★土の的&風
お客さんが帰ったら、後片付けをして。
厨房にはフライドポテトとオニオンリングの残りが少しあるのでそれを紙袋に入れて、おやつ感覚で食べ歩くこの後用に持ち運べるように。
洗い物をある程度済ませると、残ったのは茹でたチキン。
「これで夕飯かなぁ」
鶏のゆで汁があるなら、作るのは絶対にアレ。
今のうちにと準備も大事なのですが、アレは出来立てが一番。
冷蔵庫の手前に夕食の準備を済ませてから今日の散歩に行くことにしましょう。
「勿論私の分もありますよね?」
自分一人分を用意していると精霊に声を掛けられて一瞬だけギクリとしましたが、ストックはシッカリあるので大丈夫。
「勿論。あるに決まってるじゃん」
「それならばよかったです。本日のこの後の予定は?」
「南の牧草地で土と風の魔法の練習。昨日の感じで火と水を数回分残せば大丈夫なのはわかっているから、お風呂の分は残すけどね」
一回目より二回目。二回目よりも三回目とやればやるほど魔法は習熟するようで、感覚でやりたい事が出来るようになってきています。
「流石に周りに人がいないと思いますので、外に出たら多少の御手伝いは可能かと」
「ん。今日もいろいろ教えてね」
冷蔵庫に茹でたチキンのスープを入れて、洗い物を済ませたら午後の散策に出発です。
この街は丸い形状だというのは分かっていましたが、街を囲む形で高すぎない程度の壁が見えてきます。
昨日の北側はダンジョンの入り口や出口は見えました。その後ろにもしかしたらあったのかもしれませんが、中々の高さです。
「扉を出るのかい?」
門番の人が声を掛けてきます。
「ええ。少し魔法の練習で」
「大丈夫だと思うが、遅い時間は隣の通用門しか開いていないからあまり遅くならないようにな」
ありがとうございますと挨拶をして、扉の先へ。
真っすぐに一本の街道が伸びていて、気持ちのいい風が一陣。
「んー、気持ちいいなぁ」
思わず大きく伸びをして、深呼吸。
人はまばらで、ぽつぽつと。
ゆっくり休んでいる人、剣を振っている人、楽器を練習する人。各々の時間を楽しんでいるように見えます。
「人目はない方がいいよな……」
少し離れると人がポツリといて、というのが続き十分程度歩くと草原と林の境の様な所へ着きました。
丁度人気も少なく、ここなら大丈夫でしょう。
「お待たせ、精霊」
声を掛けるとポンッと出てきます。
ぐるぐると一回回って、
「今日の練習としては先に土をお勧めします」
「え?そうなの?竜巻みたいなのを作ろうかと思っていたけど」
自分で考えていた予定もあったので言ってみます。
「視覚的な問題です」
「視覚的?」
「竜巻となれば流石に視認しやすいと思いますが、本来風は目に見えないものなので、土で的を作ってそれを壊すという形が練習にはいいかと。また、竜巻は作れるとは思いますが、制御が難しいのでその辺りを考えるとあまり最初には向かないかと思います」
なるほど。言われてみれば納得です。
「ん。そういう事ね。言われた通り土からにするよ」
という事でまずは土魔法から。
「土魔法だと何することが多い?」
パッと思い浮かんだものはゲームの石つぶての様な物。そして壁を作るもの。それを伝えてみます。
「土魔法はその認識で間違いはないと思います。あとは急ごしらえにはなりますが、防具として使うという事も可能です」
なるほど。防具ね。革製の防具は切れてしまう事もあるから、そういう時の一時しのぎか。
「じゃあ、壁を作る感じで的をまずつくればいい感じ?」
「そうなります」
頷いて、頭の中で想像を。
思い浮かぶのは弓道の的。ただ、あれは土の壁に刺しているので、きょうはそれを浮かせる感じで。そうなると、棒に突き刺して立てる感じ?
頭で想像するものがある程度決まって来たので、目を閉じたまま魔力の認識を。
「土の的!」
十センチぐらいの棒が二メートル程度の高さまで伸び、そこにモコモコと土が集まって思い描いていた通りの的が出来ました。
「うん。いい出来」
出来たそれを手で触ってみるとかなりしっかりと硬さを感じます。
「魔力の供給を止めると、これでは崩れる可能性が高いですね」
思っていたことを先に精霊が教えてくれます。
火や水の時に思った通り。水は魔力を止めるとそのまま自重で落ち、そこにとどまり、火は燃料切れの感じでしぼんでいきます。
「まあ、練習だからね。とりあえず魔力を切るよ」
プツリと魔力を切ると上の部分がやはり重たかったようで、棒だけが残るような形になります。
「むしろこの棒状のほうが風の的としてはいいかもしれません」
言われてみればその通り。
「じゃあ、風もやってみよう」
次に想像するのは風の刃。鋭くスパッと切れるモノを想像します。
想像して、切れるところまでを思い描き流石に切れ味が鋭すぎる想像だったので少し弱めてというのを何度か繰り返して想像図ができたので、早速魔力を乗せてみます。
「風っ」
右手を振って、指に魔力を乗せて。
土の棒は上の方がぽとりと落ちます。
「思っていたよりも切れそうだったけど、これでもかなり切れるなぁ」
想像以上に風も切れる様です。
その後に一応で火と水を一回ずつ的の残りかすにあててみたのですが、火はかなり扱いが難しく、当たった場所を燃える感覚で想像したせいなのか火というよりは爆破のような感じに。
慌ててそれを水で消そうとしたのですが、水の量を多く想像してしまったので移動するのが思いのほか大変で、かなりくたびれることに。
「ちょっと休憩」
お昼の残りのフライドポテトとオニオンリングをゆっくり食べて休みました。
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