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3.6 疑念


「なるほど、音とコードは別物ということか。それで色々と見聞きした情報の整合性がつかないことがあるのか。そして、プロセッサの有無で別のソースを元にしたものを聞かされていた。だが、プロセッサを接種していない人間が聞いていた音が、プロセッサ持ちに聞こえなかったというのはどうしてそうだとわかるんだ? それに、私のプロセッサは確かに停止していたんだ。その間も声は聞こえていた。それに声の方のコードはエンコードされていた。メッセージの前半はデコードできたが、ホルモンを調整したタイミングでデコードができなくなってしまった。これらはどういうことなんだ?」


 アールシュがシンタロウに聞く。


「プロセッサ持ちが聞いていたのは、その音と音声が蓄積データに直接インポートされたもので、追体験する際に聞いたものだったからだよ。純粋に外部からのインプットデータから得た記憶ではないことは蓄積データとライフログを照合すればわかるはずだしね。俺のデータには外部からのインプットデータとして音も音声もなかったからね。声と一緒に流れたパルス型のコードが最初にプロセッサで音声を生成して蓄積データに直接インポートしているんだ。プロセッサを接種していない人が聞いている音と同じタイミングでね。内容は覚えているけどPA上のデータとして残っていなかったでしょ?音の方も同じ手法ってこと。」


「ローカルスタックにあったのは追体験したばかりのデータということか。私はそれを別の人間のPAにゲストモードで入ってデコードしていたんだ。ホルモンを調整したら言語として聞こえなくなったのは?」


「音の方のコードがスキャンした結果を解析して、声の方のコードが動作するようにホルモンを調整していたんだ。つまり個人のプロセッサに合わせた実行コードを生成していたということ。えっとアールシュって呼んでいい? アールシュの蓄積データにインポートされたのは、あくまでもホルモン調整してある場合にだけ言語として意味を持つデータなんだ。追体験して、音声として聞いてしまえば本当の記憶になってライフログになるけど、追体験する前にホルモン調整してしまったら、言語として認識できないものとして本当の記憶になってしまったということ。『あの日』のホルモンバランスに調整し直して、蓄積データの方からもう一度、読み出せば聞き取れる言語として追体験できるはずだよ。理論上はね。」


 シンタロウが続ける。


「でも、アールシュは言語として認識できなかっただけでしょ? 俺なんか『鐘の音』の4段階目のスキャンで外部ブロッカーがサチって泡吹いて気を失ったよ。身体にかなり負担がかかる攻撃的なコードだよ、あれは。あのまま気を失っていたら、ブロッカーが壊れるまでスキャンされていたかもね。そしたら記憶が混濁してしばらく入院ものだよ。すぐにサクラに起こしてもらったから助かったけどね。」


 流されていた主観映像が揺れて倒れ込む。一瞬映像が切れたがすぐに起き上がった映像が続いた。これはシンタロウのライフログから切り出した主観映像ということか。ソフィアが気を失ったのもシンタロウと同じく個別カスタマイズの外部ブロッカーをしかけていたからだろう。一般的なブロッカーは通常、OS内に存在する。OSの外側で機能するカスタマイズブロッカーを仕掛けるには自分自身でプロセッサ上のコードをメンテナンスする必要がある。それは一般人には容易なことではない。もしかしたら、ある水準以上のレベルのソフトウェアエンジニアをあの場に立ち会わせないように意図したのかもしれない。


「でも、サクラさんのPAもハングしていたんだろう?」


 アールシュはそういってサクラと呼ばれた女の子に声をかける。


「いいえ。私の方はハングしなかったんです。シンタロウを起こしたら、すぐにシンタロウのPAはハングしてしまったけれど、独立した方の私は機能し続けていました。」


 サクラの答えを聞いてアールシュは困惑した。サクラの言葉をそのまま解釈すれば、サクラは人間ではなく自分のことをシンタロウのPAだと言っているように聞こえる。シンタロウが論文に書いていた自立稼働させていたPAとはサクラのことだったということなのだろうか。


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