番をたずねて三千里~異世界ですが?
よろしくお願いします!
筆者は名づけが苦手です。
俺は獣人国の第2王子のリル。オオカミの獣人だ。
この度、自分の番を求めて旅をしようと思う。
毎日のように城におしかけるメスの獣人にもウンザリしてるしな。
「おい!本気なのか?お前がいないと国が回らないじゃないか!」
「何を言っているのですか?兄上は立派な皇太子でありますよ。そのような戯言、どこで覚えたんですか?」
「いや、フェンの言う事も一理ある」
フェンというのは兄上のことで、兄上の名前が“フェン”で俺が“リル”。
二人合わせて“フェンリル”というわけだ。
まったく……父上は俺の下に弟でも生まれたらどうするつもりだったのか?
「兄上の仕事はバッチリじゃないですか?俺もここ数年は国内の騎士団に所属していましたし」
「そんなわけで俺は俺の番を求めて旅に出ます。いいですね!」
二人は黙っているが、沈黙を肯定と思うことにして俺は国を出た。
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長かった……。実に長かった……。
途中に何度死というものを感じたことか。騎士団で鍛えていてよかった。それと先祖の血にも感謝だな。嘘か誠かフェンリル狼が国の始祖ということになっているからな。
巨人の国では踏みつぶされそうになり、エルフには射かけられ……。
その間国について考えたが。
まず、国の名前だ。
“タイダ王国”
始祖が「国民が怠惰でも暮らしていけるくらい豊かな国になるように」この名前らしいけど……。
いやぁ、怠けてたらダメだろう?多少は働かないと。鉱山があっても掘らないといけないし、耕さねば良い土地も枯れてしまう。
“怠惰でも暮らしていけるくらい豊か”ってどんなんだ?
など考えたもんだ。
そんなだから迷子になったわけだが……、おかげで番の匂いをたどる事が出来る距離までたどり着いた。
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そして現在!めでたく!番となる!メスを見つけた!
名をイジョウ=ユカリというらしい。ユカリがファーストネームということだ。イジョウはファミリーネームと言ってた。
小柄で黒髪・黒目。俺は彼女は細身だと思うのだが、“あるばいと”なるもののためには丁度いいらしい。
“どくも”をしていると言ってが、いったい??
彼女には兄上が2人いる。
上の兄上がマサル殿、下の兄上がカケル殿。
2人とも非常に友好的だった。
特にカケル殿は「義兄上殿、お背中をお流しします」と言っても、「うむ、苦しゅうない」と裸の付き合いを簡単にできそうだ。
この件に関してはユカリに「カケル兄は調子に乗りすぎ!」と怒られていたが。
家族は両親が早くに亡くなって3人で暮らしているそうだ。
“あるばいと”をそれぞれがして家計の足しにしているらしい。
ユカリにはもちろん、2人の義兄上に俺が獣人国の王子であることは話してある。
3人揃って、俺の耳やら尻尾のモフモフを堪能していた。
そんなものでいいのか?
望めば俺の国から金塊をここまで運ぶこともできる。……多分。
色々迷っているうちにここはどこなんだろう?
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私の番っていきなり獣人が押し掛けてきた。名前がリル。狼の獣人って言ってた。
獣人ってのはマジだと思う。だってモフモフした時に耳も尻尾も外れなかったし、極上の毛皮の触り心地だった。
極上の毛皮の触り心地は知らないけど、最高だった。
私はそんなリルの番って、伴侶?
いや、私はしがないただの高校2年生ですけど?
読モしてるからちょっと違うのかな?でも家計のためだし。プロポーションは維持しないと!
今日は休日で学校も休みで、バイトの予定が入ってる。
うーん、リルも連れていくかぁ。どうも世間知らずだし。
今どき、テレビでビビったり(ふさふさの尻尾がぶわっと警戒丸出しだった)、スマホも知らないみたいだし。
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今日はユカリの“ばいと”先に連れて行ってくれるらしい。
うむ、どのような人物が俺のユカリを労働力としているのか見極めなければ!
「リルー」
ん?義兄上殿の声がする。この声は……カケル殿だな。
「ユカリの仕事はホレ」
そういってカケル殿は一冊の書物を俺に渡してくれた。
んなっ⁈ 俺のユカリがいっぱいいる。紙の上だろう?
「ユカリは呪いでもかけられて紙の中に入れられてしまったのか??」
「違ってねー。これは“写真”って言って、ユカリの肖像画が描かれる?みたいな?」
俺は一息ついた。肖像画なら、俺も描かれた。本人が無事ならよいのだ。
それにしてもよく描かれている。
「ほらー」
とカケル殿は“すまほ”とやらで俺の“しゃしん”を描いた。
「写真は“撮る”っていうんだよ。“描く”じゃないよ」
その小さな機械には俺の小さいバージョンが“撮って”ある。
「いつの間に?!」
「へ?……ちょっとパシャとか音聞こえなかった?」
そういえばそのような音が聞こえたような……。
「その時に撮ったんだヨ~。リルは全く体に異変がないでしょ?ユカリの仕事はねぇ、服を見せる仕事なんだ。だから、どんな服でも着れるように体形の維持は欠かせない。あいつはかなりストイックだよ」
“すといっく”……またよくわからない言葉が登場した。
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「リルー、出かけるよ」
ユカリが言ったのでついて行った。
義兄上達が「あれじゃあ狼というか飼い犬みたいだな」というのは聞かなかったことにしよう。
俺の聴力……他の獣人の群を抜いていいんだけどなぁ。なんなら兄上よりも父上よりも良い。
ユカリの職場に着いた。カケル殿よりもなんだかごつい“かめら”がある。
道すがら職場の道具とかの説明をユカリから聞いた。俺もカケル殿に教わった話をした。
「はははっ。呪いで紙の中?いつの時代よ?」とユカリは笑う。
笑ったユカリも可愛い。
職場でのユカリは何着も服を着て、いろいろなポーズで“写真”を撮っていた。
「“撮ってた”んじゃなくて、“撮られてた”かなぁ。この仕事はモデルって言ってね、服を見せる仕事なの。自分は二の次!でも、かといって手は抜けないわよ!プロポーションの維持は結構大変だし」
“ぷろぽーしょん”……難しいなぁ。体形の維持ってことか?
「ユカリは痩せすぎだと思うけど、俺の考えすぎか?」
「あー、それはどんな服でも着れなきゃいけないでしょ?ボタンが留まらないとかNGだから(笑)」
“えぬじい”……ユカリは難しい言葉がいっぱいだなぁ。義兄上達に相談しようか?いや、それは情けないか?でもユカリのことを理解したいし……。
帰り道、ある店の前で足を止めた。
「ああ、ここはファストフード店ね。そうだったわね、狼だもん肉の匂いに反応したわけか……」
……それとなんだか違う匂いもするんだが……?
「そうね、今日の晩御飯はリルの歓迎会もかねて鳥の唐揚げでも作りましょうか?」
俺は生肉でも食べれるのだが……?歓迎してくれるのは単純に単細胞と言われようとも嬉しい。
「では、精肉店に寄って行きましょ?」
精肉店ではまさに生殺しだった。
そこに美味しそうな肉がたくさんあるというのに、ユカリの説明だと“おかね”と肉は交換するらしい。非常に面倒だ。狩り……してもいいかな?
ユカリに相談すると、なんと狩りをするにしても『許可が必要』らしい。なんて難しい世界なんだ。
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「「ただいまー」」
と言うのが、この世界の作法らしい。
「今日はリルの歓迎会よ、よって今日は鳥の唐揚げを作ります」
ユカリの堂々の宣言に義兄上達が盛り上がった。
「ユカリ、明日から節約生活だな…」とはマサル殿。
「明日からのことは明日考えようぜ!」とはカケル殿。
うむ、ここは俺が一肌脱ごう。
そう思いながら、俺の歓迎会は始まった。
唐揚げ、美味!ユカリ最高!
「ユカリが俺の番ということは義兄上達にもわかってもらえていると思う。そこで、ユカリを俺の国に連れて行こうと思ってる。ユカリも義兄上達と離れ離れは寂しかろう。だから義兄上達も俺の国に行かないか?俺の国では俺はこれでも第2王子だ。衣食住の生活は保障する。仕事をしたければすればいい。そうだな……こっちの文化を伝えるだけで助かる」
「こっちには親父とおふくろの墓もあるからなぁ」
「マサル兄は真面目だなぁ。リルの申し出はいいと俺は思う」
「ちょっと待ってよ。私はリルの番なのよ?いきなり番って言われても……」
兄妹喧嘩だろうか?
「あぁ因みに、番を失うと衰弱していきやがて死を迎えるのが獣人だ」
「「「はぁ?聞いてない」」」
兄妹揃って返された。真実だからな。事実俺の祖父も祖母が亡くなった後、みるみるうちに衰弱していき亡くなった。
「そういえば、リルはほぼ迷子状態になった果てにこの世界に辿りついたみたいだけど、元の国に帰れるのか?」
なんて建設的な質問なんだろう。さすがマサル殿。
「俺の国の匂いを辿ればなんとかなるだろう」
「俺達は生肉とか食べれないけど、道中の食事は大丈夫なのか?」
「携帯食持って行けばいいんじゃね?」とカケル殿。援護射撃が有難い。
「ここにも戻れるようにしよう。父上・母上のお墓があるのだろう?重要拠点だ。何とかしよう。ここには俺の匂いもユカリの匂いも義兄上達の匂いもついているから辿り着けるはずだ!」
「それ、当てになんないなぁ」
はぅっ、ユカリの言葉は突き刺さる。
「ワープゲートってものがあってだなぁ」
「「「魔法?」」」
「ん?そんなに不思議な顔をしなくても。ワープゲートの魔法はちょっと値が張るけど、まぁこれでも王家だし」
「魔法が買えるんだー」とカケル殿。
「こっちの世界の常識が通用しないみたいだな」とマサル殿。
「そのワープゲートを王城につければいいんじゃなかったの?旅に出る前に」
激しくユカリはツッコミをいれる。
「それはなぁ、王城は魔法を使用禁止なんだ。不埒な輩がいる可能性がいるかもしれないからな。ワープゲートを付けたとしよう。それを使って食事に毒を盛るとか?」
「「「はぁ、なるほど」」」
「に、しても!城下で懇意にしてる食堂とかあるでしょ?そこにつけるとか!」
「さすが俺のユカリ。騎士団の俺の執務室にワープゲートを設置してある」
「「「なんだ」」」
「俺は何泊か野宿をしなきゃならないかと思っていた」
「私はトイレはどうしようと思ってた」
む!ユカリのトイレなど、他の輩がどこから覗いているかもわからないのに許さん!
**************
そして俺はワープゲートをこの家の玄関に設置した。
ここでは靴を履いたまま、家の中に入らないそうだ。よって、玄関!の内側。
「家を空けている間に空き巣とか入らないかなぁ?」
「心配性だなぁ、マサル殿。戻ったら我が国の騎士団から一人来させようか?」
「それも、心配。ガスコンロの使い方とか知らないでしょ」
「騎士団の連中に代わる代わる見張りをさせよう。それならいいだろ?」
「見張りくらいなら大丈夫か…」
「騎士だから、多少の空腹も耐えられる」
「人殺しはダメだよ」
うーん上目遣いでユカリに言われた。可愛い。……じゃなくて!いや、可愛いんだけど。何やら、そのように“ほうりつ”というもので決まっているらしい。
「リルの国でも法律はあるでしょ?うーん……あ、そうだ。‘ワープゲートを王城の中に設置してはいけない ’」
「あ、そういうのか。そういうので人を殺してはいけないんだな。わかった。騎士団の連中に伝えておこう」
***************
こうして俺の歓迎会の後(唐揚げ美味かった)、俺の国に3人を招待した。
「へぇ、ワープゲート初めて」
「俺はちょっと酔った」
義兄上達はこんな感じ。
「ワープゲート、楽しかった!もっかい戻ってこようかな?」
ユカリは楽しそうだ。
「ここが俺の執務室だ。散らかっててスマン」
乱雑な書類たちに謝罪する。本当は王城で処理するべき書類を持ち込んでいたりする。
「「「臭い」」」
うっ、三兄妹全員の意見だ。
「よく獣人で生きていけるわねー。嗅覚大丈夫?」
ユカリ、厳しいよ・・・。
「マサル兄、メモ帳持ってきてる?今度向こうから持ってくるべきものに“消臭剤”とか“消臭スプレー”を足しておいて」
「了解」
*************
早速俺は父上と兄上にユカリたち3人を紹介した。
「多分異世界の純血ヒトが3人です。このユカリという女性が俺の唯一の番です」
「初めまして。伊上ユカリと申します。こちらの勝手がわからずに不作法で申し訳ありません」
「よいよい。可愛い娘だな。ほう、生娘だな?」
「父上!そのようなことは本人を前に言うべきことではありません!」
ユカリがというか3人ともオロオロしている。
そんなユカリも可愛いのだが。
「ゴホン、ユカリの兄上達です。兄妹3人で暮らしているので、3人とも連れてきました。ユカリの兄上達の知識はこの国に役に立つでしょう」
「長兄のマサルと申します。この度は兄妹全員お世話になります」
「義兄弟になるのだから、このくらいは当然ですよ」
「次兄のカケルです。俺の知識がどの程度役に立つのかわからないけど、できる限りの事はしたいと思います」
「あぁ、こちらだな。リルの兄のフェンだ。これでも皇太子だ。二人には期待してるぞ」
「「頑張ります」」
いきなり騎士団の俺の執務室をダメ出しされた件を話した。
「へー、異世界には消臭できるものがあるのか。してどういう用途で使うのだ?」
兄上……興味深々ですね。
「えーと、汗をかきすぎた場合とかトイレの消臭とか…。消臭は結構多いですね」
「……つまりリルの執務室は汗臭い?もしくはトイレ?」
「騎士団ですし、汗臭いのかな?それが発酵しているようで……」
「発酵?それは聞いたことがない!どんな感じだ?」
「特定の菌が繁殖して……と詳しくは私もよくわかりません」
「マサル兄―。今度納豆を持ってきたら?」
納豆……アレは強力だ俺はユカリの家で体験済みだからわかる。
「いきなり納豆はキツイだろう?安いワインと少し熟成したワインでどうだ?」
「あ、それならわかりやすい!」
俺はいきなり納豆だったんだけどな……
「熟成?それも聞いたことがない!」
兄上食いつきすぎ…。
「今度熟成肉を持ってきたらどうだろう?普段生肉食べたりするみたいだし。ついでに熟成肉の作り方も精肉店で聞いて来よう」
マサル殿のメモに納豆・ワイン2種・熟成肉(作り方)と書かれる。
「フェン様は好奇心が旺盛のようですね。カケル共々今後ともよろしくお願いいたします!」
「うん、よろしく。楽しみだな」
ユカリを見つけて連れてきたという話が主なんだけど、話が逸れている。
「父上も兄上も‘ユカリを連れてきた’という話が主です!」
「ほう、ではお前とユカリ嬢は今夜が初夜ということになるんだな?」
「そうですね……。今夜は満月ですし都合がいいでしょう?」
「何の都合がいいのよ!!」
「ユカリにも言っておくべきか、満月の夜狼の血を引く獣人は100%人間になる」
「都合がいいの?」
「まぁ、いろいろとな」
一応オブラートに包んだ。
「ユカリの部屋はもう決まっている。俺の部屋の隣だ。えーと…今夜に備えて侍女達に準備を色々としてもらうといい」
「色々って何よ?」
「体の隅から隅まで磨き上げる?あと、こっちの服も何着か見繕った方がいいな。義兄上達も。採寸からだから、3日くらいかかるかなぁ?」
「ねぇ、マサル兄。既製品の服しか買ったことないんだけど?」
「私も高い服着るのは仕事の時だけ。それだって爪ひっかけたりしないかドキドキなんだけど?」
「弟妹よ。俺だってそうだ。郷に入っては郷に従えというだろう?とりあえず従うのが正解では?」
「そうね、とりあえず。政変とかあるかもだし」
「ユカリ!兄上の政治手法において政変などは起こさせない。起こるはずがない!めっそうな事言うもんじゃない」
「いやぁ、高い服なんて着るのは仕事の時だけだから」
「「「普段は?」」」
親子で質問してしまった。
「量販店の服かなぁ。安いし」
「「「“りょうはんてん”?」」」
難しい言葉が多い。マサル殿が説明してくれた。
「薄利多売で商売をするんです。1着1着の利益は少ないでしょうけど、とにかく数を売るんです」
またしても兄上が食いつく。
「どうやって数をこなすんだ?」
「安く作るんです。安い労働力を使う。同じものをたくさん作る。たくさん広告を出す。そんな感じですかね?品質は保証されませんよ?しかし、そこは消費者も『まぁ安かったしなぁ』と思うんです」
「高い服ってのは逆に1点物だったり、品質も保証されます。広告は出さなくても名前が売れてるんです。名前を広告に出すほど落ちぶれてないって感じですかね?」
と、ユカリも教えてくれた。
採寸は……ユカリは明日だな。多分体を起こすことが出来れば……。
俺だって、番を探すのに必死だったから、最後まで正気を保てるだろうか?
そんなんでユカリは侍女たちにピカピカにされていた。その間ユカリは侍女たちの耳や尻尾のモフモフに目線が釘付けだった。
義兄上達は採寸されていた。
**********
そんな感じで俺の番を探す旅は終わりを告げた。
翌日のユカリは……ハイオレノセイデス。ベッドから起き上がれませんでした。
義兄上達に揶揄されながら「うるさい!」と言ってました。そんなユカリも可愛いと思います。
また、今夜も……というのはユカリに悪いかな?
そうして俺とユカリの間には6人の子供が生まれました。
ユカリが「頑張ったんだから、労ってよ!」と言うけど、俺は労い方が夜伽しかわからないので、率直にユカリに告げると、ユカリは顔を赤くして俺の頬をひっぱたきました。
これでも騎士団所属だからユカリにひっぱたかれたくらい何ともないデス。
出産の度に「ユカリ、お疲れ様♡」と言っているんだが?
騎士団で参考にいろんな奴に聞いてみよう。
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