12.騒乱
シン様に呼ばれた。何だろう。
「魔王様が戴冠なされた」
魔王。魔界の支配者。特定の種族ではなく、突然現われる。ボクが産まれてからは初めての魔王様だ。
「魔王様のご命令は絶対だ。まだ御触れは無いが。お前も気を付けておくんだよ」
魔王が現われると必ず起こることがある。人類との戦争だ。人類が滅ぶか、魔王が死ぬまで終わらない争い。命令された魔族は人類と戦わねばならない。
「すでに魔獣と小鬼族は人類圏に攻め入っているらしい。今後は《森》も騒がしくなるだろう」
シン様は長生きだが魔王様から人類に攻めろと命令されたことは無いらしい。だが今回の魔王もそうだとは限らない。魔王軍に加わらなくても人類から攻めてくることはある。《森》が半分くらい燃えたことがある戦いもあったそうだ。こわい。怯えながらおばさんのところに戻る。
「今回の魔王様も自分の種族を優先して軍を動かしているみたいだね。長い魔族の歴史でも小鬼族の魔王様は初めてだ。はてさて今回の戦はどうなることか」
魔王が魔王軍を構成すると1つ魔界に規則が出来る。魔族同士の私闘の禁止である。これを破れば魔王軍により罰が与えられる。死という罰が。
「好戦的な猪や大鬼共が大人しくなったから魔界は静かなもんだが人間はどう動くかわからない。コウや、気を付けな」
こわいなー。気を付けろ、気を付けろ言われてもどう気を付ければ良いのか。今からでも体を鍛えるか。まん丸な体を見詰める。
そんなことを考えていたら、狼のボクが《森》に帰ってきた。まだ消えていないのか。あの時の少女もいる。ルナと名乗った。
「満足に礼もセズ、申し訳ありませんでしタ」
少女から大きな獣肉を貰った。こんなに食べれない。後でおばさんにあげよう。
狼のボクは救った大勢の狼牙族を率いて、北の《森》外周部に集落を作るつもりらしい。狼のボクについては狼牙族の皆さんにまかせよう。何かあったら言ってくださいと伝える。狼のボクは言った。南で小鬼の大軍を見たと。
今後魔界は、世界はどうなるのか。ボクは生き残ることができるのか。小さい羽を見ながら心配になっていた。
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