★ドライ
イイワケは後程致します。
お客さんが帰ったらゆっくり自分たちの時間なのですが、
「雅、やはりはじめはベーシックがいいでしょうか?」
「一つしか出せないよ?」
「そこは雅の分を少し分けてもらって二回楽しめるという事で」
「いや、僕は僕でたべるからあげないよ?」
「一口ぐらいいいじゃないです?」
「じゃあそっちのも一口貰うよ?」
「それは、嫌です」
「じゃあ、こっちも嫌だよ?」
「むむむむ」
そんな会話をしながら片付けをはしながら自分たちの分のホイル焼きを温めなおしているのですが、この後の事を少し考えながら動きたい所。
「食後はいつも通りに木刀制作ですか?」
「かなぁ。あ、魔力も結構増えているからちょっと魔法の練習もするつもりもあるかな」
「魔法の練習ですか?」
「そそ、この前聞いたエアーの魔法?ってやつ」
「あー、多分雅ならすぐに出来ると思う奴ですね」
「そうなの?」
「ええ。エアー系の魔法とはつまるところ風を起こす魔法ですから。雅は攻撃にももう使っていますしね」
「あー、言われてみれば風の魔法ばっかり使っているかも」
「もし練習でっていうのであれば、この後に丁度いいモノがありますよ?」
「丁度いいモノ?」
その時は首をかしげたのですが、食事が終って食器を洗い始めて何となく自分でも察することが出来ます。
「もしかして?」
「ええ、ただ雅は魔力も結構多くなってきていると思うので最初はちょっと弱いぐらいからの方がいいと思います」
「オッケー」
お客さんや自分達が食べた食器を洗って、一度水切り棚に置いていきます。
一式洗い終わって、いつもであれば乾いた布巾で拭き始めるのですが両手は空っぽの状態で、一度息を整えます。
「お湯も作れているのでもしできるのであれば少し暖かい方がいいのですがまずは風だけでやってみて下さい」
「うん」
頭に想像するのは温風。まあ、風であればいいだろうと思いながら風の威力は弱いけど水滴はすべて飛ばせる程度と威力調節も微妙な感じ。
頭の中での想像が出来たので後は確定させるだけ。
「風」
何と言えばいいか色々と考えたのですが、温風はドライヤーのドライなど少し浮かぶのですが、まずは一つの属性だけでと思うと出てくる言葉はそのまま「風」になってしまうわけで。
右手の平の上。
そこに布巾程の大きさで柔らかい風が固まって居る事を想像して出来た風の塊。
左手でお皿を持って右手の方へ近づけると水滴は風によってすっと弾かれるように皿の上から飛んでいきます。
「エアーってこういう感じなの?」
「いえ、微妙に違いますね」
「因みにどういう感じ?」
「えーっと、雅の攻撃の時のような感じよりも鋭さのない緩い風です」
「……緩い風?」
「説明がなんとも難しいのですが、ただ今雅の右手にあるそれとエアーは全然違いますね」
「そっかー。まあ、一応これはこれで役立つから悪くないけど……」
「コレだと少し手間がかかり過ぎですものね」
「だねぇ。精霊が仕舞うのを手伝ってくれても時間がかかりそうだもんね」
「ですね」
そんな感じにエアーは失敗してしまった感じだったのですが、食器乾燥機を魔法で先程想像しようとしたことで思い付く事が一つ。
「もしかしてって魔法があるんだけどちょっとやってみてもイイ?」
「ええ、どんな魔法です?」
「見たままだと思うけど、ちょっと待ってね」
水切り棚にある食器を一気に乾かしたいのですが、多少の風も必要で、勿論少し暖かさも欲しい所。そうなると風と火の合わせた感じですが、お湯の要領で火は少な目。
水切り棚の大きさをしっかりと囲んで温かい空気をそこに強すぎず弱すぎずで掛かる様に。
「ドライ」
自然と出て来た言葉は乾燥の意味のドライ。
範囲は水切り棚と同じ大きさで、スッと魔力が減って言葉通りになにか魔法が出たことは分かります。
そしてそのまま魔力を消費しているのですが、見た感じでは分かりにくい感じ。
「範囲の指定も出来ていますが、少し触っても?」
「どうぞ」
魔力はまだ維持したまま。その水切り棚に精霊が手を入れると、
「暖かいですね。エアーよりも上な感じですが……」
精霊が水切り棚に手を入れて出してを数回繰り返しているうちに水切り棚の水も乾いていきます。
「エアーよりも上な感じなの?」
「ええ、エアーはあくまで風を発生させるだけですからね。これだと温かかったり涼しく出来たりしそうなのでダンジョン探索でも使えそうです」
「あー、そう言えば色々なフィールドがあるって言っていたね」
「ええ。まあ専用の道具を使う必要もあると思うのですが道具に頼り切りと言うより、自分で魔法を使ってどうにかできるというのも大事だと思いますから」
「なるほどね」
「ちょっと精霊そこで立ってもらえる?」
「ん?なんです」
「いいからいいから」
そういって、精霊に立ってもらって一度魔法を解いて、範囲を精霊の大きさに。
出来るだけ余分に魔力を使わない様に精霊の形通りに想像してから、
「ドライ」
魔法を掛けてみます。
「おおぉぉ、暖かい。これなら寒い所に行っても大丈夫そうです」
「出来てる?」
「出来ていますよっ!というかなんで自分にやらないのですか?」
「いや、風だからいきなり窒息とかしないかなって」
「しませんよっ!っていうかそんな危ない可能性がある魔法をなんで私に使うのですかっ!」
「精霊なら安全かなって思って」
「全く。雅が自分で想像するのですから窒息させるもさせないも自分の意志で決めるのですから、そんな怖い事しないでいいんです」
「あー、想像ってそういう事もそうなるのか」
「ええ。ほら、私にやったのと同じ事を自分にもやってみて下さい?」
「あー、はいはい」
精霊の魔法を解いて、自分にも魔法を掛けてみることに。
自分の大きさに関しては身体強化で把握済みなので自分の範囲は簡単に分かります。
「ドライ」
魔法を唱えると自分の周りと言うよりも肌が少しだけ温かくなる感じ。
一番近いのはお湯に入った瞬間が近いのでしょうか?
全身がすぅっと温かくなるので寝る前や寝起きに寒いなと思ったらコレをやってもいいかなと思えるほどの使い心地。
「これいいかも。寒いときにも使える」
「ですよね。えーっと、ドライでしたよね」
そう言いながら精霊も自分自身に魔法を使ってみた様子。
「季節感はあまりないですけど、暑いときは涼しくなる様に出来るのも後で考えて下さいね」
「あー、クーラーみたいな感じだね?」
「えーっと、……そうですね、そんな感じでお願いします」
精霊はその一瞬で何かを検索したようで、少しだけ間がありましたが頷きました。
ドライが乾燥な事は理解しております。
単語的にもウォームなどが正しいかとは思うのですが……ドライにしちゃったみたいで……。
へんてこですが、このまま楽しんでいただければと思います。
料理が出なかったのでいつも通りもう一話どうぞ




