カルツォーネ(ビスマルク)
カルツォーネのランチはオーブンに出来たものを順番に入れては取り出してを繰り返す形でどんどん作って、思っている以上にお客さんの追加が多くて最終的には生地が足りなくなりそうになるほど。
具材も足りなくなってきたので冷凍にしてストックしているミートソースやカレーにチーズも一緒に入れるようにして何とかしのいで。
そんなランチをかなりギリギリな感じで耐えたのですが、うちの二人には新しいメニューが目の前でどんどん増えていくようにしか見えなかったみたいで、
「え、チーズカレーもあったのですか!?」
「それはパンに塗っても美味しいミートソース!こっそり私用に取っていたのにっ!チーズ入り?まさかこちらにもそんな手が……いや、もしかして……ああ、卵もありでしたか」
こっそりもなにも一応冷凍庫や冷蔵庫の管理は自分もしているので在庫の把握はしっかりしているのです。
と、ちょっとだけ五月蠅い二人にはランチが終わったら出すと約束をしてそのまま厨房で手伝いをお願いすることに。
そんな感じに二人に手伝いをお願いしながらも今日のランチを無事に乗り切ります。
「二人ともありがとう」
お客さん達が帰って一段落……になるわけもなく。
つい数秒前の自分の言葉を飲み込みたくなるような状態にこの後になるわけで。
「では、ランチを」
「私もたっくさん食べますよー」
時間制限のない状態でうちの二人が本気で食べ始めると残っている生地だけでは全然足りなくて。
まだほんの少ししか食べていない状態の自分もちょっとがっかりとなりそうだったのですが、
「そんなこともあろうかと」
「私達で」
「生地をさっき」
「作っておきましたー」
精霊とタマエが手伝いをしながら何かごそごそとやっているのは見えていたのですが、まさか生地を作っていたとは。
「これで作れますね?」
「まぁねぇ」
「ご主人?何か隠し玉があるような気がするのですが、なにか美味しい一品ありませんかね?ちらっとさっき聞こえたような卵入りの何かもあるみたいですし」
「いや、卵入り云々は精霊が言っていたんだけどね?」
思いつくものがないのかと聞かれると、実はそうでもなくて。
生地があって生卵と言われて思いつくのはやはりビスマルク。
生ハムと卵だけのピザなので正に今二人が求めているもののハズ。
「じゃ、ビスマルクでも作ろうか」
お客さんも帰った後なので自分も一緒に食べられると思えばありがたい話なので早速作ってみましょう。
生地を伸ばしてそこにトマトソースを伸ばしてチーズをぱらぱらと落としてから卵と生ハムを置いて今までと一緒でかぶせるようにして蓋をして。
フチをフォークで止めればいい感じ。
後はオーブンで生地にしっかりと火を通せば出来上がり。
「ふふふふ。がーさんたちも食べていない私達だけのこっそりランチですね」
「とろーり!!卵がんまいっ!ちょっと塩味が足りないかと思っていたのですが、チーズと生ハムがいいアクセントで……いくらでも食べられますぅ」
タマエの言う通りで、普通のカルツォーネよりはピザな感じですが逆にポケットの形なのでこぼれることもなく美味しくいただけるのでコレはいい感じ。
「他にも何かないのですか?」
「んー、包むだけだから味付けがそこまでいらないものだと……ちょっとやってみようか」
使う材料は何度か作ったサラダと一緒。
アボカド、タマネギ、ツナ缶。
タマネギはみじん切りにして、アボカドは種を抜いてスプーンですくって食べやすい大きさに。ツナ缶の油ごとボウルに入れて三つをちょっとだけまぜるのですがここにいれるのはいつものアイツ。
「マヨネーズですね!」
「そそ」
このままサラダで食べても十分美味しいのですが、トーストに乗っけて食べても美味しいのであればカルツォーネの中の具材にしてもオッケーなはず。
早速作って食べてみると、思っていた以上にいい味で。
「これはサラダ感覚でぺろりと行けますね」
「チーズを入れてもよかったかもです」
「じゃ、次はチーズ入りにする?」
「いえ、最初のキノコたっぷりが食べたいです」
「私はホウレン草の方がいいですー」
「いいです、じゃなくて一緒に作ってくれればいいんじゃないの?」
「ご主人が作った方が美味しいのでお願いします」
「こればかりは後輩の言う通りです。私達よりも雅が作った方が美味しいんですよ」
「まあ、そういう事にしておこうか」
こんな感じでお昼の時間が終わってからも色々と作ることに。
かなりカルツォーネを楽しんでしまったので全部の片付けが終わったのは夕方。
流石にこの時間から外出という気分でもなかったので、家でさくっと魔導書をつくってお風呂に入って。
お風呂でゆっくりしていると、
「元気になりましたか?」
声を掛けてきたのは世界樹。
「ええ。朝はありがとうございました」
「それは良かったです。そういえば……うちの子はご迷惑をおかけしていませんか?」
「うちの子……って、精霊ですかね?」
「ええ。ちょっとあの子だけはみんなと違いまして。悪い子ではないのですが、色々とありましてね」
「ちょっとだけ疲れちゃうときはありますけど、迷惑ではないです。寧ろこっちも元気をもらっていますからね」
「…………そうですか。それはよかった」
「僕の方こそいつもこんなに良くしていただいて。迷惑ではありませんか?」
「そんなことは全くありませんから。いつでもどうぞ」
それだけ言うと気配がすっと消えたので、会話はここまで。
「さっぱりしたら……多分夕飯をせがまれるから……何か考えるか」
お風呂でゆっくりと夕飯を考えるとしましょう。
タイトルに悩みましたが、料理名が変わらないという事でそのままかっこ書きになりました。
コメントで頂いた中の具材に「あんこ」なんていうのがアリな、入れたいものを入れていい料理。
自由な料理は好きなものを好きなだけ楽しめばいいのでその幅を楽しんでいただければという感じで書いたら今日のような感じに。
本編に上手い事書けていないのでそうなの?と思われるかもしれませんが、毎日毎日作る姿を見ている精霊とタマエは門前の小僧倣わぬ経を読む状態。
食い意地が張っているので食べる事に関しては興味津々。
まあ、作るよりも食べる優先ですが、意外と色々なものを作ることは出来るようになってきていたりします。
ただ、星付きのお店で食事をするのと似ていて、最後の仕上げであったりその人にしか出せない味というのがあって。
その部分はやはりセンス。
見よう見まねでは難しいのかもしれません。
ただ、作者的には口が肥えているメンツなのである程度いいところまでは行けるような気がしますが……二人の料理を食べたいかと言われると結構微妙。
え、だってあの二人結構雑なイメージありません?
横で監視しながら作ればまじめにやりそうだけど、監視していないと適当そう(笑)
適当でも上手い料理が出来る人のセンス……ちょっとだけ憧れます
今回も読んでいただきありがとうございます
目に見える形の評価やブックマークそして感想もかなり嬉しいです
誤字脱字報告とても助かります&申し訳ありません
改めてありがとうございます
毎日投稿頑張ります




