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13.決意

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 戦争が始まってしまった。足に付いている神器を見る。もうあの子には会えないのかな。アリスさん。人間の国のお姫様。これ、返さなきゃ。そうだ!返しに行こう。こんなにキラキラしているのだからきっと大切な物に違いない。狼のボクにも相談してみよう。狼牙族の集落に向かった。


 「そうだな。返しに行こう。ここも落ち着いてきたしオレも行く」


 集落を見渡すと急造ながらしっかりとした建物が建ち並んでいる。


 「ルナよ。少しの間、集落を離れる。留守の間頼んだぞ」


 「分かりまシタ。ご武運ヲ」


 お互いしっかりと目を見詰めながらの会話。なんだかこの短期間でしっかりとした信頼関係が築かれているみたいだ。


 狼のボクがボクを抱えて走りる。すごく速い。飛ぶよりもずっと!これなら誰にも見付からずに人間のお城までいけるかもしれない。お城の場所はおばさんに教えてもらった。


 数日後、お城のある街に付いた。狼のボクは休み無しで走っていたが疲れていないのかな。ボクは大半寝てたけど。


 「あそこだな。立派な城壁だがオレなら登れるだろう。行くぞ」


 お城と街の周りにはとても高い壁で囲まれていた。夜になるのを待ち、壁に近寄る。狼のボクは難なく登り街に向かって飛び越えようとした時、バチッと音がして弾かれた。抱えられていたボクは衝撃で狼のボクとは逆に吹き飛び街の方に落ちていく。慌てて飛んで城壁の下に落ちた狼のボクの様子を確認する。無事だ。


 「結界だ!人間が来る!お前は入れるのなら城まで行け!!」


 狼のボクは叫び、その場から走り去って行った。

 ボクは慌てて物陰に隠れながらお城に向かう。お城に近づいたら神器が光った。アリスさんだ!


 「この神器に反応があるということはコウ様ですか!どうしてここに?」


 「神器を返しにきたんだよ」


 アリスさんの案内でお城の開いている窓から部屋に入った。

 

 「こんなところまで。ありがとうございます。必ずお礼をすると言ったのに。今日まで約束を果たせなかったご無礼をお許しください」


 深々と頭を下げる。あれから回復したお父さんに心配されてお城から出られなかったらしい。ボクは神器を外してもらい返した。


 「私が差し上げられる物はそんなにないのですが。この部屋にあるものならばどれでもどうぞ」


 部屋の中を見渡すとキラキラした物がいっぱいある。けれどボクは物欲があまりないし、特に欲しい物はなかった。それよりも…。


 「出来ればで良いんだけど。……。また、血を飲ませてくれないかな」


 恥ずかしいけど勇気を出して言った。彼女に会えて安心したのかお腹が空いてしまった。クークー鳴っている。


 「良いですよ。でも血を差し上げたらまたコウ様は騎士様に戻られるのでしょうか?」


 別にボクは呪いでコウモリの姿に変えられている訳ではないのだけれど説明するのが難しいのであえては触れず、変化についてだけボクも分からないと答えた。

 アリスさんが手を組み祈るとボクとアリスさんの周りに光の壁が現われる。結界を張ったようだ。もう夜なので変化の時の音が出ると困るのかな。準備は終わったみたいなので手の甲に噛み付く。おいしー!このさっぱりとしていて、スッと鼻筋に通る清涼感。なんともさわやかで飲みやすい。

 結果は、やはり変化して今は騎士の姿だ。これは帰り易くなったのだろうか。狼のボクの様に結界に弾かれないか心配になってくる。姫様に相談すると今私達の周りにある光の壁を触って欲しいと言われた。言われた通り触ろうとすると手は通り抜けてしまう。


 「この結界は城や城壁に張られている結界よりもずっと強力なものです。邪なるものは内外からの干渉を拒みます」


 じゃあ大丈夫だ。神器を返して血も飲ませて貰った。意気揚々と帰ろうとする。


 「姫様。私は帰ります。もし運命の星が重なることがあるのならば今一度相まみえましょう」


 なんだか難しい言葉が口からスラスラと出る。いざ帰ろうとすると姫様に手を掴まれた。


 「…コウ様。私を国境の砦まで連れて行って頂けないでしょうか」


 そこには今、国王様と知り合いの騎士がいるらしい。


 「わかりました」


 高貴なる姫の願いを断ることなど出来ない。姫様の準備が終わった後、許可を貰い抱きかかえ窓から外へ。軽快に城壁も乗り越え街の外に。

 街から離れると狼のボクが迎えに来た。


 「また姫さんから血を貰ったのか。姫さんの匂いがしたからいるのはわかったが、どうしたんだ。攫ってきたのか?」


 経緯を説明して砦に向かおうした時、体から煙が。ボン!衝撃音と煙の中からはコウモリのボクとやっぱりいる騎士のボク。アリスさんが驚いている。アリスさんにここにいる大男もボクで血を吸ったあと何故か分裂するのだと言った。アリスさんは不思議ですね〜と首を傾げている。


 「アリス姫様。こうして分かれたのも神の思し召し。どうか私を姫様の騎士としてお側に置いて下さいませんか?」


 アリスさんの前に跪いて自分を売り込んでいる騎士のボク。アリスさんは困惑してこちらを見る。


 「ボクからもお願いします」


 騎士のボクは元はボクだけど今は人間の姿をしている。人間を《森》に入れるわけにはいかない。


 「ではよろしくお願いします」


 アリスさんは騎士のボクの手を取り頷く。なんだか嬉しそうだ。

 ボクは狼のボクに、アリスさんは騎士のボクに抱えられて休みながら国境沿いの砦に向かった。

 砦の近くで別れようとするとアリスさんから返した神器を渡された。


 「せっかく返して頂いたのですが、これは今後、あなた様方に必要になるかもしれません。騎士様にも」


 もう1個の神器は騎士のボクに着けられる。これでボク達は近くにいれば連絡が取れる。とても助かる。


 アリスさんと騎士のボクに別れを告げ、《森》へと帰る。

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