16.冒険者国※エン視点
足元の小鬼に剣を突き刺し呟いた。
「表面に砂をまぶした布を被って奇襲しようとするなんてずいぶんとお利口さんだな、おい」
ここは冒険者国の東に広がる大砂漠。人間軍と魔王軍が火花を散らす戦場。
「ギル王は夜襲を仕掛けられてやられちまったんだったな。嫌な予感がしたから調べてみたら小狡く隠れてやがる。おい!そっちはどうだ!!」
近くの冒険者も隠れていた小鬼を片付けたようだ。
魔王軍との戦いが始まってすぐ冒険者国は国中の冒険者を集め王自らが出陣することで士気を高め迫りくる敵軍を打ち破った。
そこまではよかったのだが調子に乗って敵地の奥まで踏み込み奇襲を掛けられて王は死んだ。 あの大魔術師があっけない最後を遂げたもんだ。大群に囲まれて攻めたてられちゃ無理ないことだが。最後の意地でその大群を自分ごと吹き飛ばしたんだから大したものだろう。
連日大量に倒しているのだが敵軍が減っている様子はない。ジリジリと前線は後退している。
はやまったかな。指に付けている装備を見ながら呟いた。玉座が空いたのでお宝につられてつい座ってしまった。
冒険者国は、冒険者が組むパーティー、パーティーが集まったクラン、クランが集まったのが国というなんとも大雑把な作りだ。毎回魔王軍との前線になる魔界と隣接した不人気な土地。だがダンジョンが多く、魔獣の素材も取りやすい。そんなところに住むのは命知らずな冒険者くらいだ。
S級冒険者で大手クラン代表の俺は王になる条件を満たしていた。
血の気の多い冒険者達は魔界に攻め入って魔族は魔獣を狩りたがっているが、前王の二の轍を踏む気はない。だが小鬼なんていくら倒しても大した稼ぎにならないだろう。不満が出るのもわかる。国からの報酬どうなっているのだか。ろくに引継ぎもなく前線に来たので右往左往の毎日である。あー、メンドクサイ。
着々と各国から増援が来ている。どこか他の国に丸投げしようと決めた。
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