キャッソワリのステーキ
アレとは勿論キャッソワリのお肉。
地球で言う所のダチョウの肉と言う感じですが、ヒクイドリやダチョウはヒレ肉がとても美味しく、高タンパク質、低脂質な栄養価的にも素晴らしいお肉なのですが、分かりやすく言うとかなり上質な赤身肉になるので、トロトロに煮込むなどの食べ方も凄く美味しいのですが、分かりやすい美味しさを演出するのに最も良さそうな料理は自分的には凄くシンプルなステーキ。
解体屋さんから持って帰って昨日のうちに冷蔵庫で保存しているのでまずは常温に戻すところから。
室温に置き直して三十分から一時間程すればお肉も常温に戻るので常温に戻ったら軽く塩とコショウを振って、後は焼くだけ。
お肉の大きさにも左右されるので絶対にこの時間というのは無いのですが、普通の大きさのお肉なのでサラダ油を敷いたフライパンなどで大体平均二分前後の焼き色を付けて、ひっくり返してから一分少々。
これで両面にしっかりと火が入るはずなので、すべての面に焼き色がついていることを確認してから、ひっくり返して三十秒。さらにもう一度ひっくり返して三十秒。
これでいい感じにミディアムレアの火加減で中まで火が通っていると思うので、後は少しだけお肉を休ませて、旨味を全体に馴染ませましょう。
がーさんや精霊、そしてタマエもいるので常温に戻す一時間は魔法でパパっとすることも出来るのですが、折角なのでゆっくりと待って欲しいのと、お酒を飲んである程度いい気分の状態になってくれるとさらに美味しいと思と思ったので今日はしっかりと一時間自分で確認したのですが、焼きあがるとすぐに食卓である客席から厨房にウチの二人ももどってきます。
「何をさっきからやっているのです?」
「おやおや?お肉ですね?」
「おっ、昨日のかな?」
「ですよ。カニや馬も美味しいんですけど、鶏肉も悪くないですよって」
「それは分かりますが、美味しさという意味では少し落ちません?」
「ですよね。まあ、いい香りですけど」
お肉を休ませている所に三人共お酒を片手に来たのですが、新しいおつまみが出来たという程度の認識みたいで、そこまで期待が無いという状態。
逆にハードルが下がってくれるので自分としては嬉しい限りですが、あと数秒も休ませればカットして提供できるのですぐに提供すると伝えると、客席の方に戻ってくれたのでささっとお肉をカットしてお皿に盛ったら、早速持っていきましょう。
「んー、見た目の話ですけど」
「どうかした?」
「コレ、本当に鶏肉ですか?」
「一応フィレ肉と言われるような部位だから普通の鶏肉とはちょっと違うんだけどね」
「ですよね?何も言われないでこのお肉のステーキだけを見たら牛肉と間違えそうですけど」
タマエの言う通りで、キャッソワリのお肉はパッと見ても鶏肉らしい色ではなくかなり上質な赤身肉でさらにそれを焼いてステーキの状態にしているので、何も知らずに出されたらいい牛肉としか見えません。
「ソースは無いみたいだけど?」
「お肉がいいモノだったので、塩とコショウで素材の味勝負という感じですね」
「ふーん?」
何かを悟ったのかがーさんはそれだけでにっこりと笑うだけ。
「まあ、何を言っても鶏肉ですからね」
精霊的には鶏肉は鶏肉と言いたいみたいで、とりあえず各自の小皿に取り分けが終わったので、早速いただきましょう。
実はカットしたときに端の方を味見して美味しい事は確認していたのですが、端っこと中心で場所が違えば旨味も全然違い、一口噛むごとに良質な脂質の甘さとは違う柔らかい中にある噛み応え、甘さというよりは旨さに近い肉本来の美味しさが口の中一杯に広がり、牛肉やドラゴン肉のステーキとは方向性の違った、肉の美味しさが口の中ではじけます。
そしてこの肉の良いところは口の中に入れても溶けてなくなるという感じではないので、しっかりと噛むことが出来るのですがだからと言って噛む力が無いといけないという事は無く、溶けない、噛みやすい、噛むと旨味が出てくるという新しさを感じるお肉。
「コレは……凄いね」
「うっま」
「え、え?」
何も言わずに自分もモグモグと噛んで、美味しいひと切れをじっくりと楽しんでいたのですが、それはほかの三人も一緒だったみたいで、最後に飲み込むのが惜しいと思いながらもゴクンと飲み込むと、自然と次の一切れに手が伸びます。
「この赤身肉は、芳醇な香りの赤ワインがいいかな?」
「あえてロゼで口の中をさっぱりさせるのもいいのでは?」
「肉の旨味を引き出すというより、お酒を楽しむという意味でウィスキーを流すのもいいのでは?」
三人共次はお酒と合わせる事を考えているみたいですが、そこまで大きなステーキではないので次の一切れでとりあえずキャッソワリのお肉は終わりの予定なのですが?お酒の話をしつつも視線はこちらに向いてきて。
「まだお肉は一杯ありますよね?」
「追加のステーキをお願いします」
「そういえば、お肉を常温に戻すんだっけ?手伝うから、時間のかかる作業があったら言ってね?」
自分も一緒にお酒を飲んで、今日の調理は終わりとするつもりだったのですがどうやらもう少しお肉は焼かないといけないみたいです。
牛フィレ肉かダチョウの肉を想像してもらえると一番近いモノになるかと思います。
……生涯で何度も食べたことが無いので記憶の味になっている気がしますが、フィレ肉のステーキは上手かった記憶が。
ダチョウは……ないのですが、見た目がまんまフィレ肉だったので……そんな感じという風に書かせてもらっています。
まあ、魔力も多少あり赤身肉で余分な脂がないのでさっぱり美味しいお肉と言う風な。。。
……食べたい
自分が書いていて自分で読んで食べたいと思えるのは凄く嬉しいのですが、お腹が減る。。。
ドカ食いしたいけど……何かいいものあるかなー?(笑)




