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14枚目

 

 …コンコンコン

「失礼しま〜す……」


「あら。四國瞳さんにレナートエデンリーワンさん。おはようございます。どうかなさいましたか?」


 舞闊学校内最上階にある理事長室へとノックをし、慎重に足を踏み入れる。そこにいた理事長先生は歓迎会で見た姿と変わらず、ハーフマスクを身につけ机に向かい資料と睨めっこをしていた。

 結構な数の資料を積み上げられた机を見る限りお暇ではなさそうな雰囲気だった。


「今、お忙しいですかね?」

「いえいえ、大丈夫ですよ〜。何か用があって来たのでしょう。どうぞ座って。今、お茶を入れますね」


「あ、それは申し訳ないです!」

「気にしないで〜」


 ギクシャクとした態度だと自分でも思うが、流石に緊張しないわけが無かった。それに理事長先生にお茶を入れさせるのは本当に申し訳なかったが、有無を言わせないような微笑みに隣に居たラファと顔を見合せた。


 これが権力者の力か……


「本日はどんな御用でこちらへ?」


 目の前のローテーブルに湯気が立ち上る暖かなお茶が置かれた。


 理事長先生に頂いたお茶を一口啜り、早速本題へと入ろうと少し姿勢を正した。


「はい。実はオレ達写真部を創部したいと思って相談に来ました!」

「ふむふむ写真部ですか……部員はエデンリーワンさんと四國さんですかね?」

「はい!」


 ん〜、こうやってラファと一緒に直談判しに来たとしてもやっぱり人数足りないとか明確な活動内容とかが無いと創部出来ないかな?

 勢いだけではさすがには無理か??


 隣に座っているラファも難しそうな顔をして考え込んでいるような理事長先生の表情を見守っている。

 すると理事長先生は微笑をしたのか眉尻を下げ一言「写真部…」と小さく呟いた。


「勿論。良いですよ〜」

「ですよね……ん?えっ!良いんですか!?」

「ボクらが言うのも何ですが、人数が極端に少ないのに大丈夫なんですか?」


 考え込む素振りをしていた理事長先生からは先程と変わらぬトーンでサラッと承諾を受けた為、耳を疑った。ラファもオレが心の中で思っていたことを疑問として質問するほどに。


「ここ、舞闊響轟校は自分らしさを生かし能力をコントロールしながら生活する場です。所謂自主性が求められます。こう言った自ら率先し提案、行動に移すことはとても素晴らしいことです」


「私が理事長である限り、無理難題でなければ全て許容するというのが私のモットーですからね」


 そう言って理事長先生は立ち上がり何やら机の引き出しから取り出した紙切れをオレとラファの前へと置く。


『創部届け』


「では、こちらに部活名と名前を記入して下さい」


 丁寧に置かれたインク瓶にペン先をつけ、部活名・自分自身の名前を記入する。ラファにペンを手渡し名前記入欄にラファ自身の名前を記入する。


 今しがた書いた所のインクが淡く光り、紙に焼き付いた。まるで元々から印刷されていた字の様に一瞬で刻まれた。


「おぉ〜」

「これで私の許可無しには廃部にする事は出来ません」

「契約みたいですね…」


 創部届けは理事長先生の手により厳重に保管されるようで、そそくさと鍵付き金庫の中へと入れられた。見た感じ何か他の魔法技術も組み込まれている感覚がする。

 きっと他の部活の創部届けも入っていることだろう。


 しっかりと保管をした後改めて椅子に座り直した理事長先生からはいかにも真剣な眼差しを向けられた。権力者の瞳と言うのは威圧感のような凄みがあり、吸い込まれるように目が離せなくなる。


「では、ここからは個人的なお願いなのですが、お二人には『思い出係』と『治療係』を受け持って欲しいのです」


 治療係はラファの持っている能力と適正的に何となく分かる気がするけど…思い出係とは?


「思い出係とはその名の通り、ここ。舞闊で学校生活をしている皆さんの撮影をして欲しいのです」

「えっ!?それって合法的に皆を撮ってもいいと言うお達しですか!?!?」

「おーおー(笑)落ち着いてよみ」


 はっ、つい興奮してしまった。前のめりになっていた体勢を苦笑いのラファに宥められた。


 こんなの一つ返事で答えるに決まっている。答えは勿論……


「はい!喜んでお受けします!」

「うふふ。良いお返事を聞けて良かったです」


 これで合法的に皆の楽しそうな姿、美しい姿、背景に映えるような姿、様々な表情・景色を撮れるという事が確定した。

 早速写真部の特権をゲットしてしまった。


 顔のニヤけが止まらない。恐らく気持ち悪い顔をしているんだろうな……表情を表に出さないようなクールビューティになるって宣言しておきながら全く制御出来無い自制心の無いヤツめ。頑張れよ自分!!


「という事は、治療係はラファが受け持つということですか?」

「いえいえ、()()()で、ですよ」


「?」


 何故だ?


 オレは治療系統の能力持ちでは無い。オマケに治療魔法や(まじな)い、そもそも魔法技術自体を扱うことは出来ない。

 受け持ったとしても治療方面では市販の薬を塗って包帯を巻くぐらいしか脳が無いポンコツのオレは何も出来ず全てラファに負担が掛かるだけだ。


 訳が分からず、ラファの方を見ると当の本人はオレとは反対に狼狽えた表情はしておらず驚いたような表情をしていた。


 そうだよねぇ。そんな顔するよねぇ。初日からラファ本人に治してもらってばっかりの奴が一緒に治療係をするのは意味が分からないよ?


「四國さんは自分が選ばれるのが分からない。と言う表情をしていますね?」


 これはダイレクトに図星を突かれた。正に理事長先生の言う通りですはい。全く分かりません。

 理事長先生は「本人に問う方が早いですね」とラファに話を振る。どうやらラファ自身には何やら心当たりがあるらしい。


 ラファは固くなった表情を緩め、軽く息をして静かに語り出す。


「うん。よみがそばに居る状態でボクが治療魔法を施すと普段より効力が増してるんだ」


 ほう……オレ、何かしてるか心当たりが全く無いんだけど。

 無意識に出来るほど器用でもないと思っているけど真剣な顔で言われたらまぁ、嘘では無いということは確かなのであって。


 これまた原因のよく分からない事態が多いのがこの世界。魔法技術と科学技術。交わる様で交わらない、全く反対の要素が組み合わさって成り立っている世界ではまだまだ説明出来ない超常現象が多数存在する。これもその一つだろうか。


「お互いの相性というのは関係性にも影響を及ぼします。この様に何かしらのメリットを自分自身の体で感じる事も」


 理事長先生はオレとラファを交互に見ながら落ち着いた口調で語る。まるで全てを見透かしているかのような視線に少しだけ恐怖感を覚える。絶対敵に回さない方が良い人物堂々のナンバーワンな気がする。


「相性にも数え切れない程種類があり、その中で最も有名なものは身体・性格・オーラ・友情……そして愛情…」


「クシュッ」とラファのくしゃみにより理事長先生の話は遮られた。昨日のオレのせいでもしかしたら湯冷めして風邪気味になってしまったのかもしれない。心配になり声を掛け彼の方を見ると理事長先生を真っ直ぐと見ていた目が据わっていた。


 うーむ。そんな凛々しい顔もイケメン……くしゃみをした後の余韻かな…


 と言うか、近くで飛んでいた幸の鱗粉のせいでくしゃみをしたのでは?幸。大人しくオレの肩に止まってなさい。

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