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29.吸血鬼

 「急に変化した姿で来たから何事かと思ったぞ」


 トウが困り顔でこちらを見ている。


 「ごめんね〜。なんか居ても立っても居られなくて。血、ありがと〜」


 あの後、《森》を飛び出して狼牙族の集落に付いたボクとアイさんは狼牙族の皆に血を分けてもらって一晩飲み明かした。変化していたとはいえ大量に血を飲んだせいか頭がクラクラする。


 「次は有翼族のいる塔だ。有翼族の血は一味違うぞ」


 ボクから分かれた吸血鬼、フィフは昨晩の事はぜんぜん堪えてないようで、もう次の宴の場所に行こうとしている。

 

 「さすがフィフさま。パないし」


 アイさんは流石に疲れているようだ。宴の最中分かれたボク達を見て笑っていた。自分も複数のコウモリに変化して見せてくれた。でも消えずにずっとそのままなのは吸血鬼にとっても珍しいようだが、いろいろな魔族を見たことがあるアイさんは特に驚きはしなかった。名付けにもすぐに順応してくれて「フィフさまステキ」、「フィフさまサイコー」しきりに褒めてくれている。

 どうやらかつての吸血鬼族の魔王に似ているらしい。その魔王は人族の国で「饗宴の時間だ」と言って、一週間にわたり仲間の吸血鬼と血を飲み漁っていたところ、勇者に討たれたらしい。その時に参加した多くの吸血鬼も討たれた為、種族の数は激減したと言う。


 「あーしがこき使われるのもそのせいだし。でもおーさまの宴、参加したかったな」


 まだ小さくて参加出来なかったらしい。その後悔がある為か、フィフの言うことに楽しそうに従って共に有翼族の所に行ってしまった。

 トウにも一緒について行ってもらってスーリへの状況説明も頼んだ。


 「アイさん。任務覚えているのかな」


 有翼族の後はどうするのだろうか。フィフの行動力を心配しながらお腹がいっぱいなので眠りについた。

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