32.大砂漠大戦※ドラン視点
砂漠に吹く風に黒い長髪がなびく。大きなは翼を広げ空中から戦場を見下ろす。
様々な種族からなる魔王軍。各国から集まった人軍。大量の兵が砂漠に群がっている。自軍に目を落とす。これだけの種族の魔王軍が組まれるのはいつ以来だろう。大概の魔王様は己の力と出身種族だけを用いて人界と争う。戦好きな種族がそれに便乗し勝手に魔王軍を名乗るのが恒例だ。……、小鬼魔王様もそこまで違いはないか。今回の魔王軍の主力は小鬼族だ。様々な種族は「戦いたいものは来い」という命令というには曖昧な指示を受けて集まった戦好きないつもの顔ぶれ。強制的な徴兵でないということは小鬼族だけでも勝てる自信があるのだろう。魔王様の姿はない。この大軍を率いているのは小鬼の将軍である。
人軍に目を向ける。数はこちらが勝っているが、士気が高く精強に見える。互いを見比べると容易く勝てるとは思えない。困難な戦い。臨むところだ。苦難を乗り越えてこそ龍へと至る。
戦端が開かれた。互いの遠距離攻撃が戦場で激しく弾ける。兵士がぶつかり合い激闘が繰り広げられる。王魔四将の我々は遊撃隊だ。好きに戦う許可を将軍から得ている。戦場で一際目を引く存在がいくつかあった。人族の強力な戦士。
その位置を記憶し、地上に降りる。
「目ぼしいのはいたかい?」
大鬼族のギガンは巨大な金棒を振り回してすぐにでも戦いたそうにしている。魔機人族のアルファはピカピカ目を光らせているが感情は読めない。
「我々の相手たる強者を見付けてきた。1つ、強力な剣士を中心としたパーティー。2つ、雷を纏って戦う女戦士。3つ、不思議な武器で戦うドワーフ。ソレガシ、女人と戦うつもりはないゆえドワーフを選ばせてもらう」
「なら、……戦いは1対1がいい。俺もあまり気乗りしないが女戦士にしとくか。場所を頼む」
「ピカピカ。タイパーティーセン、リョウカイ」
2人にそれぞれの相手の位置を伝えてドワーフの元へと向かう。近づくとなにやら飛び道具を放ってきたので薙刀で弾き名を名乗る。
「ソレガシは魔竜人族のドラン!そなたの名は!」
ドワーフはポカンとした顔でこちらを見た後大笑いした。
「がっはっは。このご時世に戦場での名乗りとは。魔族にも面白いヤツがいるものだな。わしはアイン。《奇抜》なアインだ!」
アインは名乗ると同時に背に背負っていた筒をこちらに向ける。そこから放たれたものを先程と同様に討ち落としたが強大な爆発を起こした。
熱い。体の表面を焦がしながら地上へと降りた。
「固いな。おい、なんで五体満足なんだ?」
アインが珍しいものを見る目でこちらを見ているが無事ではない。焦げている。魔力を感じなかったため反応が遅れた。先程の弓矢でない飛び道具と一緒だ。奇抜。名の通りだ。
「『竜化』!龍たらんとするソレガシを傷付けるとは見事なり。竜の炎を返礼する!」
体表が鱗に覆われ、顔が鰐の様に変わる。口から火球を放つ。
「銃も大砲も効かん。おまけに口からは大砲よりも大きな火を吹く。たまらんな!」
アインは地面に置いてあった大盾を構え火球を防ぐ。更には大斧を持ち向かって来た。
「今回は発明品の在庫切れだ。原始的に斬り合わんとならんとはな!」
大斧を軽々と振り回し斬りかかってくる。斧を薙刀で防ぐ。重い。ドワーフの怪力とはこれ程か。竜人体となったソレガシと互角とは。幾度となく斬り合う。楽しい。だが、急遽、人軍は退く態勢となった。
「すまんな。退けとの命令だ。決着は次の機会に!もっと面白いものみせてやるからな!!」
アインも殿を務めながら去ってしまった。龍になろうというソレガシは退く相手を襲う牙は持たない。
大分人軍に押されていたのだろう。追撃している軍は多くない。小鬼族だけは見事な戦列で追っている。
「よう。竜の旦那も無事か。なかなかに強かったな。取り逃がしちまった」
全身焦げと傷だらけなのにギガンは楽しそうにしている。
「ピカピカ。ケイセンコンナン。シキュウメンテナンスガシツヨウデス」
アルファはボロボロだがなんとか動けはするらしい。
人軍の様子がおかしかった。魔王様の策略か。今回はなかなか良い戦いが出来た。また一歩龍に近づいただろう。次の戦いが待ち遠しかった。
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