表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/81

4.8 インターコネクト

 アールシュがノア・バーンズから聞いたティア2現実に出るための手筈を皆に説明した。まず、インターコネクタを通ってアールシュたちと同階層にあるティア3住居リージョンに移行する。インターコネクトの設置ポイントはアールシュたちが見つけたディフェクトそのものだという。


 その後、しばらく住居リージョンで過ごし、住居リージョンにバイタルを定着させる。バイタルを定着させる理由は、ティア2現実側に用意するフィジカルのプロビジョニングに必要だという。住居リージョンへの移行はデータのコピーで済むがティア2現実では培養した本物のフィジカルが必要になる。プロビジョニングとはそれを準備するということだ。フィジカルの準備出来たら、エクスチェンジと呼ばれる装置を使って、フィジカルに蓄積データを移す。そうしてようやくティア2現実に出ることができるのだという。


 ティア3住居リージョンで各自のバイタルが定着するまでの期間、学校か研究所に所属して過ごしてほしいということだった。アールシュたちは学校と研究所でそれぞれ4名ずつに分かれることにした。学校に通うことにしたのはシンタロウ、サクラ、そしてソフィアとグエンに決まった。ソフィアは子供のお守りは嫌だと駄々をこねたがスカイラーに説得され、なんとかそれを承諾した。研究所にはアールシュとエヴァンズ教授、そしてスカイラーとチューが所属することになった。


 もし、ティア2現実がティア1現実とコミュニケーションがとれていれば、ストラクチャー上仮想に分類されるティア2現実でもフィジカルはいらないはずだとアールシュは考えた。だからティア1現実とコンタクトが取れていないというノア・バーンズの説明は事実なのだろう。


 ディフェクトへ続く地下トンネルはあの日以来封鎖されていた。開通時に担当したジェフ直属の部下が毎日訪問し、異変がないか確認している。ディフェクトを覆ったフェンスを開けるとそこには以前と比べ半分ほどに小さくなった白い空間があった。今では人が1人立ったまま通れる程度の高さと幅になっていた。ジェフの部下によるとノア・バーンズから連絡があったという日の2日後から大きさが変わったのだという。


「なんか近くに来ると怖いんだよなこれ。ほんとにこれに入るのかよ。」


 ソフィアが声を上げる中、シンタロウが先頭を切って中に進む。背中が見えなくなるとサクラが続いた。サクラはノア・バーンズに言われた通り、グエンとチューそれぞれの口内の粘膜をこすり取った脱脂綿入りの試験管を持っていた。


 あきらめたようにソフィアが中に入る。ソフィアは中に入る条件として、ロープを体に巻いて外に待機したジェフに持たせていた。アナログだけどそれが一番安心できそうということだった。グエンとチューにはニコラ社の衛星11179号を使った通信方法も教えているので、もしVRSで直接通信できなくなったとしても向こう側との連絡が取れるはずだ。アールシュ、スカイラー、エヴァンズ教授の順番で中に入る。


 ジェフ・ニールは全員が入るのを見届けた後、軽くロープを引っ張ってみた。なんの手ごたえも重さも感じない。恐る恐るロープを引いてみるとその先にはソフィアの腰回りで止めたはずのロープの輪だけが残り、他には何もなかった。ジェフはただ無言で口をゆがめ、部下を見た。部下はジェフに向って両手を広げ、首をゆっくりと振った。


 ディフェクトに入るとただ真っ白で他に何も見えなかった。自分のそこにあるはずの手も足も視認することができない。だが確かにそこに自分の感覚はある。


「サクラいる?」


「シンタロウ? ここにいるわ。」


 すぐ近くからサクラの声が聞こえるが姿が見えない。本当に外部から聞こえているのだろうか。ゆっくりと後方に手を伸ばすと人の腕に触れた感触があった。


「シンタロウ? 誰かの手が私に触れている。」


 シンタロウの手がサクラの腕に触れたのだった。少し安心して、シンタロウは自分自身すら見えず、ただ感覚と声だけが存在する中を真っすぐに進んだ。地面を踏みしめ、歩みを進めていると認識しているが、それ以外に何も見えないし感じることもできない。本当に進んでいるのかどうか定かではなかった。


 次第に歩いているという感覚がなくなり、膝から下を動かしている感覚すらなくなってきていた。その感覚が全身に広まるようでシンタロウはなぜか笑いだしてしまいそうだった。自分が声を出しているのか、それとも自分の中だけで考え事をしているのかただの耳鳴りなのか区別がつかなくなり、次第に笑いだした自分を止めることが出来なくなっていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ