21.エルフ
「ふむ。珍妙な魔獣?ですな」
ボクを捕まえたのはエルフのおじさんだった。痩せていて妙な迫力がある。魔族とバレると怖いので静かにしている。
「狼牙族が出てくるとは魔王の命令でも出ましたかな。それにコレと共にいた有翼族は…。」
「アイビー様、ソレは一体?」
「我が木精兵を焼いてくれた有翼族と共に居た者でね。どちらも捕らえたかったのだがあちらは無理ですな。あれだけの力のある有翼族がいたとは。」
エルフ達が見詰めてくる。プルプル。ボク悪いコウモリじゃないよ。
「見たところ大した力はなさそうだ。ペットか使い魔ですかな。交渉材料には弱いか…。とにかく基地がなくなってしまいましたから一度里に戻りますか」
アイビーと呼ばれたエルフは軽く呪文を唱える。ボクを縛り付けていたツタが鳥籠の様に変化する。齧り付くがビクともしない。
連れてこられたエルフの里は人気があまりない。出迎えた女性が言った。
「本当に有翼族を攻めるなど!長会では否決されたではないですか」
どうやら怒っているみたい。クルクルしている髪形すごいボリュームだ。手入れ大変そう。
「ダフィディ嬢。来ていたのですか。その通り。なので有翼族は私が個人的に攻めている。何人か同志が手伝ってくれていますがね」
「詭弁を!」
「今しかないのですよ。魔王軍は南で戦っている。人間達はそれの対応で手一杯。《塔》の奪取はエルフ族の悲願でしょう?」
「…それは。ですがあまりに危険すぎます」
「危険は承知の上。消極的な姿勢の為、いったいどれだけ無駄な時が流れたか。里の皆も危険に備えて避難させました。奴等は手強いですが勝機は有ります。こうして戦利品もあります。詳しい話は屋敷でしましょう。私も少しばかり疲れました」
女性を伴い建物へ移動する。ボクはその建物の牢へ。牢の中なんだから籠から出して欲しい。
しばらくすると、さっきの女性がツタで縛られて牢の中に。
「ムーーーーーー!」
「すみません。ダフィディ嬢。私の意思は固い。《塔》は必ずこの手に。しばらくそこで大人しくしていてください」
蓑虫となっている女性はムームーモゾモゾしている。
「ダフィディ嬢が押し掛けてくるとなると、他のエルフの邪魔が入る可能性がありますな。交渉する時間は無い…ですか」
痩せエルフはボクをチラっと見たが何もしないで部屋から出て行った。
ムームーエルフはまだモゾモゾしている。
「エルフのお嬢さん。籠に体の一部入れられないかい?血を少し貰うけど助けられるかも知れない」
エルフのお嬢さんは急に話し掛けられ驚いた様だが、少ししてからモゾモゾ動きだして加護の隙間に指を入れてくれた。
さっき有翼族の人からたくさん血を貰ってお腹いっぱいだったけど、お嬢さんを見たらまだ入る気がしたのだ。別腹って感じ。
指に噛み付く。おいしー!甘くてさっぱりまるで瑞々しい果物の様だ。しばらくすると煙が出始めた。
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