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26枚目 愉快な寮生達

 

「うん。だいぶ精神的なダメージは軽減されつつあるね」

「おぉ。良かった。」


 朝。最近のオレとラファは一人部屋に居を構える光耀の部屋で寝泊まりをしている。


 かの舞濶の悪六調査により、人の手で起こされた魔法技術などではなく、本物の奇怪な現象に遭遇したオレ達。

 故にその日の夜から光耀の精神面が安定しなくなった。


 それを不味いと思ったオレは、治療係を主軸として活動するラファに無理を言って光耀の精神面のケアをお願いした。


 その旨を伝えると、心の弱った光耀が夜を一人で過ごすのが怖いという事で二人して部屋に泊まり込み、暫くの間お泊まり会をしたのだ。


「添い寝が効いたかな?」

「顔色段々良くなってきてるもんね〜」

「本当二人ともありがとう……夜も眩しかったよね…」


 光耀自身の発光する腕とオレ達を交互に見つめ、申し訳なさそうに眉根を下げる。

 確かに光耀は昼夜問わず発光していた。しかし、光耀はオレ達に気を使って遮光素材の寝袋に全身を包み、その上から更に布団を被って寝ていたぐらいだ。


 オマケに光耀から貰った遮光素材のアイマスクもしていたので最早真っ暗で何も見えず、スヤスヤ眠れたのだ。


「なんの問題も無い!!」


 なんならオレは明るい場所だろうと眠かったら眠れるんだよな。


 光耀に安心感を与えようと笑顔でVサインをかますとそれを見ていたラファも同じくVサインをした。


「よしっ出来た!」

「ん?」

「オレ特製魔導式カメラ〜」


「おぉ〜」


 かく言うオレも悪六で経験した恐怖により怯える夜を過ごして居たが、光耀とラファの三人で共に過ごすことにより少し心の余裕が出来た。

 故に先延ばし先延ばしにしていたラファと陽翔、蓮用の魔導式カメラをやっとの事で作り上げることが出来た次第だ。


 これはオレ特製という事もあり、本来の魔導式カメラは魔法技術を扱える人しか扱えない仕様だが、何せオレ特製。


 魔法技術を使えない人でも使える様にカスタムしたのであーる。

 それじゃあ魔導式カメラじゃねーじゃんって?そこはまぁ、気にすんな!かっこいいから良いでしょ!

 実際、魔導具に組み込まれている部品を取り付けてその機能を使えるようにしているんだから魔導式なんだよ!誰がなんと言おうとも。ね!!!


「はい!じゃあこのカメラは今日からラファのね!」

「ふふ。ありがとう大事に使わせてもらうね」


 陽翔と蓮の分の魔道式カメラも会えたら渡しとかなきゃな。


 コンコン


「おはよぉ〜。お〜相変わらず光耀は眩しいなぁ〜」


 ドアを鳴らされ入ってきたのはジェニー。紫根色のサラサラとした髪はライムグリーンのキラキラとした瞳を際立たせている可愛いよりのイケメンだ。

 同じ一年生で光耀の隣の部屋の住人だ。


「「「おはよー」」」

「今から朝ご飯行くけど皆一緒に行く?」


 時計を見れば既に八時。今日は授業が休みだとはいえ部活動が普通に有るのでそろそろ起きなければならない為、早速四人で食堂に向かう事にした。


 ・

 ・

 ・


「うわぁあ〜あ……」

「どしたのジェニー。寝不足?」

「少し隈があるね」



「ん〜……早く色んな魔術使いたいから魔術書読みふけっちゃってさ〜」


 欠伸をしながらバターパンを口に詰め込むジェニーは眠そうながらも何処かワクワクとしていた。

 ジェニーは北部の一番大きなお家であるフィードン家の末っ子。

 代々魔術師の家系として育てられるフィードン家の中で唯一魔術の才が開花しなく、肩身の狭い生活を送っていたそう。


 だけど、歳を重ねる毎に並外れた魔力のオーラを纏い始め、試しに魔術を発動してみると魔術式を扱える様になったそう。更には個人特有の特殊能力、魔法式を保持していることも分かったらしい。


 オレで言う所の「動体視力」と「場面瞬間記憶能力」「色彩感覚激化」のジェニー専用能力的なやつだな。


 それでもって今まで散々いびって来た家族を見返す為に独断で舞闊に入学し、フィードン家の誰よりも凄い魔術師になって見返して謝らせて土下座させて顎で使ってやると意気込んでいた。


 いわゆる下剋上なんだよね。かっけぇ……


「皆おはよ〜」

「おはようございます」

「おはよう」


 空豆を口に頬張ったと同時に朝食を手に目の前に現れたのは寝起きの菫とローズ、それから東洋地区一番大きなお家である円城寺家長男、円城寺悠剣が同席した。


「皆おはよ〜」


「ん!円城寺良いとこに!!この後実験棟で魔術の訓練するからさ、剣のエンチャントとか付与魔術試させて!」

「あぁ、良いぞ。後で部長に言ってみるな」


 座って早々、ジェニーの提案を快く受け入れる円城寺はおおらかで気前が良い、男前がカンストしたような人。にこやかに笑うナッツブラウンの瞳は優しさで満ち溢れている。中身がまじのイケメン。


「ん!ごち!!」

「食べるの早っ」


 ジェニーは朝食のバターパンを口に詰め込み、ポタージュで流し込むといそいそと自分の皿を洗い始めた。


 今のジェニーは知識だけはあるが、経験が劣っている魔術師。とにかく色んな魔法技術を試したくて試したくて時間が足りないみたいだ。


「じゃあ円城寺!!実験棟で待ってる!無理だったら無線頂戴!」


 自らが使った皿を丁寧に片付け、持ってきていた数冊の魔術書を片手にジェニーは早足で食堂を後にした。


「ん〜朝から元気だ」

「清々しいくらいだ」


 呑気に朝食を食べる光耀と既にこの場を去ったジェニーを見比べ、ラファと共にもくもくとトーストを頬張った。


 ◆


「寝坊しふぁ()〜!!!!」


 少し人気が少なくなり始めた食堂に一人のトースト、では無く三色団子を口に詰め込んだ少女こと萌餅が現れた。


「あぁっ萌餅。走ってたら危うくお団子喉につまらせちゃうよ」


 ラファが気にかけ洗い終わった自らの皿を片付け、直ぐさま萌餅の方へと駆け寄る。

 このスマートな心遣いがとてつもなく紳士。あれが本当のイケメンなのだ。


「あれが噂の寝坊トースト女子高生」

「では無く、寝坊団子女子高生って訳だ?」

「あ、陽翔と蓮ちょうどいい所に」


 そんな萌餅を空の食器を手に持った二人が眺めていた。

 足元にはダックスフンドのスフレが寄り添い共に足を止めて萌餅を眺めている。


「二人にあげる魔導式カメラが出来たから渡しとくね」

「えっこれ貰っていいの!?」

「うわぁ〜凄。デジカメより凄いじゃん」


 ()()()()とか言う代物はちょっと分からないけど、取り敢えず出来栄えに関しては二人共お気に召した様だ。

 早速、肩紐を取り付けた魔導式カメラを首から下げ、色々な方向から眺めては試し撮りと称してスフレを被写体にし写真会がスタートした。


 パシャッ


 う〜ん今日もvery cute…


「おはよ〜……」

「おはよ萌餅。寝坊したの?と言うかジェニーもそうだったけど隈凄いことになってるよ」


 眠そうに瞳を擦る萌餅の顔を見ればガッツリと瞳の下に不健康そうな隈が存在していた。

 これじゃあ可愛い顔が台無しだ。


「ん〜調べ物してて、気づいたら二徹してた………」

「二徹!?」

「圧倒的な睡眠不足だね……」

「ん〜……この本と巾着返さないと……いけないんだけど………」


「わっ!とと……あれ?寝ちゃった……随分器用だね」


 団子を咀嚼しながらコクリコクリと船を漕ぎ始め、思いっきりラファ向かって倒れ込んできた萌餅。


 どうやら電池切れらしい。


 このままではラファも身動きが取れないだろうと思い二人で萌餅を担ぎ、ソファにクッションを並べ横たわらせた。


「本は図書室なのは分かるけど、この巾着は誰から借りたの?」

「…………ん〜。いのう(きのう)食堂に……置いてあっ、た。……………アイザックさんの……」


 言葉を紡ぎ切らずにまたスヤスヤと寝息を立て始めた。


 萌餅の言葉からするに本自体は自分で借りた物だと思われるが、この巾着は昨晩食堂に忘れ去られていた物なのだと推測。


 アイザックさんと言うと、確か前に萌餅から関わる機会があったら是非是非〜的なニュアンスで紹介された人物。

 体質上昼夜逆転していると言っていたので、恐らく今は睡眠時間だろう。


「うん。まぁ、取り敢えずボク図書室に用事があるからこのまま萌餅の本も返してくるよ」

「ん〜じゃあ!オレが夜アイザックさんにこの巾着返してくる!オレとラファに感謝するんだな〜萌餅」


「んん〜………」


 もぞもぞと寝返りを打ちながら本格的に眠り始めた萌餅にラファと共に苦笑し、大事に抱えてあった本を腕から抜き取り早速ラファは図書室へと出向いた。


 そのまま萌餅は昼まで寝続けた。

 夜前までに起床は出来たので一応アイザックさんに自分で届けるかと尋ねると、折角だから行ってみて欲しいとお願いされた。


 そう言えば前にもアイザックさんと関わる機会があったら仲良くして欲しいと部長達から言われてたのを伝えられたな。



 であれば、さっそく届けに行くまでだよな!

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