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38.暗躍※ダエワ視点

「そうか、失敗か」


元冒険者国に築かれた重厚なる小鬼魔王城。その最奥の部屋に複数の人影があった。


兜、仮面、包帯など様々なもので顔を隠した者達の中で、唯一、素顔なのは輝ける王冠を戴く、魔王ダエワだ。


「もう、1、2国は簡単に落とせると思っていたのだがな」


 平静なつもりだったが、わずかに苛立ちが声に乗った。


「商業国家群での調略は不可能だ。なにやら古い仕来りがあるのだという。表面上はいさかい合っている様にみえるが、武力での行動は厳禁となっている。愚かな若者を使ってみたが強力な契約魔術が仕掛けられていた」


 仮面をつけた男が話す。続けて包帯で顔を隠した者が話だした。


「膨大な生贄を用いた大規模呪術は、確かに魔法国で発動した。だが、突如として解呪された」


 我は2人の報告を聞きながら、あることを思い出した。あれは、まだ魔王になる前のことだ。試しに聖王国に毒をまいてみたが結果は振るわなかった。


「どうやら、我が覇道は謀略を好まないようだな」


 兜を付けた男の方を向く。


「やっと俺の出番か。準備はできている。どこを攻める?」


 男は楽しそうに言っている。


 冒険者国を攻めた時は、対応が早くて”胎”があまり手に入らなかった。

 だが、魔族から捧げさせた”胎”から日々産まれる小鬼族の子はすくすくと成長し立派な兵となっている。

 軍事による強硬策でも人の国など軽く落とせるだろう。


「……。やはり、商業国家群だろうな。聖王国、魔法国よりは戦力が劣る」


 商業国家群は多種族からなる小さな国の集まりだ。商いを第一にしていて、人口と金は多いが兵力は少ない。


「どこから攻め込むか、楽しみだな」


 兜を付けた男は笑った。



 ここにいるのは、すべて我、ダエワだ。[複製]の能力で創られた、我そのもの。

 何故か誰に教わるでもなく、幼少の時から出来ると認識していた。

 ある新月の夜に複製をしてから毎年1回行うことが出来る。


 そしてこの力と同じように魔王になることも認識していた。いや、世界の覇王となることを。


 世界は我だけの手により、征服する。他の者達はすべて、ただの駒にすぎない。だからこそ、性欲旺盛な小鬼族なのに子をもうけていない。


 古くから創られたものは、同じ我なのに個性がでているようだ。


「ツヴァよ。あまり浮れるな。まだまだ序章にすぎないのだ。今は楽しむより確実性を重んじろ」


 便宜上付けられた名前で呼ばれてツヴァは黙った。


「ところで、王よ。ある集団が協力を申し出ているのだが」


 眼鏡をかけた我、ドラが口を挟む。この者には魔王の側近を務めさせていた。


 小鬼族の顔や声など他種族は気にかけない。眼鏡をかけるだけでも充分なのだ。今のように、複数人が1か所にいればさすがに気付かれるだろうが。


「他者は所詮、駒だ。いちいち我の確認を取らずともよい。己が裁量でどうとでもするがいい」


 ドラは頷き、部屋を出て行った。他の者もそれに続く。


 窓から空を眺める。まるで、魔界の様に暗雲が空を覆っていた。

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