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37枚目 桧、級友達に恐怖する

 

「わぁ……これが氷室の洞窟」


  レナート君が先導して辿り着いた山の麓に佇む石造りの洞窟。


 明らかにここだけが人工的な造りになっていて人の手が加えられていると一目で分かる。


 パシャパシャと写真を撮るのは、我らが学年次席の瞳君。


 道具が出来るまで探索ができない為、一時的に合流している山チーム。


 折角なので建築素材を採取するのに円城寺含めた皆の力を借りるべく、共に拠点を作る近辺に足を運んだ。


「じゃあまずは、銛と各種工具を作る為に数本の木の伐採及び採掘かな」


 周辺の木々と地面に点在する岩に視線を移す。


 見た感じ、建材としては良い木が有るものの、銛や工具として加工するには少々心許ない硬度の木材ばかりだ。


 支給された数本のナイフは、個人的に調理に使いたい。であれば一本も支給されてないと考えれば圧倒的に足りない。


 その件に関しては、岩が沢山あるので木を削ったりする様のナイフは作れそうなので問題無さそうだ。


「あ、桧君。あの周辺ストーンウッドの群生地だよ」

「! 菫ちゃんナイスすぎる」


 合流していた菫ちゃんが様々な木々を観察し、銛を作るのに適した非常に硬度の高い木材を発見してくれた。


 ストーンウッドとはその名の通り岩のように硬い木材。


 しかし硬く有りながらも加工するにはある一定の決まった角度から刃を入れれば、案外簡単に加工出来てしまう代物だ。


 これには流石にナイスと言わざるを得ない。


 早速、手元に配られた鉈を手に持ち菫ちゃんが見つけたとされるストーンウッドの群生地へと向かう。


「凄い。何か本当に岩みたいな見た目だな〜」

「一目でこれって分かるね」


 ストーンウッドの樹皮は見た目の通り、鼠色でそこら辺に転がっている石や岩と同じ様な色をしている。


「あ、葉っぱとか意外と切れやすいから気を付けて」

「葉っぱがキレやすい?」

「鋭利って事だよ」


 何か文字が違うような疑問を持った光耀の言葉は少し聞き流し、早速聳え立つストーンウッドの前へと立つ。


 その岩のような樹皮に触れ撫でる。


 全体的に硬い樹皮の中で、一部分だけ他とは少し違う凹みがあるところを探す。


 そここそがストーンウッドを切り倒すポイントとなる大事な目印なのだ。


「………ふむ」


 共にストーンウッドの切り口を探していた菫ちゃんと目を見合わせ、持っていた鉈で傷付ける。


「円城寺!この目印目掛けて切り倒してくれ」

「あぁ。任された」


 近くでレナート君と共に僕達の動向を見守っていた円城寺に持っていた鉈を渡す。


 彼の固有能力『剛腕』を扱う為に培ってきた素の力がどれくらいあるのか見ものだなと思っていたのも束の間。


 ビュオッと風を切った次の瞬間には、あの聳え立つ一本のストーンウッドは目の前に轟音を立て横たわっていた。


「はぁ…………??????」

「ひぃえぇ!?一発!?円城寺君一発なの!?!?」

「きゃーー!!円城寺かっこいい!!!!その腕でオレ達の事も守ってぇ!」


 若干一名他とは違う反応を示している事を除けば、この場に居るほぼ全ての級友達は僕と同じ反応をしている。


 そりゃあそうだ。


 いくらストーンウッドの脆い部分を狙って切り倒してもらったとはいえ、そこですら普通は苦労して切り倒すのに。


 それを、木材を切る専用の工具では無い鉈で。それも一振で切り倒した。


 流石、東洋地区円城寺家の御子息。恐れ入った…………


(え………?て事は、さっきのローズちゃんとのやり取り………ローズちゃんはもっとやば………)


 何か考えてはいけない事のような気がして、僕は直ぐさま思考を放棄した。


「いやぁ円城寺君凄いねぇ………それと、はい一応それっぽくジェニーと一緒にナイフ作れたよ。どう?」

「あ、ありがとー。うん、めっちゃいい感じじゃん!」

「ジェニーがすっごく器用でねー!コツとか教えて貰っちゃった!」


「うん。萌餅もめちゃくちゃ吸収早くて教えやすかったよ〜」


 少し離れた場所で岩を削り即席のナイフを作ってくれていたジェニーと萌餅が、倒れたストーンウッドを眺める。


 その倒れた現場を直接見てはいなかったジェニーでも切り口に一つの切れ込みしかないのを見て僕と同じく少し恐怖していた。


 今だに円城寺の凄さに圧倒された瞳君や光耀が話し込んでいたので、暇があるなら薪拾いでもして来いと尻を叩く。


「桧。ストーンウッドはここら辺に移動しておけば問題無いかな?」


 そんなレナート君の声が聞こえ、何気なく振り返ってみれば山の斜面に横たわっていたストーンウッド。


 それをレナート君が両手で引っ張り、この平らな地面に移動させていた。


「………レナート君も力持ちだね???」

「…ふふ。ボクも男の子だからね」


 ロイヤルブルーの瞳を細めてコロコロと笑うレナート君をこれ以上無い程意外と言う表情で萌餅が凝視する。


 そう言えば、度々寮の各所で寝落ちした瞳君を右肩に担いで部屋に連れ帰っていた現場を何度か見た事がある。


 円城寺には劣るかもしれないが、十分、レナート君も僕より怪力なのだ。


 あの見た目でだよ?最早こえーよな。凄ぇが勝つけど。


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