17枚目
「来訪者って事は正真正銘の異界人!?!?」
「ワフッ」
「あ、起こしちゃった」
一呼吸置いた後勢いに任せて少し大きな声で叫んでしまい、咄嗟に口元を手で覆ったが時すでに遅し。陽翔の腕の中で眠るスフレを起こしてしまった。ごめんちゃい。
「あはっ。やっぱりびっくりだよね~僕達も未だに信じられないよ」
「という事はこれは異界のニホンって言う景色?」
「そういう事だね」
まさかの異界人と出会うなんて思わなかった。確かに萌餅から教えてもらった来訪者は魔物やら道具、人物の場合もあると聞いた。でも今、よくよく考えたらオレ達が住むこの世界に来た異界の来訪者達は元の場所へはどうやって帰るのかという疑問が浮かぶ。
もしかして永遠に帰れない……?そんな事あってもいいのだろうか?
大切な家族や友人が元の故郷にいたのでは無いか?それなのにオレと言うやつは朝からこんなハイテンションで過ごしてて大分無神経だったんじゃないのか……?
「あ〜そんな顔しないで〜」
表情に出ていたのか仕草で分かったのか、陽翔がスフレを蓮に預けオレの頭をわっしゃわっしゃと撫で回した。
驚いて目の前に居る陽翔を見ると予想に反して満面の笑みを浮かべていた。蓮の方へも視線を送ってみるとまたまたこちらも清々しいほどの満面の笑み。
訳が分からずポカンとしていると二人は口を揃えてこう言った。
「「あんなクソみたいな家出れて清々したから」」
クソみたいな……家?
あぁ~……つまりは故郷の、それも家の事情が最悪で寧ろこっちの世界に来た方が幸せになれてるって事?
と、ここで良い感じの時間になったので集合場所の東校舎へと移動することにした。二人はクラス・部活には所属しておらず、いつもこの可愛らしいスフレを文字通りお世話をしているらしい。
取り敢えず朝の散歩という事で二人とスフレも一緒に行くことになった。
「でもクソみたいな家って相当厄介ないざこざが有ったという事なのかな?」
「いざこざなんて可愛い言い方だよ。こっちは危うく殺されそうだったんだから」
「殺!?」
いきなり物騒だな!?何か権力争いとか複雑な事情があるんだうな……
図書館の本でたまに見たドロッドロの三角関係やら王政においての一夫多妻制での誰の子が王候補になるかとか。そういった次元の話が現実のどこかにはきっと有るんだなぁ……
遠い目をしながら二人の話を聞いていると面白い話を聞いた。どうやらさっき見せてくれた小型の機械はなんと写真を撮れる優れものらしい。
オレが持っているこの魔導式カメラは部品が大きいという事もあり小型ではあるが、明らかに写真機という感じが拭えない。
が、しかし陽翔と蓮が持っている『スマートフォン』は薄型かつ小型であり、なんとレンズがオレの倍以上に小さいのにあんなに綺麗な写真が撮れているとは…恐るべし異界文化……
「俺達の国というか世界はまず、魔法という存在が無いんだ」
「え!?そうなの??」
「そうそう。だから科学技術だけで発展してるからそういった面では少しここよりは最先端かな?」
やはり国と言うか、世界が違うだけでその国の特色は違う事は前提としてそもそも、魔法技術が無いということも有り得るのか。
とすると、また何処かの異界は逆に科学技術が無く魔法技術だけが発展しているところもあるんだろうなぁ…世界って広い。
じゃあ、寧ろ魔法技術と科学技術が混合しているのがこの世界だけって言うことも有り得ちゃったりするのかな?それはそれで唯一無二って感じがしてカッコイイな。
でもオレ個人としてはそこよりも二人が持っているスマートフォンのカメラ機能が気になって気になってしょうがない。
(さっき部活はどこにも所属してないって言ってたしもしかしたら勧誘できちゃったりする…かも!?)
丁度話が少し途切れたので思い切って聞いてみることにする。
「ねね!二人ともさ!写真部興味ない??」
「話が大分飛躍したね?笑」
少し話題が逸れたなという自覚は有りながらも先ほどの綺麗な写真を見て建物の写し方光の取り入れ方、構図が美しく写真を撮るのが上手いのではないかと仮説を立てた。
あわよくば写真友達になりたいものだ。
二人は驚いた様に目を瞠り少し視線を上げ何かを考える仕草をした。何か都合が悪い事が二人にも有るのかもしれないと思い、無理強いはしていないと一言付け加えておいた。
「う〜ん…確かに写真部だったら平凡な僕達も活動出来そうだね」
その言葉にハッとした。そう言えばここは優れた能力を持つ者たちが集まる場所。という事は、やることなすこと全てにおいて常人の能力より上回る事は何かしらにおいてある。
つまり常識的な能力の持ち主がこの場所で活動するには中々に難儀と言うか、出来ないということ。
だがしかし大丈夫!!俺がカスタマイズをした魔導式カメラは一般人でもラクラク使える優れもの!!!品質は保証しますよ。
「入部を希望してくださるのならば、この手を取ってください」
少しお辞儀をする様に屈み、スっと右手を差し出し握手をされるのを待つ。それを見た三人は「プロポーズみたい」と吹き出し笑っていた。
こっちは至って真剣『本気』なんです。
やはりこう言う真面目さを前面的に出して丁寧にお願いするというのは大事な事だと思う。
オレだったら急に「お前ここ入れよ」とか言われたら「は?言葉遣いって知ってる?」ってまず神経疑っちゃうよね。
「いーよ!どうせスフレのお世話係だけしかして無いし、何より面白そう!」
「俺も賛成。その提案乗らせてもらうわ」
差し出した右手に二つの手が優しく覆いかぶさり握り返してくれた。と、ここでラファが再び吹き出した。
「プロポーズ成功したね。よみ笑笑」
「ラファはさっきから笑いすぎなんだよ!」
先程からラファはずっと一人でクスクスとサイレント爆笑を繰り返しており視界の端で一生笑っていたのをオレは知っているんだからな。
「おはよー!瞳君レナート君!」
「あ、菫!おはよー!」
「おはよう菫」
斜め後ろから元気な声色で発せられた挨拶にすぐ様反応する。振り返ると朝日でキラキラと黒光りする菫色の髪を持つ菫が立っていた。
相も変わらず今日も可愛らしい。
菫とは初対面だった二人が律儀に挨拶を交わす。陽翔がスフレを抱き上げ短い前足を持ち上げ挙手さながら自己紹介をする。なにそれ可愛すぎだろ。
カシャッ
可愛さに悶えるオレと同様に悶え目がキラッキラと輝いている菫達が綺麗に写った。
何時もはすぐ近くにいるローズが見当たらず辺りを見渡すと少し先の方へ移動していたラファと共に挨拶を交わしていた。
相も変わらず今日も美しい。
「あ、もうみんな集まってる感じか」
「じゃあ僕達はこの辺で。兄さんスフレ行こう」
陽翔と蓮はご機嫌にしっぽを振り、気ままに歩くスフレを見守りながらスフレが行く方向へと足を進め去っていった。
あぁ。てちてち歩くあの足……なんであんなに可愛いの?
「「短足の犬ってかわいい……」」




