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29話

 瞼の裏が赤く揺らめく。


 炎のような陽炎のようなそれはユラユラと漂うばかり。夢のような夢でないようなこの光景をただ目で見ているだけ。


 ふと一つの明確な人の影が現れフラフラとしていた。


 ゴンゴンゴン…


 重苦しい金属が何かにぶつかった音が耳に届き、目の前は真っ暗になった。


 近くにあった気配がスっと無くなり瞑った瞳の裏が再び明るく照らされるのが薄らぼけた脳内で理解した。


「よみいますか?」

「………? ……その子かは分からないけど、カメラを持った彼なら」


「良かった。合ってます。よみはあの子の愛称で、ボクと二人だけが呼べるよう結んだんですよ」

「…………きみ……」


「………ふふ」


 一瞬沈黙が辺りを支配した後焦った様な声色の会話が段々と近づき始めた事で違和感を感じ脳内を起こすよう促す。


「んんぅ…………ん?」

「あ、おはようよみ。起きたら部屋に居なかったから迎えに来たよ」


「あぇ………………え?」


 眼前には既にループタイが付属している制服に身を包んだラファがオレに回復魔法をかけていた。

 目覚めたばかりの脳内ではラファの言動に理解が追い付かず、疑問符が浮かぶ。

 近くにあった窓を見ると、そこからは朝日が差し込み木々の隙間から覗く晴天の空を垣間見た。


 脳内が一気に覚醒し、朧気な昨日の状況が走馬灯の如く駆け巡る。


「大っっっ変なご迷惑をお掛けしましたぁ!!!!」


 アイザックさんにお忘れ物を届けようと深夜の森を幸と共に彷徨い疲れ、恐らく能力の使いすぎによる負荷と睡魔による眠気であの倒れたまま爆睡をかましてしまったというわけになります。


 それが外での出来事だったはずなのに今屋内のカウチに自分の体があると言うことはつまり、そう。


 わざわざ運んでいただいたということ!!!!!


「ぇあ……綺麗な土下座………気にしてないよ。よく眠れた?」

「お陰様で………」


 この通りピンピンしてます。


 昨夜暗闇の中で見たアイザックさんは暗がりで見えにくかったが、今は朝日に照らされよく見える。

 全体的に少し伸びたストレートの髪は落ち着いた群青色。髪の間から覗くのは金色を彷彿とさせる煌めく琥珀色と深みのある黄土色が混じりあった瞳。


 真っ直ぐ瞳の中を覗かれると、自分ですら知らない秘密をも見透かされてしまいそうな感覚に陥る。


「と言うより、なんでラファはオレの場所分かったの??」


 昨夜はアイザックさんの所へ行ってくるとは言ったものの、何処へ行くかというのは伝えようにも場所が分からず言っていなかった。


 オレですら迷ったのに何故すぐに場所が分かったのだろうと言う疑問が残る。


「うん。まぁ……何となく、かな?」

「何となく…………成程。」


「………」


 少し考えると出てきた答えはオレは方向音痴だが、ラファはそうでは無い。

 つまり、方向音痴でなければ意外と行き場所など分かるものなのかもしれないという考えに至った。流石ラファ。


 今度是非とも、知らない土地に旅行に行く際には共に来て欲しいものだ。


 恨めしそうにラファを眺めていると、幸がラファの周りを優雅に舞い、差し出した指先へと止まり羽を休める。


 穏やかな表情でラファは瞳を瞑り幸を愛でる。


 パシャ


 すかさず陽光が差し込みキラキラと輝くエメラルドグリーンが映えるラファを思い出の一枚として収めた。


「それにしても、君は……えっと」

「あ、オレは《思い出係》をしてます。一年生の四國瞳です。そっちのイケメンが、《治療係》をやってるレナート・エデンリーワン」


「あぁ、僕はアイザック・ワイアット。この学園の《情報係》を受け持ってます。よろしくね」


 アイザックさんがオレの名前を言い淀んだ事で、オレが一方的に名前を知っているだけだと思い出した。

 相手からしたら会ったことも無い相手に名前だけ知られ、夜中に突撃かましてぶっ倒れた人間の介抱をさせられたこの状況。さぞかし迷惑だろう。


 それに多分、この部屋にカウチとソファが一つずつしかないのでオレはラファさんの寝床を奪って寝ていたのかもしれない。反省。


「ところで瞳君。なんで君は昨日こんなにボロボロだったの?」

「あぁ〜それは……萌餅に場所を教えて貰わずに自力で探してたら、なんか瞳の能力が使えそうだな〜と思って、集中を切らさずに前だけ向いて歩いてたら木々に髪を引っ張られ傷つけられ……的な?」


 この場所を見つけるまで少々時間を要した為、結構な時間舞闊の敷地内を彷徨って居たと思う。


 その際、森で木々の枝葉が体を直撃しても意識をそらさずただ幸を見て歩いていたのだから、そりゃあこうなりますわな。


「………イヤカフの通信使わなかったんだ?」


 一瞬の沈黙。純粋な疑問を持ったアイザックさんの瞳は困惑の色を映していた。


「え、あ!!その方法があったの忘れてた!!!」


 自分の目は節穴か。と言うより思考回路に抜けがありすぎている。

 記憶力に関する能力を持っているはずなのに忘れっぽすぎるのはどうなのだろう。


 やはり瞳で見たものにしかそれは発揮されないのか、それは定かではない。


 アイザックさんの言われた通りに試しに萌餅に通信を繋げてみる。


 まず、自身の耳に付けられたイヤーカフに指を添える。次に通信を繋ぎたい相手の名前を思い浮かべ名前を呼ぶ。


「萌餅」


 シーー……ン


 どこかに繋がったようなノイズ音も無く、ただただこの辺りの静寂が身を包むだけ。


「何も、変化が起こりません」

「あれ……もしかして瞳君、魔法使えない体質……??」


 魔法も何も。(まじな)いですら使えたことは自分の知る限り脳内には記憶されていない。


「かろうじてこの前、ラファの手助けで加護の力を使えた程度です。物心ついた時から魔法、使えた事ないです」


「あ〜………なるほど?」


 ………………………。


「それは、通信……………使えないね」


 困ったような申し訳ないような表情で告げられた真実に深く絶望する。


「えぇ!!!!じゃあもし仮にオレが遭難したら誰にも連絡取れないってこと!?」

「そうなるね」

「うそぉおおおお!!!!」


 オレの悲痛な叫びが部屋中に響き渡る。

 騒がしさから様子を見に部屋に降りてきた月夜見さんは、不思議そうな表情のままサンドイッチを頬張っていた。


「そうなったらボクが迎えに行くから」


「有難いけどなんか嫌だぁああああ!!!オレもかっこよく通信使いこなしたかったのにぃ!!!!」


「大丈夫だよ。通信が使えなくても、首席やってた人も前まで居たからさ」

「そうそう。何とかやっていたものね」モグモグ


 何だかんだこの場にいる皆に慰められているような雰囲気に居たたまれなくなり、改めて自分の無力さに打ちひしがれる羽目になった。


 ラファの元からやってきた幸は目の前をチラチラと青みがかった鱗粉を舞わせる。

 カウチについてはいけないと思い咄嗟に手で受ける。


 青色を中心とした赤や白のキラキラとした鱗粉を眺めている内にふと気づいたことがあった。


「光耀……」

「?」


 以前、光耀の部屋で素泊まりをしていた期間にラファが回復魔法や水魔法等の小技を披露してくれた時、オレの隣で眺めていた光耀の瞳がかつての自分自身と同じ様な憧れの色に染まっていた。


 もしかしたら光耀もオレと同じく魔法が使えない体質なのだとしたら………


 大親友確定!!!!


「ブランケット有難うございました!オレ用事が出来たのでちょっと帰ります!!アイザックさん!今度一緒にご飯食べましょうね!」

「え?あ、うんまたね」


 脳内に繰り広げられる思考に少しばかりの期待を抱き、お世話になったアイザックさんと月夜見さんに挨拶を交わし、自己流の親愛の証としてでのお食事の約束を取り付け自身の体に掛けられていたブランケットを素早く畳み、カウチから飛び降りて扉の方へと向かう。


 やはり親交を深めるためには共に食事をする事に限る。是非とも寮の食堂であの美味しい食事を出来れば菫達も混じえて皆としたいものだ。


「え!?早い!すみませんお二人共、早朝からお邪魔しました」

「ふふ。またの機会に」


 いきなりの行動にラファがオレの名前を呼び月夜見さん達にお礼を言い、後を着いてくる。

 後ろを振り返ると、サンドイッチを片手に手を振る月夜見さんと少し困惑した表情のままつられて手を振るアイザックさんがお見送りしてくれていた。


「ちょっとよみ。急にどうしたの?」

「確認したい事が出来たんだ!」


「確認??」


 緑の香りが充満する林を駆け抜けながら頭に幸を付けたラファが悠々と追いついた。オレの行動の意味がまるで分からないと言うような表情は相変わらずイケメンだった。

 朝日は既に高い位置へと昇り、早朝という時間はとうに過ぎていた。幸い今日は休日。


 光耀に確認したい事を確認したら、迎えに来てくれたラファに対して何かお礼に料理でも作ってあげよう。こう見えてオレは意外と家庭料理は作れるからな。



 きっと朝早くから探してくれていたはずだ。朝食を食いっぱぐれる事は無いが、流石にオレのせいで朝食の時間が遅くなるのは申し訳ないので特別美味しい物を提供しよう。料理部には負けるだろうけど……ま、こう言うのは気持ちが大事だよ気持ちが!!

「光耀〜〜!!!!!」

「んあ。ひふぉみ?どふぃたふぉ?」(瞳?どしたの?)

「あ、ご飯美味しそ………それ何?」

「これふぁ。(ゴクン)リナズナと香草で和えられた鴨肉のローストビーフだよ」

「あぁ〜何それぇ…絶対美味しいやつじゃん……お腹すいたぁ………いやいやいや、今はそうじゃなくて!」

ズイッ

「!? なになになになになに」

「光耀…………光耀はイヤカフの通信を使える?」

「へ?通信??」

「………いや、違うな。言い方を変えよう。…………光耀は魔法を使える?」


「? 俺は魔法使えないよ??」







ガバチョッ


「ラブフォーエバァアアアア光耀ぉおおおおお!!!!!!」

「え、え、え、ええええええ!!!なになになになに怖い怖い怖い怖い!!!!レナート!レナートォオオ!!!!見てないで助けてぇぇぇええええ」


「良かったねよみ。瞳の事よろしくね?」(ニッコリ)

「なに!?どおいうことぉ!?!?」

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