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34話 無人島サバイバル合宿

 今週のクラス分けは青。クラスで一緒になったのは萌餅とローズ。


 ラファは確か黄色で菫は赤だった。


「ぷしゅ〜……」


「なんか空気が抜ける音がしたような……」


 後ろから何やら空気の音が聞こえ振り返ると、机にうつ伏せになったローズが煙を上げて唸っていた。


「も、無理です………」


 先程の授業は魔法学。魔法技術の成り立ち、魔法式・魔術式の構築の仕方など、魔法技術全般の知識を学ぶ授業なのだが、ローズは天才肌。

 つまりは、感覚で魔術式や魔法式を使っているローズには理屈で説明されると、とにかく理解できなくて難しいらしい。


 そんなローズに少しでも役立てるように、いつもオレの分かる範囲で拙い解説をしてあげている。


「拙くとも、(わたくし)より理解出来ている時点で既に賢いのですよ……」


 と、このように毎度褒められる。

 ぐでんとしたローズを眺めているとどこからとも無く萌餅がやって来た。


「じゃあお勉強の事じゃなくて他の事を強制的に考えさせてあげるよ」


 そう言って先日配られた一枚の配布物をローズの机へと置いた。


 そう言えば近くにこんな事があったな。


「無人島サバイバル合宿!!」


 無人島サバイバル合宿。その名の通り舞濶が所有する無人島でサバイバルをしつつ、個々の能力強化及び団結力を高める合宿だ。


 無人島で二週間ほど生活するのだが、流石に何にもない島で、約三十人の食事等を賄うのは少々骨が折れるとの事でいくつかの救済措置が施されている。


 無人島に存在している森の中に湧き出る、飲み水。洞窟を利用して作られた食糧を保存するための氷室。


 逆を言えばこれ以外は何も無いとも言えるが、飲み水と現地で確保した食糧を保存出来るだけでもまた違う事だろう。


「んふふ。結構過酷そうに思うけどさ、なーんか意外と上手く行きそうって楽観視しちゃってるんだよね〜」


 机上に置かれたプリントを眺めながらウキウキと語る萌餅にローズが少し笑いかける。


「そうですね……先日も光耀さんが瞳さんの力を借りてしっかりと素晴らしい能力を発揮したのですから」

「そーね〜!一応ナイフと銛を何個か支給されるって書いてあるし」


 トンッと追記事項の記載箇所に指を置き、文章をなぞる。


 ふと、その数段下に書かれていた内容に一同眉を顰めた。


「………ん?『尚、個々の能力値の限界点及び素の力量を自覚する事が目的でもある為、魔法技術の扱える者達には魔法の行使を一日一回迄と言う制限を掛けるものとする』だって」


「…………わぁーお」


 先程まで自信満々だった萌餅はおもむろに顔を引き攣らせ、冷や汗を流していた。


 この文章の内容からして、魔法技術が扱える人は普段なんの制限もなく、魔力が枯渇しない限りは自身の力量に見合った魔法技術が扱うことが出来る。


 しかし、この合宿では際限なく魔法を扱うと言うことをしてしまえば、それ相応に便利に、何の不自由もなく二週間を過ごす事が出来るだろう。


 それでは少し野性味の溢れた、ただのキャンプになってしまう。


 自然の中で如何にして一年生全員分の衣食住を確保し、二週間を生き残るかが鍵となっているのだ。


 これは中々に厄介な行事のようだ。


「瞳!瞳!!瞳!!!!」

「はえ!?」


 突然教師の扉の方から自分の名前を呼ばれ反射的に思いっきり顔を上げる。


 聞き覚えのあるその声は、先日ビッカビカに発光し続けやっとの事で光を抑える事が出来るようになった光耀だった。


 一週間のクラス替えで今週は確かラファと同じ黄色クラスに配属されていた光耀が駆け足で教室へと入ってくる。


「これ!見てよ」


 そう言われ差し出されたプリントは今現在、ローズの机の上に置かれているのと同じサバイバル合宿の告知プリント。


 それならもう見たよと言う意志を込めてローズの机上を指差す。


「違う違う。此処此処!これ、俺達にとって一大事だよ」


 そう言って顔前に持ってこさせられたプリントに勢いよく黒い線が印として引かれていた文章に目を通した。


『魔法技術の扱えない者の安全面を考慮し一日一回、魔法技術を扱える魔導具を支給。対象者:四國瞳・燐光耀』


 ゆっくりと心の中で読み上げた内容に瞠目し、光耀の方へ向き直る。


「………まじ?」

「マジマジ」


 極々真剣な顔で頷く光耀に、確かにこれはオレ達二人にとっては大ニュースも大ニュース。


 普段の生活で魔法が使えないオレ達以外の皆は日常的に魔法を使って生活している上に、学校内には様々な魔導具が導入されている。


 そのため、そんな環境や級友達と生活していくにあたって羨ましいと思わなかった事があるわけが無いのだ。


 超絶羨ましいと思ったし、何より自身の身の危険をラファやシェイの魔法で救ってもらったこともあり、無力感と同時に少しのやるせなさが燻っていた。


 それが今回の多少の危険が及ぶとされる環境下で、たった一回でも魔法が行使出来るようになるならば話は大きく変わってくる。


 いざとなったらその魔法で自分自身の身を守り少しは皆の荷が軽くなるだろう。


 本当にほんの少しだが。


「自分の力じゃないけど魔法を使えるってなったらすっごいワクワクしない!?」


 キラキラとした表情で同意を求める光耀は、さながら遠足が楽しみで仕方が無いという子供のようだった。


 だが、かく言うオレも同じだろう。


 自身の口角が上がっているのを感じ、大きく頷き光耀と肩を組みあった。


「オレも!すっげぇ楽しみになってきた!!」


 一週間後のサバイバル合宿に向けて今日は寮に帰ったら早速準備を進めておこう。


 生活必需品はあまり持っていく事が出来ないが、オレの場合思い出係として魔導式カメラを持参する事を許可されている。


 最低限必要なフィルムと無人島に行ってからはメンテナンスが出来なくなるからしっかりとした事前ケアを念入りに。


 光耀に釣られてウキウキと思いを馳せていたオレは、この後の合宿で多くのハプニングが待ち構えているなどとは微塵も思っていなかったのである。

 次回から、瞳達一年生の無人島サバイバル合宿編が開始されます。トラブル満載の本編をお楽しみに……


 2025年度の『我らは舞濶響轟校の生徒である!』はこれにて書き納めで御座います。

また来年も何卒よろしくお願いいたしますm(_ _)m

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