きます。あぁ、それと、皆様はサリリサ女史にお会いするのですよね。彼女にお会いしたらくれぐれもよろしくお伝え下さい。私も彼女にお目にかかれる機会はめったにございませんので。」


 そう言ってイアン・ベイカーはカンファレンスルームを後にし、ドリューと呼ばれた女性がイアンの代わりにアテンドを続けた。イアンの言っていたサリリサはティア2現実の出身者でティア2現実のエミュレータ事業責任者だ。


 世界は少しずつ形を変えながら階層構造を成している。サリリサはこの住居リージョンに存在しないし、おそらくドリューはサリリサの世界であるティア2現実に存在しない。それでも、彼女たち2人はそれぞれがエミュレータ事業の責任者だという。


 そこに行きつくまでの環境もいきさつも全く異なっているはずだ。私やイアンと同じように彼女たちもまた地球史の流れの中でたまたまそのロールを担っているのだろうか。私が生まれて自分自身に内省されて勝ち得たものだと感じていた使命感は私だけのものだったのではないのだろうか。イーサンはそんなことを考えていた。


 イーサン・エヴァンズたちがいる世界の外側にサリリサたちがいるティア2現実と呼ばれる世界が存在する。その名前の通り、ティア2の世界ではそこが現実だ。しかし、同時にそこはティア1の住人が作り出したエミュレータの内部にすぎないことを意味する。そして、サリリサたちの世界のさらに1つ上層にはティア1が存在する。ティア1現実をノア・バーンズは『真実の現実』と表現していた。ティア2現実の住人でさえ、未だかつて誰一人として『真実の現実』に出たことがない。


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