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30.聖女の行方

 アイさんとフィフは有翼族の塔でまた一晩中騒いだ後、魔王様の元へ行ったらしい。とりあえずエルフが魔獣と戦っていたと誤魔化しておいたが大丈夫だろうか。なるようになるだろう。


 いつも通りおばさんの根元で転がっていたらワンから連絡が来た。


 「すみません。そちらに聖女アリス様を匿える場所はありませんか?」


 何故、人族の聖女が魔界に逃げださねばならないのだろう。詳しく聞くと、どうやら教皇なる人に付きまとわれているらしい。聖女が自分の傍に居て欲しいらしく強く要求してくるのだそうだ。前々から使者が来ていたが断っていたら、ついには教皇直属の神殿騎士団を派遣してでも連れて行くという。教皇の権力は強く、人界で隠れるのは難しいのでボクを頼ってきたのだ。


 「流石に《森》にアリスさんは住めないよね。狼牙族の集落もちょっとなあ。となると後は有翼族の塔しかないか」


 急遽トウに頼んで有翼族の所まで運んでもらった。


 「ということでして。人族を匿っては貰えないでしょうか」


 有翼族族長にお願いしてみる。とんでもない要求だと思うのだが族長は快く引き受けてくれた。むしろ借りを返せると喜んでいた。


 「塔は広い。あまり我々と触れ合うことなく過ごすことが出来るだろう。いつまででも居ると良い」


 許可は貰えた。後の細かいことは本人達も交えて話し合った方が良いだろう。神器を使い人界との境界で待ち合わせた。今度はスーリに運んでもらう。


 「こうして直に話すのも久しぶりですね。コウ様、今回は無茶な願いを聞き届けて頂き心から感謝申し上げます」


 アリスさんが深々と頭を下げる。ワンも同様に頭を下げる。


 「それにしてもその教皇さんは酷いね。無理やり連れてこうなんて」


 「教皇様はご高齢であります。回復術の使い手を傍に置いて安心したいのでしょう。……ただでさえ国が1つ魔族に滅ぼされたので」


 「え?」


 思わず聞き返す。


 「……。先日、南で魔界と隣接している冒険者王国が魔族の大軍との争いに負け王都を陥落されたようです。ご存知なかったのですか」


 ご存知なかった。魔王様の使いはアイさんが初めてだったし、《森》付近で魔王軍は活動していない。魔獣がたまに人界に行っているのを見るくらいだった。


 知らぬ間に人魔戦争は激化していたらしい。今後どうするか。真面目に考える時が来たのかもしれない。

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