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2枚目

 

「いやぁ…何か反応くれないと流石のオレも傷が抉られるって言うか……」


 いや、正直今すっっげぇ居た堪れない気分ッスわ………なんであんなことしたんだろ…やっぱり引かれたのか???


「あぁ!!ごめんね!そういうつもりじゃなかったの!」

「!!」


 あぁ!!良かったぁ!!男が何キモイ事言ってんねん潰すぞとか思われてたらどうしようって思ってたけどそんなこと無かった!!!


 オレはあからさまに安堵した様にひとつ大きな息を吐いた。


「いやね?さっき、瞳君がアイデンティティは青紫色の瞳って言ってたじゃない?」

「うん。言ったね。」


 これは誰がなんと言おうとオレのアイデンティティ。だってカッコイイ配色じゃん??赤みがかった髪色で瞳はその反対の青紫系の色なんて。

 あ、決して自分がカッコイイとかそういう自分大好きなナルシストでは無いよ?断じて。


 まぁ、多少は自分のことは褒め褒めしてる節はあるけど、一般的ではあるはず。


 菫がもう一度確認するかのようにオレの前に歩を進め、瞳を下から覗き込む。


「それが、私にはどーーーしても極彩色にしか見えなくて…………」

「へ?極彩色?え?オレのアイデンティティどうした?」


 突然のアイデンティティ喪失発言。それはオレの心に大きな衝撃を与えた。


「一瞬一瞬移り変わるようにクルクル色が変わってるの。宝石みたいに綺麗だよ?」

「なんかそれって東洋原産の万華鏡ってやつみたいな?」

「そうそう!あのキラキラ〜ってしてこう、パァッてお日様の光を反射してるの…って自分ながら説明下手だね(汗)」


 菫はオレに語彙力が足りずに詳しい色の説明が出来ずにごめんと律儀に謝ってくれた。凄くいい子。


 しかし、本当にオレはいつの間にそんな綺麗な瞳になったの?オレが気づいてなかっただけで実はずっとそうだったのか?


 原因が分からずしばらく唸った。


「ま、オレ達の世界だし、そういう事もあるよね!」

「うんうん!綺麗だし極彩蝶とお揃いで良いじゃん!私はすっごく好きよ!」


 オレ達は共通して楽観的だった為、大して気にせず『この世界だから』ということで話を済ませた。


 実際問題。オレ達が住んでいるこの世界はありとあらゆる現象が起こるので一喜一憂していると色々大変なのである。

 恐らく他のこの世界の人々達も大体が楽観的な考え方の人が大多数だと思う。


「あ!建物見えてきたよっ」


 菫と話しながら歩くこと早数分。やっと目の前に大きな建物が竹林の合間から見え始めた。

 ザワザワとした声も段々聞こえ始めオレの胸は高まっていく。


 竹林を抜けた先には大きな校舎に花壇。左側には武道場のような建物、右には非常に大きな図書館が建っていた。ガラス張りのオシャンティーなデザインだ。


 校舎の手前にはガタイがいい男の人がプラ板を首から下げて立っており、オレと菫の姿を見ると勢いよく駆け寄って来た。


「新入生歓迎〜!初めまして!ようこそ舞闊響轟校へ!」


 挨拶をされた為オレと菫も元気よく「「初めまして!!」」と挨拶をした。挨拶は人間の基本。第一印象こそ大切。


「にゃははっ!元気だなぁw俺は野球部部長の田中圭!今日は新入生の君たちを案内してるぞ〜!めいー、女の子来たから案内して〜。うん、入口に居るからよろしくぅ」


 自己紹介をしてくれた田中さんは耳元に手を当て他の人に連絡を取って会話をしていた。

 やっぱりそういう技術が進んでいる舞闊は手を当てるだけで仲間との連絡が取れるのかぁ、と関心をしていると菫が気づいた様に田中さんに問いかけた。


「田中さんの耳に付けてるのって『イヤーカフ』ですか?」

「お、よく気付いたね!そうだよ〜これは新入生歓迎会で配布されるイヤーカフ。中には多数のプログラミングされた機能が内蔵されてて色々出来ちゃう代物だ!しかもこれは舞闊響轟校生徒である証でもあるんだぜ!」

「「おぉ〜!!!」」


 田中さんの耳に付けているイヤーカフを少し拝見させて頂くと、カスタマイズ式の野球ボール飾りがワンポイントとして耳を飾っていた。


「おまたせ!君が新入生の女の子かな?じゃあ行こう!圭ちゃんしっかり案内するんだよ?」

「りょうか〜い!よし、俺も案内するよ!えーっと…」

「あ、オレ、四國瞳って言います!お願いしますっ田中さん!」

「おっけい!瞳ね!後、舞闊では上下関係とか無いから気軽に呼んでなー敬語も無し!」


「敬語は…まぁ、徐々にという事で…名前は…………うーん、じゃあ!圭ちゃんで!」


「にゃはっ良いぜぇ徐々にな!」と豪快に笑いながら圭ちゃんは先導してオレを寮があるとされる場所まで先導して歩き出した。


 辺りを見回しながら歩いていると自身の左側には大きな舞闊の校舎と沢山の色とりどりの草花が花壇に咲き誇っていた。

 赤色、黄色、緑色、青色。


 この世界に存在している色の殆どが集まっているかのような多彩な色彩で花壇を彩っていた。


「うわぁ……おっきいドーム……」

「これは我が園芸部の温室だぜ。これが水晶宮で更に奥には幾つか他のガラスハウスもあるぞ!」


 圭ちゃんが紹介してくれたのは園芸部が所有している温室。

 見た目が透明のガラスドームになっており中が透けて見え、育ててある植物や受粉に必要とされる生き物達も僅かに見えた。


 幸も何となく温室にいる蝶々達が気になっているのか若干温室に行きたがっているような素振りをしている。


「にゃはっ!その蝶々も行きたがってるぽいな!歓迎会までは時間有るから散策させてもらったら良いよ!1部の園芸部員は今日も活動してるから!」

「マジですか!?やった!」


 これはいい事を聞いた!寮に着いたら多少荷物を片付けて早速探索しよう!

 入学初日からいい物が撮れそうな予感!!


 芸術家はこういう感覚を大事にしなきゃね!!


「ここが寮だぞ〜ほれほれ入りなっ」


 寮の前の通路には低木と木々が植えてあり中心に小さな噴水がある。周りにベンチが数箇所設置してあり、ちょっとした広場になっていた。


 圭ちゃんが寮の扉を開けて中に誘導してくれた。

 1歩、寮内に足を踏み入れると手の平サイズの四角いボックスが宙に舞っており、こちらへとやってきた。


「これは収納ボックス!これに靴と手荷物入れちゃって!そしたら適正の部屋番号の鍵くれるから!」

「え!?入りますかね…」


「まぁまぁ、騙されたと思って!」と圭ちゃんがそう言うので手に持っていた割と大きめの荷物と脱いだ靴を収納ボックスの扉を開けて入れようとする。

 次の瞬間手荷物達は吸い込まれるようにボックスの中へと入っていった。

 驚いてボックスの中を覗いていみるとボックスの中に小さくなった自分の手荷物と靴が入っていた。


「え!凄っ!?」

「これはミニチュアっていう術と狭間結界術を研究して作られた特別仕様のボックスらしいぜ!小さい箱状態だから場所もそんなに取らないし自由に取り出しもできるから安心しな!後この中にスリッパ有るからこれ履いてね〜」


 えぇ……スゴすぎる舞闊の技術力。便利だなぁ……


「瞳の部屋は103号室だな!」


 目の前に103と書かれてある持ち手が付いた小さな棒が現れた。

 あれ…?この鍵、鍵山が無いんだけど…


「部屋の鍵穴に刺したら鍵山出て解錠出来るから大じょ…ん?あ、新入生来た?おっけい今行く。ごめんよ瞳!俺他の子案内しなきゃいけなくなったから行くな!じゃ、また歓迎会で!」


 圭ちゃんがイヤーカフで連絡を貰った後すぐ様この寮を駆け足で、いや全力ダッシュで出て行った。

 足速すぎ。


 圭ちゃんが去ったことでオレは探索をしたい欲が有り有りな為、玄関の横に飾ってあった寮内の地図で自身の部屋を探した。


 …………………。


 ヤバいほど入り組んでいて寮内は難しい構造になっていた。しかもここは0階らしく、中心近くの吹き抜けの所に階段があったのでそこから登っていく感じだそうだ。


 正直オレ的には少年心擽られる秘密基地って感じがしてとても好みだ。いや本当に。言い表せない高揚感が身体中を埋め尽くす。


 あぁ…血が疼くぅ


「ここかな?」


 中央階段から1階へ上がり遂に目的の103号室に到着した。早速鍵山の無い鍵をドアノブに差し込み捻ると「ガチャッ」と分かりやすく扉が開いた音がした。


 中に入ると壁があり、回れ左すると扉があった。開けるとトイレと洗面台だった。


 さて、お楽しみの部屋はと言うと、部屋奥にシングルベッドが2つ置かれており目の前にはベランダがある。机と椅子、収納ボックスもそれぞれ置いてあり生活必需品が揃えられていた。


「広すぎぃ!?マジで言ってる!?」


 オレの予想斜め上を行くぐらい部屋は広かった。

 幸も広くて嬉しいのかオーラを放ちながら自由に部屋中を飛び回っている。


「よしっここからがオレの新生活!ルームメイトさんはまだ来てないみたいだけどさっきの温室気になるし…幸行くよー!」


 オレは先にたどり着いていた収納ボックスの中から相棒の魔導式カメラを取り出して幸と共に颯爽と校内探索に出かけた。

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