カレーうどん
出来上がった木刀は中々の出来。
何よりもグリップの部分がかなり握りやすくフィットするので、ギュッと力を入れて握れるので素振りにはいい感じ。
その出来立ての木刀を持って南の扉へ。
昨日と一緒で軽い会釈をして、扉を抜けると今日は少し遅くなってしまったせいもあって、かなりの賑わい。
初日に言われていたように、夕方過ぎにはココもかなりにぎわう様で、扉から帰って来る農業や酪農をしていた人達で賑わいます。
それに合わせる様に朝のお店が夜の仕様に様変わり。
その様は福岡の屋台街や浅草のホッピー通りを思い起こさせます。
その中でも串焼きが特にいい香りを醸し、思わず自分のお腹も刺激を受けます。
「お腹減って来たかも」
家に帰れば残っているのはカレー。
お腹が減っているので、そのままでいいから早く食べたい所。
「ただいまー」
「おかえりなさい」
嬉しい返事に挨拶をして、手を洗っていざ夕飯の準備。
といっても、温めてご飯にかけるだけのつもりだったのですが……。
「マジか」
そう、お昼同様に夕食もカレーで済ませるつもり満々。お腹もかなり減っているのですぐにと思っていたのですが、思っていたよりもカレーのルーが少ない。
一人分位。二人で分けるには少し心もとない所。
「困ったなぁ」
「夕飯は決まりましたか?」
困った所ではありますが、精霊もお腹は減っている模様。
「思っていたよりもルーが少なくてね。ちょっとだけ考えるから待っていて」
「期待しています」
精霊はすぅっと消えていったので、この一人前を増やすことを考えるとしましょうか。
それも、時間をあまりかけずに。
「伸ばすのも手かな?」
足りないのであれば、足すのが一番手っ取り早い方法。
思いついてしまえばすぐにできそうなので、今日はこれでいきましょう。
足すのは和風にするもの。
醤油、出汁、みりん、カレー粉。なければ麺つゆでも大丈夫。
そして折角なので味わいも変えたいので少しだけ手間も。
カレーに残っている具は勿体ないのですが少し潰して小さくしてしまいます。
潰したら、先程の材料を足して少し水も足して味見。
かなり和風になりながら、少し減ったカレーの感じもカレー粉を足しているのでそこまで減り切っていません。
あとはここに水溶き片栗粉であまり強くない程度にとろみをつけてまずは完了。
ここに新しい具材、豚バラ肉の準備。
豚バラ肉は沸騰させたお湯でしゃぶしゃぶと火を通してから足します。
右往左往してしまいそうですが、その作業中に冷凍のうどんをレンジで温めて、しっかり温まっているのを確認したら丼に。
茹であがった豚肉をうどんの上に乗せたら、あとは出汁カレーをかけるだけ。
「精霊、できたよー」
これで完成。
「カレーですね?」
「カレーうどんです。あと、後乗せご飯も出来る味付けだから、無理にカレーを飲まないで残っていた方が美味しいかも」
「なんとも素敵な響きですね。後乗せ。後乗せ。いいですね?」
なにやら少し悦に浸っている様にも感じますが、色々な色にクルクル感じでそれはそれで面白い所ではありますが……まあいいでしょう。
「じゃあ、せーの」
「「いただきます」」
お箸で少し加減をしながら啜ります。
ズルルルといい音と加減をしても少しばかり飛び散りますがお腹の減りの方が大きいのである程度は許容範囲。
「んー、美味しい」
偶に麺に絡んでいる小さくなった具材もいいアクセント。そしてしっかりとボリュームを感じられるのは豚肉のおかげ。
ちょっといい肉うどんのカレー味といえばいいのでしょうか?
麺を啜り、わざとスープを残す感じで。箸で少しさらっても何も当たらない程度まで食べ終わったら”後乗せ”の出番。
お昼の残りのご飯の一部が炊飯器でそのまま保温されていたので、そのまま丼に乗せます。更に、豚バラ肉のしゃぶしゃぶをもう一度乗せてあげればカレーうどんはカレー丼へと様変わり。
「凄い、そんな変身が残っていたなんて」
精霊も気がつけばいい感じにうどんだけを食べていたようで、こちらを見て同じようにしてくれとせがんでくるのでご飯と豚肉を乗せて、食べ方を伝えます。
「少し混ぜて、後はがっつり行く感じで。もし少し味が濃いと思ったら、生卵か温泉卵をかけてあげれば辛さも和らいでいいよ」
「生卵を所望します」
「おっけー」
二人分の生卵は器に割って、カラザを取って後はかけるだけ。
とりあえずそのままの後乗せカレー丼をレンゲで軽く混ぜてパクリと一口。
「んー、たまんねー」
ピリッと来るカレーの味、後から来る出汁の香り。それがご飯と一緒に。うどんの時のスルスルと入る感じとは少し違う、ご飯ならではの美味さ。
手が止まらずに勢いで食べていると、半分も無くなっています。
「おっと、折角用意した卵がもったいない」
ここに生卵を。行儀は悪いかもしれませんがぐちゃぐちゃにかき混ぜて、もう一度口へ。
「最っ高―」
さっきまでのカレーの辛さが卵によってマイルドに。
刺々しさがなくなって、更に口に入れやすく、食べやすい味に。
「こっちもお願いします」
「はいよ」
精霊の丼に生卵を入れてあげて、どんな感じでやっているのかを見るとなかなか面白い光景。
透明な棒のような何かで器の中をかき混ぜているのです。
「それは?」
「雅がレンゲを使っていたので、それと同じようなものです」
そう言えば混ぜて食べてねとは言ったのですが、混ぜられないとは言われなかったのと自分もお腹が減っていたので仕方ない所もありますが、どうやって食べていたかしっかり見るのを忘れていました。
どうやら、透明な棒のような何かで上手い事食べていたようです。
卵が入ってからは少しペースが落ちてきますが一人前のうどんの後にご飯一膳分以上ですから勢いが落ちるのも普通の事。
結構満足のいく夕飯になりました。
「お腹いっぱいだわー」
「カレーは素晴らしいですね。食欲を刺激するいい香りに、箸を進めるスパイス。なんでこの世界になかったのか……」
精霊なりに色々と思う所があるようですが、まあ夕飯は満足してくれたようです。
「今日の夕飯、どうだった?」
「美味しかったです」
「それは良かった」
そういえば、少しコーンフレークも減ってきていたし、まだ魔力も残っているから少し作ってから今日は終ろうかな。
カレーで元気になって来たので、もう少しあれやこれやをしてから今日はやすむとしますかねぇ。
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