チキンソテー
「お、今日はカレーだね?」
玄関を開けるなり、そんな声が。
これはカレーの良い所であり、隠せないところでもあります。
「こんにちは、いらっしゃい」
「今日もお願いね。あー、もしかしてこれはマスターの味?」
「作り方は大体一緒です」
料理はどうしてもその人の味になってしまうので、完璧に同じとはいきません。
ただ、殆どの手順をトレースしているのでかなり近い味にはなっているはず。
「因みにお肉は?」
「今日は鶏ですね」
確か知り合いは豚のときはあいがけを牛の時はトンカツを頼んでいた記憶が。
そう言えば鶏の時はなにだったかな?
「場合によってはソテーをお願いするよ」
「分かりました」
「じゃあ、今週もよろしく。さ、皆も入ろう」
知り合いが先導して、いつもの六人が簡単な挨拶をしながら入っていきます。
お絞りとお水を準備して、厨房へ戻ったらお皿の準備。
ご飯をたっぷり乗せて、カレーは横にたっぷりかけます。
グリーンサラダは事前に用意してあるので、ドレッシングをかけて、わかめスープもたっぷりよそって、すりごまとごま油をかけるといい香りが。
「お待たせしました。本日はカレーです」
七人全員に料理が渡って、声をそろえて食べ始めると少しばかりの休憩時間。
「ソテーがいいって言ったっけ」
知り合いがお願いするかもしれないと言っていたのはチキンソテー。
チキンカレーに皮がパリッとしたチキンソテーを乗せるダブルチキンが美味しいのです。
もしやるのであれば、人数分を冷蔵庫から出して一度常温に戻したいところです。
「雅、何か作るのですか?」
精霊がポンッと出てきて聞いてきます。
「あー、知り合いがチキンソテーも乗せてほしいかもって言ってね」
「チキンソテーですか。なるほど。カレーだけでも美味しそうなのに更にという事で?」
「そそ。トッピングがあると美味しいからね」
「なるほど。がーさんは食いしん坊ですね。後で私の分もソテー付きでお願いします」
精霊はそれだけ言って、また消えてしまいます。
「とりあえずプラス一か。おかわりも聞こえるかもしれないから、聞いてくるかな」
半分という声がある可能性も考えてとりあえず四枚程出して確認を取りに厨房から客室へ。
「あのー、さっきの話のソテーどうします?人数分となるとちょっと時間はかかりそうですけど、肉を温める都合もあって食事中にすいませんが確認に来ました」
僕の言葉に喜んだのは後から組の二人。
「是非おねがいします」
「いくらでも待つわ」
とりあえず二人は確定かな。
「食べたいけど、お腹が結構いっぱいだから……えーっとこういう時はなんだっけ?」
「ハーフでおねがいします」
「それだ、それ」
四人のうち二人は半分の追加。
「普通に一枚お願いします」
「……(ひたすら頷く)」
あの感じは残りの二人はまんま一枚ずつかな?
「で、どうします?」
最後に知り合いに聞くと、
「勿論一枚マルっと追加で。でご飯は少な目のルー多めで」
「それだ!私もそれで!」
「……(さっきよりも激しく頷く)」
「是非」
「同じで」
「ハーフでご飯も少なければスイスイ食べられそうなので私も」
「同じくで」
少しこんがらがって来たので、もう一度確認を。
全員ご飯は少な目でルーは多めでまずはいいですよね?
五人がチキン丸々で二人が半分で大丈夫ですか?
口頭確認が出来たので、戻って準備。
四枚出していたのですが、オーダーは五枚+ハーフ二枚。後二枚、精霊や自分の分も考えると三、四枚足りません。
とりあえず三枚程出して、先の四枚の肉の温度を手で触って確認を。
まだ少し冷たいのですが、仕方ありません。
包丁で厚さを均一にして、余計な皮などは先に落としておきます。そして酒、塩で軽く臭みも飛ばして、味付けも。塩を振ると水気がでるので後程それはシッカリと拭って焼きます。
時間も今日は短くいきたいので、フォークをさして火の通りをよくしておきます。
フライパン一つで二枚程度。
ほんの少しだけ油を敷いて、皮目を下に鶏肉を置きます。
少しだけ面倒かもしれませんがお肉の上に重りになるようなものを乗せて、弱火で十分。
十分焼いている間に次のお肉の準備をして、と厨房は一気に忙しくなります。
十分も焼くと鶏肉はかなりパリパリで美味しそうな音と皮目じゃない辺りまである程度火が通った色に変わっていると思うので、余計な脂をキッチンペーパーなどで拭ってひっくり返します。皮目じゃない方なので火力は少し強く中火にして二、三分。
焼き色を確認したら一度肉を休ませます。この余熱でもしっかり火が通るので休ませている間にカレーの準備。
「お肉の準備が出来たので、順番で」
とりあえずすぐに出るのは二人分。最初に手が上がったのは後組の二人。
二人のお皿を持って、ご飯をよそってカレーのルーもたっぷりかけて。
念のためもあってお肉は六等分ぐらいに包丁で切ります。
皮の部分を切るとき、パリッといい音。中の色もしっかりと火が通っているので大丈夫。
「お待たせしました」
出して、回収して、次いで、提供。
カレーのおかわりにチキンソテー乗せが終って一段落。
全員に提供がおわって厨房に戻ると、精霊がいつの間にか浮いています。
「私の分もすぐにお願いします。待てません」
「え、マジで?」
「マジです」
一枚分丁度残っているので、精霊の分のお肉を弱火で焼きながら、客席にもどっておかわりが必要だったら呼んでくださいと伝えて、精霊の分も作ります。
鶏肉をひっくり返した辺りで声がかかったので、中火から少し弱火にしてまずは知り合いの方へ。
「今日も美味しかった。トッピングはいいよね」
「ならよかったです」
「忙しくさせちゃってごめんね」
「いえいえ。あ、ちょっとまだ火を使っているので、すいません」
「ん。わかった。じゃ、ご馳走様」
右手を上げてお店を出て行く知り合い達を見送って、鶏肉を急いで確認。
「セーフ」
少し焦ってしまいましたが、焼き加減は中々。
お肉を休ませている間に精霊の分をよそいます。
「はい、お待たせ」
「この香りは凄いですね。お腹が減ります」
カレーを一口。そして次はチキンも。
「美味しいっ」
中々不思議な勢いでカレーが減っていきます。
ひゅん、と飛ぶと一部がなくなり、もう一度飛ぶとまた一部がなくなります。
「おかわりが欲しいです」
食べている様子を見ていて、片付けを忘れていましたがこうやっておいしそうに食べてくれているのを見ているのもいいモノです。
精霊のおかわりとついでに自分の分も少しよそって、片付けは後回しにしてお昼をゆっくり食べるとしましょう。
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