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31話

 

「泣いてても仕方ないさ〜」

「そうそう!特訓すればなんとかなるさ!」


 遮光寝袋を剥ぎ取られ、剥き出しになった光耀の背中をバシバシと二人で叩く。


 大丈夫さ!なんたってオレ達にはこの魔導式カメラのヘルが居るんだから!


 全部の能力を抑えるとまでは行かなくても、ある程度は抑えてくれるはず!


 それに一度は能力が暴走した光耀と桧、リリィを一気に鎮めることだって出来たのだ。


 という事で早速、一番可能性が有り得る魔導式カメラでの能力の鎮静を行ってみる。


 遮光寝袋に身を包んだ光耀と、ついでに桧と一緒にピースサインでポーズを撮ってもらいシャッターを切る。


 フッとサングラス越しにギラギラと眩しかった光が消え、恐る恐るサングラスを


 現像されたフィルムが難なく出てくるものの、肝心の光耀の発光は完全には収まらない。


「オレの能力効果弱くなってね?」

「う〜ん?もしかしたら波があるのかもね。でもさっきよりは全然弱くなって、いつも通りって感じにはなったね」


 試しにサングラスを外してみると相変わらず発光していたものの、光り方の加減としてはいつも通りの光り方に収まっていた。


「やっぱり能力が目覚めたばっかりって言うのもあって力の加減が不安定なんだろうね」

「やっぱり前三人同時に抑えれてたのはまぐれだったのか」


「まぁ〜今まで魔法使ってなかったんだから、感覚に頼る魔力出力を直ぐに出来るようになるってのは逆に化け物だから」


 そう言って、桧はオレを優しく励ます。


 先日の合同授業で、光耀と桧、そしてリリィが光耀の魔力出力を大幅にミスったことで暴走し、その乱れた魔力に誘発されて共に暴走した時。


 その時は自身にとっての初めての魔法技術の行使であり、且つ、魔法技術が堪能なラファの手助けによって扱えるようになっていたので、その影響により正確に抑えられていたのかもしれない。


 オレもまだまだ鍛錬が足りないということらしい。


「一応元に戻ったは戻ったけど、またいつか戻りそうだね」

「うん。俺もそんな気がする……」


 魔法技術を行使したことの無いオレと光耀は他の人達に比べて、魔力の操作に疎く、力を抑える為の出力の加減が未だに理解できていない。

 オレですら最近でも読書に集中しすぎている時、突然目の前に「香ばしい」と言う文字だけズームアップした事があった。


 ご飯レビュー中の文章は特に、想像を膨らませ集中する事により突発的に能力が発動する。


 以上の事からオレと光耀は他の人達よりも魔力操作の特訓が必要なのだろう。


「あ、良い事思いついた」

「え、何なに?」

「二人とも、ちょっと僕から離れてて」


 言われた通りに、光耀と共に桧から少し距離をとる。


 何かが閃いた桧は先程の光耀との攻防の時に床に置いた、自らのスケッチブックを拾い上げスラスラと何かを描き始めた。


「抑えようとして抑えられないんだったら…………」


 ビリリッ


「「??」」


 桧は、真っ黒なボックスの絵と箇条書きされた文章が書かれた画用紙を一枚破り、地面に置く。


 懐から出した羽根ペンらしきものを力一杯に画用紙に突き刺した。



「全部……ぶっ放しまくれば良いじゃない!!!!!」



 桧の声が収まったと同時に画用紙から淡く光ったオーブが浮かび上がる。


 次の瞬間置かれた画用紙が光の粒となって消え、同時に真っ黒な小屋サイズのボックスが目の前に現れた。


「!……………」


 突然の出来事に光耀と共に黒いボックスを見つめ、空いた口が塞がらなくなった。


「僕の能力は『空想具現化』。その物の構造やそれに使われている素材の成分をある程度理解していれば大体の無機物を制作することができるんだ」


「急ごしらえだからただのボックスになったけど、こう見えて建物を描くのは得意だから!」


 床に突き刺した羽根ペンを拾い上げ、自信満々に腰に手を当て、桧は誇らしそうにドヤ顔をする。


「す、すっげぇ………!」


 突然の巨大建造物の顕現に、少し離れた場所に集まっていた学友達の視線もこちらへと向けられていた。


 菫も同じく開いた口が塞がらない様子で、流石のラファも驚愕と言った表情を浮かべている。


 誰もが予想をしていなかった出来事に関心を顕にしていると、桧がちょいちょいと手招きをするので、そちらへと移動する。


 そこには全体が黒くてあまり目立たなかったが、銀製のドアノブが付けられた扉が備わっていた。


「これはね、内側の壁に遮光フィルムが貼り付けられた防魔素材で生成した小屋だよ」

「………成程?って事は、この中に光耀が入って能力を全開放するって訳だ?」


「ん?違うよ?」

「へ?」


 桧の意図が分かった気がして提案すると、それはいとも簡単に否定されてしまった。


 髪の色と同じ純粋そうな和栗色の瞳が真っ直ぐこちらを見つめ、にっこりと笑う。


「僕達、()()で入るんだよ」


「「………………は!?!?」」


 衝撃的な言葉に光耀と共に目をひんむき、心底困惑と言った表情で桧を凝視する。


「だって、光耀は今瞳くんによって能力を多少抑えられているじゃない?」

「うん。いつもより少し光ってるって感じだね」


 先程出現した黒いボックスをコンコンと叩き、ドアを開ける。


「多分だけど光耀は自分の能力の発光は抑えることだけしか今までやってきたことが無いじゃない?」

「そうだね」

「それならば自力で今の能力が抑えられた状態から能力を放出するのなんて出来ないでしょ」


 そう言われた光耀は試しにフンッとその場で踏ん張り始めるが、力んだせいで顔が赤くなるだけで自身の発光は先程と何ら違いない。


 これは間違いなく、オレの制御が効いている証だ。やったぜ。


 桧曰く、魔力の出力を自力で行うには、自身に流れる魔力を想像力で可視化し、感覚を研ぎ澄ます。


 いわばオレが先日ラファに加護の形を想像して能力の発現を促してもらったような事の魔力バージョン的な事だそうだ。


 加護や自身のオーラに関しては己自身の外側にある『気の流れ』だが、魔力に関しては己自身の内側を流れている。つまりは、血液と共に体中を循環している。


 魔法技術を扱える殆どの人は己自身に流れる魔力量が多く、本能的に可視化しやすい故コントロールがしやすく容易に扱うことが出来る。


 しかしその反対であるオレや光耀の場合は魔力量が少なく、本能的に魔力を可視化する力があまり無い為、魔力の出力調整が難しいのだ。


「まぁだからこそ。このボックスに皆で入って、ついでに瞳くんもさ魔力の流れを掴んでその瞳の力もっと上手く扱える様になったら一石二鳥じゃない?」

「確かに……」


「僕の能力は通常の魔力出力にプラスして想像力、いや創造力が必要だから感覚に頼る力のコントロールに関しては得意だからね」


 まぁ、前は光耀のせいであんな醜態晒しちゃったけど。と隣で佇む光耀に視線を向けると光耀はわざとらしく「テヘ」と舌を出した。


 少しずつ調子は戻ってきているようで何よりだ。


「それにもし仮に爆発したとしても防御結界の展開も得意だから任せて」


 グッジョブサインを掲げる桧に魔法が使えないオレ達は頼もしさを感じ、その言葉を信じて頼ることにする。


「んじゃあ、出来る範囲で最大火力。出してみよーか」


「「お願いします!!!!」」


 光耀の能力を抑える側だったオレもいつの間にやら教えを乞う側へと変更され、二人仲良く頭を下げる。


 桧によって開け放たれた黒いボックスの中へ一歩足を踏み入れ、静かに扉が閉められた。

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