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今日、なにつくろう  作者: 藻翰
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コーンフレーク

 一人になってまずは後片付け。今日は二人分なので洗い物も多くなく。

 洗い物が終ったら、渡されたメモを読みたいのですがさて何が書かれているのか。

 緊張感からか喉が少し乾いてきた気がしたので、ペーパードリップのコーヒーを。

 コーヒーを淹れると部屋一杯にいい香りが。

「よし、読むか」

 渡されたメモをさっそく読む事に。

 メモは単純で、箇条書きが記されていて、


“ランチ以外の調理は魔法を使って練習をしてみましょう”

“生活に魔法を組み込みましょう”

“必要なものを考えましょう”


 その三つが書かれて、後は追伸が。


“PS 朝ごはんにコーンフレークは如何でしょうか?” マスターより


 書かれているのは三行の箇条書きに追伸。

「コーンフレーク?って、作れるの?あー、そうか。それも含めて考えろって事か」

 書かれているのは単純。だけど、作り方は知りません。

「あー、こうやって考えてみると色々と必要な物や事があるわけか」

 食材も調理器具もあります。多分死ぬことはないでしょう。

 でもそれだけ。魔法があると聞きましたが、使えるかどうかは何も言われていません。

 何でも自分で。言われてみればかなりそれは大変な事。

「創造すればいいって、どうやっても……分からないし。うーん、困った」

 思い浮かんだ選択肢は二つ。街に出てとりあえず散策か自分で色々やってみるか。

「とりあえず街にでてみるか」

 かなりギッシリと入っていた袋を開けてみると、多分お金だと思われるものが。

「貨幣かな?」

 鈍色に光る硬貨がギッシリ入っていました。

 分からないのでとりあえず一つかみ。貨幣価値もどういうモノなのかわかりません。

 ポケットに入れて、家を出る前に少しだけ探し物。

「鍵、何処かな」

 家に案内されるままに入ったので、鍵を開けた様子を思い出せませんが鍵ぐらいはあるはず。キョロキョロと家の中を探してみます。

 さっきメモをゆっくり読んだ二階は自分の部屋ともう二部屋。自分の部屋以外に物はなくただ部屋があるだけ。

 一階は玄関があって、入ってすぐの左の扉の先が厨房。その奥が食堂。

 右側は開かない扉が二つ。階段があって階段の裏にトイレと風呂場への扉。

「んー、鍵が無い」

 開く扉を開け、屋内を見て回りましたが鍵は見つかりません。

「どうするかな……」

 流石に鍵をかけずに家を出ることはしたくありません。

 さて、どうしよう。悩んでいると、

「ごめんねー」

 玄関を開けて入って来たのは知り合い。

「あ、丁度いい所に」

「鍵探しているんだよね?」

 的確に言い当ててきました。

「ですです。どこにあります?」

「その辺りも魔法なんだよね。伝え忘れちゃったなーって」

 そう言いながら、玄関に手招きをしてきます。

「見たら分かるかなと思ったんだけど、説明全部なしじゃ分からないよね」

 指さす先は玄関の扉なのですが、フラットに取っ手があるだけ。玄関なのだから普通に考えればカギが付いている場所に何もありません。

「地球で言う所のオートロックと一緒でね。登録者以外は招かない限りは入れない仕様になっているんだよ。因みに招くっていうのも登録者が自分で開けるのを確認してじゃないと入れない感じだよ。大丈夫、登録設定は終っているから、君は出入り自由だよ」

 そんなことをしていたのであれば教えておいてほしかったとは思いますが、マスターが色々言ったからでしょう。

「じゃあ、普通に出て普通に入れるって事ですね?」

「そそ。いやぁ説明不足でごめんね。お詫びにコレを渡しておくよ」

 知り合いは右手を出します。

「ん?」

 すると知り合いの右手の平の上。何かが凝縮していきます。グルグルと色々な色が丸い玉のような形の奥へ奥へと。

 音はありませんでしたが、ポンッという擬音が似合う感じに出てきたのは、

「なんですかコレ?」

 パッと見た感じは……綺麗なスーパーボール?

「精霊だよ」

「精霊?」

「この世界の事や大体の事は知識としてインストールしておいたから。あと連絡機能ね。スマホとかと一緒だと思ってくれれば大丈夫だから」

 ふよふよと浮くスーパーボールはクルクルと僕の周りをまわっています。

「あ、精霊だから基本的に他の人には見えないはずだから。人の居る所の時は気を付けた方がイイかな」

「あっ、はい。分かりました」

「ごめんね。出鼻をくじいて。じゃ、いってらっしゃい」

 知り合いはそれだけ言うと出て行きました。

「外いかなくても、この精霊から色々聞けるみたいだから行く必要なくなっちゃったんだけどなぁ……」

 一人呟いても、返事は勿論ありません。



 行く必要がなくなっても、やっぱり外が見たいわけで。

 自分の周りに浮かんでいるスーパーボールのようなこれは人には見えないと言われているし、使い方もまだよくわかっていないのもあってとりあえず家を出ることに。

 扉に手をかけて、押すと普通に開きます。

 先程は知り合いを追いかけながらだったのでジックリは見ていませんでしたが、街は素朴な感じ。

 角を二つ三つ曲がったら、中心街っぽい所へ出てきました。

「噴水もあるし、街はどこいっても街だな」

 噴水の近くに案内板の様なものがあったのでそっちに足を延ばすと簡単な案内図。

「ここが真ん中なのか」

 噴水広場が街のど真ん中に合って、街自体が綺麗な円形。

 十文字を切るように大きな道が東西南北にあって、そこから先はアリの巣のように四方八方に伸びている感じ。

「大体この辺りが、あの家かな?」

 自分で来た道を思い出しながら指でたどると、いつの間にか目の先に綺麗なスーパーボール。

 浮いているそれが頷いているように上下に動きます。

「合っているって言いたいのかな?」

 僕の言葉にもう一度動きました。

「後でいろいろ教えてもらわないとな」

 もう一度上下に動くと今度は僕を導くようにふわーっと先の方へ。

 離れていくので追いかけると止まって、追いかけると止まっての繰り返しでついて行ってみると、そこは市場のようなところ。

「らっしゃいらっしゃい。いい野菜が今日もあるよぉ」

「今日の夜は海の幸。とれたてのいい魚があるよ」

「ダンジョン産の新鮮な肉ぅ。肉ぅ。いかがっすかー」

 どうやらこの街でも買い物は出来る様子。

 色々な人たちが買い物をしています。

 そういえば、コーンフレークかぁ。コーンはあるかな?

 野菜屋さんを覗いてみるが、どうにもそれらしいものが見つかりません。

「何をお探しで?」

「コーンはないかなーって」

「コーン?お客さん本気ですか?」

「え?」

「え?」

 見合わせると、こいつマジか?という目で見てきます。

「ウチは野菜を取り扱っていますが、家畜のエサはアッチの区画ですぜ」

 野菜屋のおっちゃんが指さすのは南の区画。

「あー、失礼しました。まだ街に来たばかりで慣れていなくて」

 ははーん、という訳知り顔で野菜屋のおっちゃんが聞いてきます。

「よく知りませんが、外国はコーンを食べるんです?」

「種類が違うかもしれませんけど、僕の知っている所では食べていたので」

 しどろもどろになりながらも、何とか言い訳を。

「へぇ。まぁすみませんが取り扱ってないっすわ」

「分かりました。ありがとうございます」

 他の野菜ももう少し見たいところでしたが、とりあえずここを離れることに。

 パッと見た感じ、地球とそれほど変わりない野菜、魚、肉。

 多少名前は違っていましたが、多分同じ感じで使えそうな食材ばかりでした。

「折角教えてもらったし、コーンも見ておこうかな……」

 言われたのは南の区画。

 街の散歩がメインだったので、適当に歩きながら南の方へ。

 裏道を抜けて、方向感覚だけで街を進んでみたのですが……。

「迷った?」

 そろそろ南の大通りに出るはずと思っていたのですが、小道から小道。大きな道に出ることがどうにもできません。

「おや、こんなところにどうしました?」

 一人、老婆が道路に椅子を一脚出して本を片手に声を掛けてきました。

「南の大通りに行くつもりで散策というか散歩をしていたのですが迷ってしまったみたいで」

「あぁ。街の形もあるだろうけど真っすぐに見える道が微妙に斜めになっていてね。ソレで迷ったんじゃないかい?南の大通りだったらこの道をまっすぐ行けば突き当たるよ」

 言われた道は今自分が来た道。それも反対側に行くように。

「この辺りは太陽も遮るから、方向感覚を見失いやすいらしいよ」

「ご丁寧にありがとうございます」

「ゆっくり本を読んでいるだけさね。構わん」

 挨拶をして言われた通りに行くと南の大通りにやっと到着。

「家畜の餌屋?どこだろう」

 呟きながらも探すと、目当てのそれが。

「あぁ。コレか」

 パッと見ると、普通のコーン。粒だけが取り外されてさながらスナック菓子の感じですが乾燥しているのもあって、見るからに硬そう。

「おや?いらっしゃい?」

「あー、コレってコーンですかね?」

「ええ。飼料用のコーンですね」

 やっぱり飼料用。野菜屋さんの言う通りです。

「あー、わかりました」

「どうかされましたか?」

「いえ、ちょっと確認に来ただけです」

「はぁ。そうですか」

 会釈をしてさっさとこの場を後にすることに。

 その後は普通に噴水までまっすぐに行って、家までは覚えた通り。

「結局何も買わなかったな」

 家に着いて、一人ごちると、

「質問をしていただければ答えられたのですが」

 いきなり声が。

「え?」

「あ、私です」

「は?」

 ふよふよと浮かぶ虹色のスーパーボール。

「精霊ですから。一応喋る事も、考える事も出来ますよ?」

「もう少し早く言ってほしかったかも」

「直ぐに家を出てしまわれたので、流石に外で喋るのは困るかと思いまして」

 あの時迷わずにすぐに家を出なければよかったのか。まあ、散歩はどのみちしたかったので、問題はないだろう。

「その気遣いは凄く助かったけど。喋ることが出来たのか」

「他にも色々な機能があります」

 そうだったのか。というか、聞けばいいってそのまんまだったのか。

「じゃあ、僕を市場に連れて行ってくれたのは?」

「新しい場所に来た場合に必要な事は基本的に衣食住だと思い、優先順位的に食材を探されているかと思いました」

 中々気が利くらしい。

「じゃあ、早速試しに。コーンフレークの作り方は分かる?」

「少々お待ちください」

 スーパーボールがくるくるとその場で回る、それはまるでパソコンでマウスが読みこんでいるときの形の様子。

「コーンフレークの作り方の検索が完了しました。作成方法を案内できます」

「マジか。出来るのか。凄いな」

「まずはコーンを用意してください」

「コーン、買ってこなかったんだよね……」

 ぼそりというと、

「缶詰のコーンで代用可能です」

「そうなの?」

 缶詰のコーンは厨房にあるはず。

 スーパーボールを伴って、厨房に移動します。

「あったあった」

 お目当ての缶詰を見つけます。

「まずはクリーム状であればそれを濾します。粒状のままの場合は潰してから同じく濾します」

 音声案内に従うような形で、早速作ることに。

 手を洗って、調理準備完了。

コーン缶をとりあえず一つ開けてかなりしっかりと粒を潰して、網目の細かいザルで濾します。

「濾したよ」

「小麦粉とはちみつを加えてダマが出来ないように混ぜてください」

「はいはい」

 分量もしっかり精霊が言ってくれるので簡単。精霊曰く五十グラムのコーンに大さじ一杯の小麦粉というので、この缶は丁度二百だったのでそれの四倍。はちみつはお好みとの事だったので、少し少なめに入れました。

 しっかりと混ぜて、出来上がったのはペースト。

「後はこれをオーブンシートに敷いて、レンジで温めてパリッとすれば完成です」

「オーブンシートは分かるけど、レンジ……あるな。本当にここはお店と殆ど一緒なんだ」

 片面をレンジで温めてかなりパリッとしてからひっくり返して反対も。

 両面焼ければ完成で、かなり大きな一枚を後は手でちぎって小さくすれば自家製コーンフレークの出来上がり。

「おおー。出来た出来た。精霊も凄いなー?」

「お褒めいただきありがとうございます」

 出来立てをちぎって早速一口。

 ほんのり甘く、思っていたよりもサクサク。もう少し甘くしたければ砂糖をかけるのもうなずける中々のおいしさです。

「色々魔法を使えって言っていたけど、何処までできるのかその辺りは、分かる?」

「殆どすべての事が魔法で可能です」

 殆どすべてか。結構それは大変かもしれないな……。



読んでいただきありがとうございます

毎日投稿頑張ります

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― 新着の感想 ―
[一言] この街、石畳かなあ。
[良い点] 缶詰からも、コーンフレークが作れる事を初めて知りましたがーー自力で作る気はーーm(__)m 知識として記憶しておきます。
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