炊き込みご飯
「コースとは何でしょう?」
お客さんが帰って厨房で片付けを始めると、精霊が現れて聞いてきます。
「さっきのを聞いていたの?」
「はい。コース料理という名称だと品数があるという事ですか?」
「そうだよ。和食だと八~十品で同じくフルコースの洋食もそのぐらい。あとはイタリアンのコースでも七品ぐらいかな」
僕の言葉に精霊は喜んでいるような驚いているような。
「色々な味を楽しめるという事ですか?」
「まぁね。ただ、一品一品の量は抑えめだよ?」
「一回の食事で色々と楽しめるなんてことがあるのですか?」
「ただまぁ、食べる方は楽しいだろうけど、作る方は大変よ?」
「私は食べるだけなので楽しみです」
「……やるとは言ってないよ?」
「やるのでしょう?」
「人手も足りないから、すぐにはやらないよ?」
「そんなぁぁ」
回転速度が遅くなって、そのままふわっと消えてしまいました。
お昼の残りの味を変え、色々としているのもそれの一環なのですが、精霊はどうやら期待をしてしまって、それが出ないという事でしょんぼりしてしまったようです。
こういう時は何を言っても仕方ないと思うので、一人食器の片づけを早々に終えて、魔法の練習でもすることに。
お湯が出来るようになったのもあって、寝る前にやれることはグッと増えたのですが、逆に気になる事も。
お風呂は今も楽しめているのですが、シャワーは相変わらずこの家にはありません。
想像は出来ても、どうにもそれが出来ないので困っているのですがそのヒントをもらおうにも精霊も微妙な状態。
「どうしたモノか……」
お昼過ぎでいつもよりは少し遅い時間。今から行って昨日と同じ練習をしてみてもいいのですが、精霊も気になるところ。
「コースは無理だけど、一人でそれっぽいのだと……」
思い浮かんだのは子供の時のアレ。
「アレならコースじゃないけど、まぁいいかな?まぁ少し準備が大変かもしれないけど」
頭の中でパズルを組み立てる様に、手順を考えてみると意外と何とかなりそう。
ただ、少しだけ早く起きないといけないかもしれませんが、まあその程度は範囲内。
明日は何を作るか考えなくても大丈夫そう。
「よし、決まったらスッキリしたかも。練習にいくかな。いってきます」
返事はありませんでしたが、一声かけて家を出ます。
同時にあれこれやった方がいい事を思い出したので、木刀も持って行く事に。
南の扉の所ではいつもの人がおらず、他の門番さんに会釈をしていつもの場所へ。
周りに人がいない事を確認したら、まずは六属性の玉を早速作ります。
「六属性の玉っ」
歩くと玉の維持がやはり難しいので、コレを維持したまま木刀での素振りをしてみることに。
「いちっ、にっ」
ゆっくりと自分の周りを六つの玉が回りながら、少しだけ集中力が切れた感じで木刀の素振り。
玉の維持に集中すると素振りがおろそかになってしまい、素振りに意識が集中しすぎると、
「あっ」
こんな感じに。
たまたま今は水だったのですが、自分で作った玉を切ってしまいます。
水なので切れないのでいいのですが、木刀の一部がしっとりと濡れてしまいます。
その結果、木刀は少し重たくなった気がして更に集中力が削られます。
「あー、もー、コレ難しいなぁ」
どちらもしっかりやりたいのですが、それはかなり難しいのでどうにかならないかと少し一人で悩んでみて、一つ思い付くことが。
「やってみるかな」
試してみたのは簡単な事。
両方を同時にできないのであれば一つは自動にしてしまえばいいというちょっとずれた感じの考え方。
素振りの速さは大体一緒なので、玉がもう少しいいタイミングで回っていれば問題はないハズと思って、自分の心音と同じ速さで回る位に回る速さを固定してみました。
するとどうでしょう、木刀を振り下ろすときは丁度玉が避ける様にズレます。
実際はズレるというよりはタイミングで回っているだけなのですが、一定のリズムで木刀を振れるので集中は出来たまま。
玉の維持は魔力を使っているのですが、動かすのは最初に考えた時だけ。タイミングは自分の心音通りなのでグッと集中すると自分の心音も聞こえてくるので問題もありません。
「何とか出来たかなぁ」
集中力と魔力の両方を使うので思っていた以上に疲れましたが、その疲れはいい疲れ方。
もう一つ思い浮かんだものもありますが、今日はこんなところでいいかなという気分。
それほど時間は経っていないのですが、少しお腹も減った感じ。
「この位で今日は帰るか」
夕飯をどうしようかと考えながら帰る帰り道、いつもの時間の南の扉周りは賑やかになり始めているいい時刻。
明日のお昼が頭の中で決まったので、夕飯が決まらないという不思議な感じ。
ただ、この少しにぎやかな感じ、丁度夕飯に良さそう。
「きーめた」
思い付いたのは賑やかな感じの一品。
「ただいまー」
返事はありませんが、気にすることなくまずはご飯の準備から。
一度ご飯をしっかり洗って、お水にしっかり浸します。
少し面倒ですが、今日こそ絶対しっかりと。
ご飯を水に浸したら、具材の準備。
ニンジンは皮を剥いて、千切りに。ゴボウはたわしで泥をしっかりと落としてボウルに水を張って、ささがきに。水で灰汁をぬいて水気は後で拭っておきましょう。
干しシイタケを本当はじっくりと水で戻したいところですが、時短という事で少し熱めのお湯を用意して戻します。五分程度でかなり柔らかくなるので、石突をおとして食べやすくスライス。勿論戻し汁はこの後に使います。
せっかくなのでキノコをもう一種類。しめじもほぐしておきます。
あとは味にもなる油揚げ。短冊切りで切りそろえたら準備完了。
鍋にまずは酒を入れて火にかけて、酒精をとばします。酒精が飛んだらシイタケの戻し汁を足して、みりん、醤油を入れます。
今作ったものだけだと少し濃いので、ご飯を炊くときに必要な分量まで出汁を足します。
「あとは炊くだけ」
ご飯がしっかりと浸水しているのを確認して、土鍋へ。
ご飯がしっかりと浸る辺りまで先程の混ぜた汁を入れたら具材を上に乗せて蓋をして、炊き始めます。
自分が覚えた炊き方は結構簡単。
ガス台に鍋を乗せて、まずは中火と弱火の間ぐらいで沸騰をさせます。
沸騰すると蓋やフチから泡がプチプチと出てくるので出て来たら一分。一分経ったら火を弱火にして、しっかりとタイマーで十分程度。
タイマーが鳴ったら三十秒だけ強火にして火を落としたらあとは蒸らすだけ。
今日は具材も結構あるので五分位。いや、念の為に十分ぐらい蒸らせば完璧。
「開けたいけど、ここはグッと我慢」
蓋を開けて中を見たい衝動は抑えるほかありません。
「なにやら美味しそうな香りが」
香りにつられて精霊がどうやら来たようです。
「夕飯。炊き込みご飯にしてみた。主食だけだけど、後で出汁を足してお茶漬けもいいよ?」
「なんとも美味しそうな。静かに待っていた甲斐がありましたね」
待っていたの?というか結構元気そう。
食いしん坊さんは美味しいものだけあれば大丈夫そうですね。
「さぁ、夕飯にしましょう?」
「はいはい」
今日も楽しい夕食を食べられそうです。
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