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15枚目

「ふむ。まぁ、長話と言うのはつまらない物ですので。ここまでにしましょう」


 一度コホンと咳払いをし、オレたちに改めて向き合う。次に必要なものは部室でしょう。と言う理事長先生が放った言葉にオレは目を輝かせた。

 そうだ。部室!部活動に必要な用具や設備を設置するのに部屋が必須だ!単純に部活動で使う秘密基地みたいな部屋が欲しいだけだが!!


 空き教室は幾つかあるらしく、どれも好きに使って良いということ。

 となれば、オレは少し景色が綺麗な所に部室を設けたい!ラファの意見を聞くと、とても写真部らしいと賛成の意を示してくれた。


「であれば、園芸部のガラスハウスや水晶宮が見えるこちらか、ガラスハウスと四季の大樹が見えるこちらはどうでしょう」


 学内の地図を指さしながら場所を提示してくださった。前者はオレがラファと出逢った水晶宮が見える南側の第一西校舎の空き教室。後者はまだ探索のしていない方向にある四季の大樹というものが見える北側の第一西校舎の空き教室らしい。


 四季の大樹がある付近には原っぱがありここも季節によって園芸部に整えられた草花を見ることができるらしい。他にも芸術部の劇場があったり武術部の武道場も一望出来るという事だ。


 という事で早速現場へと直行!!


 ♦◆♦


「どっちにしろ両方の教室使えるから二つの景色、楽しめるね」


 オレは四季の大樹が見える教室を選んだのだが、理事長先生がオススメされた教室はどちらとも空き教室な為選ぶも何も両方とも使って良いと承諾を頂いた。

 これで気分によって教室を変えることが出来ると言うものだ。なんて贅沢な。


 閉じられた窓を開け放ち、外の景色を眺める。理事長先生が言っていた通り本当に美しい光景が広がっていた。


「あれって冬に咲くスノウフラワーだよ」

「ほんとだ!冬にしか咲いてる所見た事ない花だ!」


 一緒に窓から覗き込んでいたラファが今の時期明らかに咲いてないであろう『スノウフラワー』を見つけた。他にも春夏秋冬それぞれの時期でしか咲かない草花が四季の大樹を中心に咲き誇っている。


 この手入れもきっと園芸部の皆がやっているんだろうなぁ。


「ん〜そうだ。部室の証に看板作んなきゃ」

「看板と言っても見た感じ木の板しかないけど」


 教室の端に大小様々の木材が立て掛けられていた。恐らくなにかの工作で余った資材を置いているのであろう。少し横に長い長方形の木の板があったのでちょいと拝借させて貰い、即席の写真部看板を作った。


 出来上がりはまずまず。大分質素ではあるが……これも味だな。


「紐がないから掛けられないな……」

「窓の桟にでも置いとく?」


 ちょこんと置かれた看板は少し可愛らしさもあるように感じる。

 これで無事憧れの写真部を創部させる事が出来ました!!


 後は寮に帰ってラファの為に既存のカメラを少しカスタマイズする。そして完成品の魔導式カメラをプレゼントして本格的に写真部の活動がスタート出来るってモノよ!


 フッ。完璧な流れ………ドドドドドドド


「ん?」


 呑気に何か考え事をしていた矢先に何かが近づく足音が聞こえてきた。それも何かこっちに来てるような……?


「ぁあああ!!!危なぁあああ!それ捕まえて首のボタン押してぇぇぇぇぇえええ!!!」


 声が聞こえる方向へと視線を向けるそこに居たのはたくましく鍛え上げられた美ボディな闘牛が走っている。速さからしてご立腹なのでは……??ってそんなこと考えてる場合じゃなくてっ!なんで……なんでっ………!!


「なんで!校舎の中に!闘牛が居るのぉお!?!?」


「ちょっとよみ!下がってて!」


 ラファがオレの一歩前に立ち、片腕を前に掲げる。

 これは父さんが使っている魔法式等を展開する基本となる構えの一つだ。ラファの掌からから放たれた水泡が闘牛目掛けて弾け勢いが緩んだ。


 その隙を狙いオレは一気に闘牛の前まで駆け抜ける。己の目を活かし、逸らさず見ていた首から吊り下げられている器具に狙いを定める。そしてボタンを押したまま引き摺られ、オレの後を追いかけてきた(さち)が闘牛の上へと舞い上がり極彩色の鱗粉を撒き散らした。


「キュウ……」


 段々と覚束無い足取りになり闘牛は勢いよく横に倒れ込む。

 巨体の振動により少し校舎が揺れた気がした。首から下げられた器具から手を離し膝は不味いと思いとりあえず仰向け状態に落ち着く。


「ラファア…( т т )」


 涙目になりながらと言うよりもう既に号泣状態でラファに助けを乞うと、すぐに駆け寄ってくれたラファが明らかにヤバそうなものを見るような目でオレの膝を見ていた。今はアドレナリンどばどばで痛みを感じてないが多分やばいんだろうなと言う感覚が本能で分かる。


「うわぁ……これは、ボクも涙出そう。よみ、膝見ちゃダメだよ。結構グロい……上向いて幸でも見てて」


 もうぶっちゃけ、今この自分の膝がどうなってるかが恐ろしすぎてさっきの闘牛の事とか考えるどころの話じゃない。


 あぁ。幸ってやっぱり可愛いなぁ美しいんだなぁ(現実逃避)


 幸い魔導式カメラは首だけに掛けるのではなく首から片腕を通す斜めがけをしてカメラは背中側にあったため損傷は無かった。


「あ、しまった。応急キット持ってなかった……」


 腰に手を当てたラファがしまったと言う顔をする。これではオレの膝の傷は塞げない。いや頑張れば寮まで帰れないこともないですよ。痛くないし。


「これ。私のだけど使って」


 オレの頭上からラファに向かいニョキっと手が伸び、携帯式の応急キットを手渡した。この腕は先程の闘牛を追いかけていた人。

 ラファは慣れた手つきで素早く処置をしてくれた。仕上げに鎮痛の術を施してくれた。

 痛みが来る前に鎮痛の術をかけてもらった為、来るであろう激痛を感じずにすんなりと歩く事が出来た。


 その後は、他の闘牛管理をしていた人達も追いつき無事(?)実験棟へと帰還して行った。


「本当にごめんなさい私の管理不足で……」

「大丈夫大丈夫!ラファが居てくれたお陰で大事なかったし」


 若干ぎこち無い歩き方になりながら少し肩を貸してもらい寮へと帰る。その道中一番最初に闘牛を追いかけてオレ達に助けを求めていた同じ新入生の「三色萌餅(みしきももち)」が親切に送ってくれた。


「部長達も酷いよね。昨日入部したばっかりの私にこんな大役任せちゃって。お陰でこんなザマだし……」


「合わせる顔が無いよぉ」と少し半べそかきながらうじうじし始めた。入部してすぐに実践から入った方が良いと思っている人が多いのだろう。それならば特に気にしていなさそうな人が多い気がするが、まぁ、それとこれとは話が別だろうな。


「にしてもあれが異界トラブル?」

「うん。異界トラブルの大半はああ言う『来訪者』が多いらしいの。因みにあの闘牛は昨日の来訪者なんだって」


 昨日と言うと、あれか。歓迎会での一環で突発的飴巻きと能力測定をした浄天の間で起こった異界トラブル。恐らくあの重々しい気圧を全身で感じている時に入口が開かれ来訪者が「お邪魔しまーす」してるんだな。


 他にも気になり尋ねると先輩達から手渡されたという資料を見せてくれながら丁寧に過去にやって来た来訪者を教えてくれた。

 聞いた話によると来訪者は主に動物だったり異界特有の性質を持った魔物やら道具・人物が多く、他にも気候等にも影響されることがあるらしい。


「それって事前に防げないの?」

「うーん…異界の入口は周波が合ったり誰かの願いとかで繋がっちゃったりと、原因が分からないから防ぎようが無いらしい。だけど今この学校には()が居るから私達の代はまだマシな方みたい」


「「彼??」」


「特出した気配・空間察知能力、情報管理能力、情報分析能力を持ってる『アイザック・ワイアット』。同じ科学部に所属してるから昨日顔合わせしたんだけど体質上昼夜逆転してて……」


 話が途切れ前を向くと既に寮前まで無事に辿り着いていた。


「っと……部長達に報告いかなきゃ。闘牛止めてくれてありがとう…それと、アイザックさんを見かけたら仲良くしてやってくれって部長達が言ってた!一応瞳くん達にも伝えておくね」


 と振り返りざまに言葉を残し萌餅は颯爽と部室へと帰って行った。


 ♦


 ラファと共に部屋に戻り、念の為ガーゼが中途半端に剥がれないようにと包帯を巻いてくれた。


 両膝にガーゼもあれだけど、包帯になってもこんなにダサいんだ……


 大事をとってラファからは怪我が治るまでは「歩くなとは言わないけど走るな」とのお達しを頂いた。はい。痛みが無いからと言って調子に乗って走らないように細心の注意をはらいます。

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