19枚目
2023/12/31
二話同時更新です
「まずは自分に加護がかかっているって言う想像をするんだ」
「想像……」
「加護の形はどんなのでも良い。自分を中心に泡みたいに囲まれてるとか。自分から煙のように溢れ出しているとか。他にも人型でその人に包まれてるとか、かな?」
ラファの指導を元に想像力を働かせ自分なりの加護の形を創造する。
泡のように囲まれる。加護が自分から溢れ出している。何処からか供給され続けている。
何かに包まれている………………………
「はっ……」
「見えた?」
集中し閉ざされた瞳が本能的に開いた。今確実に何かが見えた。これは……
「オムライス……たべたい…………」
「……………真面目にやろうか。……よみ………?」
わぉ。Black Smile……
すみません真面目にやります。
少し煩悩が入った故オムライスが見えると言う不祥事に静かに怒りを露わにするオレの親友。普段は美しい顔でニコニコしているのに瞳の奥が笑っていない笑顔はとてつもなく恐ろしい。
気を取り直すためもう一度瞳を閉じて深く息を吸う。吸いきった息を吐くと同時に周りの音が消え去る。
俯瞰的に自分自身を見つめる視点を想像し更に加護の形を作る。
オレにとっての加護の形はなんなのか。
想像を膨らませゆっくりと構築していく。
他の思考に気を取られぬ様意識のもっと奥深くにまで潜り込む。潜在的な何かを探るため深く深くへと。
(………………あ、今何かが……)
瞑られた真っ暗な視界の中で一瞬眩く光ったものが見えた。もう暫く同じ状態で待ち続けてみると再び何かが上から下へ舞散って行った。
暗闇に見えたのは白く眩い羽。
その瞬間視点が切り替わり空から膝を着いて項垂れる自分の姿を見た。そしてそのオレの肩に顔をうずめて背後から必死に抱き抱える人が居た。
ただただ、神秘的な光景だと思った。
周り全てが底知れぬ暗闇の中でただの二人っきり。二人を暗闇の淵から浮かび上がらせているのは長髪の彼の背中から生える一対の純白の翼。
これがオレの加護の形だと思い俯瞰的な視点で自分を含めた彼等を眺め続ける。彼は自らの翼を広げて抱き込んでいるオレを覆い隠し此方に目をやる。
この空間での光源は彼の白く輝く翼のみ。一瞬合ったその瞳は光り輝いている筈なのに何色なのかが分からなかった。
『....守..』
「おっ!四國出来てるぞっ!」
「はっ……」
先生の声掛けと同時に眠りから覚めたかのように意識を戻され目を開ける。瞼にこびりついた暗闇で見た光景が瞬きをしていくうちに段々と光へと溶けていく。
目の前にいたのは変わらず先生とラファだった。
どうやらオレの加護を認識し、能力の増幅を促す魔法を展開することが出来たらしい。
「やったぁ!!オレ出来た!?魔法使えてる!?」
「うん良い感じだよ。ちゃんと加護の形が見えたんだね」
「やっ……だぁっ!!」
「よみ!?」
いきなり視界がおかしくなり驚いて盛大な尻もちをついた。起立した姿勢のまま尻もちをついたお尻がジンジンと痛むが今はそれどころでは無い。
咄嗟に瞳を瞑りバランスを保つ為地面に這う形になる。
「えっ。本当にどうしたの?何かあった?」
ラファが心配して同じ高さにしゃがんでくれたのか、背中を優しくさする。
だが、残念ながら背中をさすってくれても治らない。この視界の距離感のバグが引き起こす気持ち悪さ。
そう。先程突然オレに起こった出来事は、ここには居ないはずの散歩中のスフレと陽翔と蓮がまるですぐそこに居るかのように視界に入ってきたからだ。
それもここから遠く離れた寮の前に居る三人が。くっきりはっきり。
「ううぅぅぐぅう……遠くにあるはずの寮が近くに見えるぅう…………きもちわるぅういぃ………」
「四國。それはお前の能力が発揮出来た証拠だ。恐らくもう目を開けても大丈夫な筈だぞ。何せ集中が切れてるからね」
「えぇえ……脳の処理が追いつかないから嫌でぇす……」
先程の状態を体験して治った確証も無いのに目を開けるというのは些か勇気が必要な行為である。もし治ってなかった場合またこの視界と脳の処理が分離した絶妙な平衡感覚がおかしくなる感覚を体験しなければならな……
「オープーン」
「えっへぇ!?!?!」
強制的に瞼を指で開けさせられた視界の目の前にはイタズラ顔をしたラファが居た。
視界に特に異常はなく先程見えていたスフレ達も見えない。
どうやらこれは自分が持っている能力を集中力により研ぎ澄ましすぎた結果、能力が高まり極限的に目が良くなりすぎたらしい。
これをコントロールする事により自由自在に瞳の力を使える様になるのだとか。
もしかしたらこれから特訓を続けると遠くのものをまるですぐ近くにあるかのように見たり皆が見えない様な景色を見ることが日常的に出来るようになるのかもしれない。
「よ、良かったぁ……治った…………」
「これぞ荒治療ってね」
「荒治療過ぎるわ」
ラファからの抵抗出来ない荒治療を経てなんとか元に戻った視界を堪能する。辺りを見回すと少し離れたところで他の皆も自分達の能力を制御しているのだろう。絵面的に混沌な人達もいるが近づいたら文字通り火傷しそうなのでやめておく。
あつそーだなぁー(棒)…………
そのまま右に視線を逸らすと菫もローズと一緒にオレと同じ加護の形を創造する訓練をしていた。
床にペタンと座り、手を繋いで向かい合って居る。
「え、かわよ。何これ可愛すぎん?」
「思いっきり声に出てるよ」
いやもう天使やん。女神やん。可愛すぎるだろ。
菫は果たしてどんな加護の形を創造しているんだろう。やっぱり可愛らしい動物の加護だったりするのだろうか。意外とかっこいい動物なのかもしれない。
ほのぼのとそんな事を考えながら次いでにラファに魔法の使い方を教えてもらっていた。まぁ、使えるかどうかは置いておいて……
「うわぁっ!!!!!」
「「!?!?」」
突然菫の悲痛な声が響き渡る。驚いてすぐ様菫とローズの近くへと駆け寄る。菫が顔を歪め頭を抱えたまま床をのたうち回っており、傍から見ていても明らかに異常事態が起こっているのが分かった。
オレは咄嗟に床で苦しむ菫の動きを止める為に必死で抑えている腕を掴む。
菫はどうやら頭を抱えているのでなく力一杯『耳』を塞いでいた。
「菫っ」と声を掛けるとより一層縮こまり何かを堪えるように嗚咽を漏らし続ける。
これはもしかして先程自分が体験したものと一緒のものかもしれない。オレは『瞳』に関する能力を持っており、菫は『耳』に関する能力を持っていた。
つまり、恐らく菫は今聞こえている音が沢山聞こえていたりはたまた小さいものから大きいものまで全てが大音量で聞こえているかもしれないということだ。
オレは一度口をつぐみ耳を抑えている手の上に己の手を重ね近づく。
「落ち着いて他のことを考えよう」
最小限の音量でそう伝えるとそれに気がついた菫が固く閉じられていた瞳を空け、オレの瞳を見つめた。何かしらのオレの瞳の能力が出る事を願い、とにかく今は菫を落ち着かせることだけを考えて集中した。
すると徐々に力んでいた腕から力が抜けていき、重力に従い腕が耳から外れ床へと降りた。
「……………あ、戻っ…た」
「はぁ〜〜……良かったぁ〜」
「大丈夫?」
「頭、割れるかと思った……」
放心状態の菫はボーッと暫くオレの瞳を見ながら質問に答えていた。
えー……要するに今オレと菫は見つめ合っている状態が続いているという訳だ。いや、どう言う状況?
自分から目を逸らすと言うのもなんだか忍びないので取り敢えず菫が目をそらす迄見ていよう。
菫の黒い瞳の中に反射したオレが映り、ゆらゆらと揺れる瞳孔を眺めるのも悪くは無い。この状況で変顔でもしたら菫は笑うのだろうか。




