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咲耶  作者: 蒼都 未雨
3/19

火の灯

 とある山間に別荘風のコテージがポツンと建っている。野生の紫陽花が雫を受けた後で彩り良く鮮やかだ。

 雨上がりの様子を窓際で眺めていた灯は、側にある紅茶に手をつけずに腕組みをしながら眉をひそめて考え事をしている


「――結構てこずってるみたいだね」


 急に声を掛けられ視線を送ると、ポケットに手を突っ込みニヤニヤしてる男がリビングに立っていた

さかき

 髪はボサボサ、常に素足、今風のカジュアルスタイルをしてる榊だが、灯にとっては何故かイラついてしまう相手だったりする

「もう四人揃ってるみたいだし」

 喋りながらケラケラと笑い始める榊

「なんなら手伝おうか? 下手に術使ったら…」

「うるさい!」

 榊の胸元を両手でガッと掴み上へ持ち上げた灯の拳から、マッチで火を点けた様に炎が噴きだした

「ひやかしに来たんなら帰れ!!」

 胸から頭が炎で包まれ榊はびっくり、しかしニヤケ顔が途絶える事はない。

 こいつにこれ以上構っていても無意味だと思った灯は、床に放り投げ後ろを向く。

 榊は涙目になりながら首元に手を押さえいたわっている

「ま…まぁ落ち着いてよ 味方燃やしちゃ意味ないっしょ」

 本当は燃やしたかった灯だが、ここは堪えて舌打ちで我慢

「用件は」



「咲耶一人を狙う必要ってあるのかな?」

「何?」

 榊は近くのソファにドカッと沈み込む

挿絵(By みてみん)

「記憶のないもう一人はどう?」

「何を馬鹿な! 奴は水…」

 突拍子も無いことを言われ反論するが、何かヒントを得たらしく黙り込む

(……だが…)

「“旺珠おうじゅの使い”が動く前に仕留めて『晦冥かいめい』さんに喜んでもらえるようせいぜいがんばってよ。本当は俺だってあそびたいんだし」

 灯の感情の変化を楽しんでる榊、そんな榊に再び怒りが込み上げる

「晦冥様と呼べ!!」

「へーい」





 ――放課後の学校

 鐘と共に帰り支度をする生徒達の中、咲耶は氷雪の横に立ち、すこぶるにっこにっこしていた

「氷雪!! 明日の休みデートしよ♥」

「断る」

「やだーもーてれちゃって」

(この女…)←4田

 どんなに断られても屈しない。4田がプルプルしているが氷雪しか目に入らないのでお構いなしだ。

 何とか氷雪に応えてもらおうと苦し紛れに言ってみる

「なんなら、あたしが何者かって教えたげるからさ♥」

 カバンに教科書を収めていた手が止まりくると咲耶に顔を向けた


「何者だ?」

 じっ

「え」


「え…えと……」

 じ―――――~~…

 また無視されるかと思っていただけに、急に問われて戸惑ってしまう。

 咲耶自身、自分が何者かなんて解らないので答えが出せずにしどろもどろ。

 その間もずっと咲耶を見続ける

(ひ…氷雪様……)

 4田にとっては氷雪が咲耶を相手にするだけで大問題。

 氷雪の整った顔と淡水色の瞳が、答えてくれるまで咲耶から離れる事はなさそうだ。真っ直ぐに見続けられて、咲耶はだんだん恥ずかしくなり頭は真っ白、そして両手を頬に持って行き顔をフルフルしだす

「ヤダー そんなに見られると燃えてくるー♥」

「……」

 ガラ

 日直だった萩が急いで教室に入って来た

「幹さーん 明日補習だから学校来てだって―――― かがりせんせいから―――」

「え゛」

 ぎょっとして萩を見る。氷雪は呆れて溜息をつき帰っていった

「あ」

 そこにいた氷雪がいない事に気づき、廊下を飛び出す

「氷雪――………まって――――」





 学校からさほど遠くない場所にある公園。

 奥の方には木立が並び自然に出来た池がある。池周辺は立ち入り禁止だが、氷雪は時間があるとここに来て横になり休息の時を設けていた。

 そして休日の今日も仰向けになり、周囲の自然音を聞きながら目を閉じている


「忘れてても水辺が好きなんだな」


 頭上に気配を感じ、起き上がる。見上げると腰まで髪を伸ばした背の高い女が氷雪を見下ろしている。女は氷雪と目が合うと『ニッ』と不敵な笑みを浮かべ徐に手のひらを翳した



 カカカカカカカカカカカカカカカ…

「15枚目…………20枚」

 教室中に響く忙しないペンの音、紙吹雪の様にプリントも飛びかっている

「……幹、補習の意味わかるか?」

「とにかく書く!!」

 カカカカカカカカカカカカカカカ

「………」

 目は血走り、鬼の形相になっている咲耶は『オラオラオラ!』と物凄い速さで書きなぐっている。篝先生は散らばっているプリントを拾っては纏めていた

「しゃ―――――――あと20!!」

 またプリントが教室に舞う。篝先生は大きな溜息を吐き、諦めた様だ


 ピタ


 ――急に、咲耶のペン先が停止する

 咲耶自身に、モヤモヤしてすっきりしない“何か”が纏わりついた。

 何かしなければという衝動に駆られた咲耶は、立ち上がる


「先生 急用で帰ります!!」


「え」

 荷物も持たずに廊下を猛ダッシュで駆けていく

「おい……幹!!」

 過ぎ去った後、先生は呆気にとられ、さっきまで咲耶がいた席を見ている

(急用……?)





 咲耶は堤防や住宅街のあちこちを不安な顔で走り回っていた。

 額に汗を浮かべ呼吸も落ち着かないが、休む事なくキョロキョロし走り続けている


(何だろ……)


 体が急かされて追い込まれる感覚がいつまでも治まらない


(胸騒ぎがする)


 側にあった一メートル弱の柵を見つけると、両手で掴みヒラリとジャンプ、奥の林へ再び走っていく


(早く行かなきゃって思うのは)



(何で……?)


 咲耶の視界に人らしきものが入り込む。

 そして異様に赤い背景も―――


「来ると思った。咲耶」


 咲耶は息を切らしながら、不可思議な光景を目の当たりにしていた。

 人が入れる程の大きな鳥かごらしき物が、赤々と炎に包まれ熱気を放つ。

 燃え盛る訳でなく緩やかな炎だが、それでも周りの木々は熱を受け燻されていた。それなのに隣に立つ女(灯)は平然とした表情で腕組みしながら笑っている



「…な……何…コレ?」

 灯の声にも反応出来ない咲耶は数メートル離れた所で立ち止まり、炎の塊を食い入る様に見ていた。

 そしてチラチラと炎の隙間に人影がいるのを見つけハッとする

「ひ…氷雪!?」



(…幹……!?)

 名前を言われ気づく氷雪。氷雪もこの状況に驚いて身動き出来ないでいる、と言うか炎に囲まれて身動きが全く出来ない

「ちょっと! あたしの氷雪になんて事すんの!! 早く消…」

 驚きから怒りに変わった咲耶は、側の灯を人差し指で差し抗議するも見覚えのある顔であった為一瞬止まる

「………あんた」

 一体何処で見たんだっけと考えるが、思い出すまでそう時間はかからなかった。

 咲耶の脳裏には、両手を広げて見下ろしている灯の姿―――

 辺りは熱気ムンムンなのに瞬時で血の気が引いていく


「あ―――――あたしを屋上から落とした奴!」


「フン 馬鹿が、今頃気がついたのか」

「!」

 咲耶の言葉に氷雪は驚く。咲耶は目を尖らせて灯の方へ腕を伸ばしブンブン振り回す

「あたしに何の恨みがあんのよ!!」

 腕組みをして静かに目を伏せる灯。

 余裕のある笑みは衰えない。ふいに手を下ろすと右手を広げた

「恨みなどない ただ――――」

 人差し指、中指、薬指に炎がともる

「すべてはあのお方の為。お前のもつ旺珠が壊れればそれでいい」

「…? 旺珠? 何それ!?」

「逃げろっ 幹!」

 珍しく人の話を咲耶は聞いている。嫌な予感がする氷雪は咲耶を逃げる様に促すも炎と灯の声に遮られ咲耶にはあまり届いてない

「知らぬならそれでもいい。旺珠がダメなら五属の一つを――」

 どこから現れたか、灯と同じ背丈の少し曲がっている棒を左手で持ち、咲耶に向けて真っ直ぐに腕を伸ばした。弦は見当たらないが、灯の格好は弓を構えてる様に見える


「消滅してもいいのだからな!」


 バ シュ


「!」

 三つの火塊は咲耶に放たれ炎に包まれた

「……み…幹!!」

 驚愕した氷雪は外に出ようと、とっさに火の檻を掴む。ジュゥという蒸気音が聞こえるが、氷雪にとっては目の前の檻よりも先にいる咲耶が気がかりでならない。目を凝らすと燃え上がる炎の脇で四つん這いになっている人影を見つけた



「……あ…あぶ…」

 持ち前のすばしっこさで咄嗟に咲耶は逃げていた。燃えている方を目を大きくして見ているが、少しパニックに陥っている様で四つん這いになったまま固まっている。

 無事だった咲耶を見て、一時氷雪は安堵した

「三つの火矢からいつまで逃げれるか…見物だ」

 バ シュ

「ひっ」

 再び咲耶に火塊が放たれた





 どれくらいたったのか―――辺りは炎で焼き尽くされ、焦げ臭さと熱気で充満している。

 氷雪は檻を掴んだまま離れようとしない。灯は焦りの色を浮かべ顔を歪ませ始めた

「ち…」

(意外としつこいな)


 火を避けるため、あちこち飛び回った咲耶は立っているのがやっとなくらい疲労しきっている。息を切らしながら流れ落ちる汗を左手で拭う


(うまく水辺に周り込んでるのか)


 咲耶の数歩先には池、火を避けながら無意識に池の方へ逃げている。

 体を動かす事が好きな咲耶でも、熱さと煙でどんどん消耗されていく。何とか隙をついて氷雪を救えないかと氷雪と灯の距離を見比べ考えていた。

 灯も火矢を放つのを一旦止め、二人の間に少しの沈黙が続く


(これ以上長引くと……)


「幹!」

 沈黙を破ったのは氷雪だった

「そのまま泳いで逃げろ!」

 氷雪は熱せられた檻を掴みながら必死で咲耶に声をかけている。

 火傷を通り越して黒焦げになってもおかしくない筈なのだが

「聞こえてるか幹!……幹!!」

 もちろん咲耶には氷雪の声は届いている。しかし、はいそうですかと帰るつもりはさらさらない。氷雪の声には答えず、何とかしなければと眉を顰めガクガクの足をしっかり地につけ立っている。

 咲耶を逃げるように促す氷雪を見ていた灯は、ニヤリと口端を上げ火矢を構えた

 バ ッ

「!!」

 火矢を向けた先は咲耶でなく氷雪―――


「さよなら 氷雪」


「ダメエェェ!」

 咲耶は炎に煽られながらも氷雪の方に一気に駆け出した。灯はこの機を逃すまいと照準を素早く咲耶に切り替える

「!?」

 走り出した咲耶に避ける術もなく、三つの火矢は勢いよく放たれた



 激痛が咲耶の進行を妨げる。右腕左腕、左足を火塊が貫通。苦痛で顔を歪ませた咲耶は、数歩手前で前のめりに倒れ込んだ

「幹!!」

 氷雪は血の気が引き愕然となる。それと同時に怒りも徐々に込み上げてくるのを感じていた

「ずい分手こずらせてくれたね 咲耶」

 咲耶の頭付近でしゃがむと、前髪を掴み目が合うように持ち上げる。

 苦しげな表情の咲耶を見て満足気だ

「…ひ…氷雪を」

「大丈ー夫、あんたが消えれば氷雪は無事」

 傷を負いながらも咲耶は氷雪が気になっている。咲耶にはどんな事があっても氷雪を守らなければという思いがある様だ

「ほっといても傷口から徐々に炭になるけど、とどめをさしてあげるわ」

 射抜かれた右腕は少しずつ黒くなり広がっていた。『じじ…』という音を出しながら静かに内部を焼き始めている。

 灯は最後の仕上げをするべく立ち上がると両手を上にかざし、術を発動し始めた


「よせ」


「それ以上そいつに手をだすな」

 威圧的に灯を睨む氷雪。握り締めた両手周辺は炎が消される音が聞こえる

(こいつ…)

 氷雪の怒りに応えるように池の表面がざわざわ波立ち始めた。灯は焦ると、急く様に両腕を天に向け怒声を放つ

「これで終わりだ!」

 炎が天高くトグロを巻きながら伸びていき、先端に当たる部分からは二又に割れた舌が現れる。炎によって形作られた大きな蛇はうつ伏せで倒れてる咲耶をめがけて一気に下降した


輪炎蛇りんえんだ!」


 大きく口を開いた蛇の奥は赤黒く深い。飲み込まれたら跡形もなく消えるだろう。

 ピクリとも動かない咲耶は熱さも痛みも感じないまま消えていくかもしれない。

 見ていられなくなり氷雪は目を伏せる。何も出来ない苛立ちと悔しさ――

 体を強張らせ咲耶に向かって必死に叫ぶ


「幹!!!」


 ザザッ

 氷雪が叫ぶのとほぼ同時――池の水が生き物の様に動き出し大蛇目掛けて襲い掛かった

(な…!?)

 飲み込む筈の大きな大蛇は、辺り一帯を飛び交う流水に飲み込まれていく。

 勢いを増した水は、そのまま灯にも襲い掛かった

「キャアアアアア」


(池の水が……!?)


 氷雪は目の前の光景に驚く。池の水はピンポイントで火蛇と灯を襲う。

 咲耶には水滴がポツポツ当たるくらいで済んでいた



 暑かった周辺が蒸気を出し急速に冷やされていった。燃えていない木々の所まで押し流された灯は、さすがに生存しているが、全身水浸しになり体力が奪われぐったりしている

「く…そ……氷雪……よくも…っ」

 歯を食いしばり上半身を腕で支え起きようとするが思う様に動かない。

 最後の力を振り絞り、咲耶めがけて腕を伸ばす

(こうなれば火矢で…!)


 ザ…


 ザ ザ ザ ザ ザ


 氷雪のいる檻状の炎が砂によって鎮火していく

「!!」

(火のカゴが!)


「灯」


 火矢を放つのを止め檻状の炎が消されていくのを凝視している。

 怒りを含んだ声を聞き一瞬身を竦ませた

(…砂!?)

 氷雪は火で視界を遮られていたが今度は乾いた細かい砂で遮られる。

 徐々に砂埃が収まってきた頃、後手方向に現われた二つの人影はずぶ濡れで横になっている灯に声をかけた



「まだ続けるなら俺達が相手するが」

 静かに灯に向かって戦いの意思を示す二人

「………」

 灯は二人を睨みつけギリッと歯を噛み締める。悔しさと怒りに満ちた形相で、自身の周囲を炎でぐるりと包み上げた後、瞬時に消え去っていった


「咲耶!!」


 二人は灯がいなくなるとすぐに咲耶の所へ向かう。

 咲耶を抱え仰向けにした女性は不安そうに顔を上げ男の名を呼ぶ

「燐火」

 名を呼ばれるよりも早く咲耶の前に膝をつき、燐火は傷元へ手を翳す

「伝導か……火の進行を止める!」

 火傷に覆われ炭化しつつあった咲耶の身体は燐火の能力で抑えられ始めた。

 自由になった氷雪は咲耶を介抱する二人の様子をじっと見据えている

(篝……先生!?)

 見覚えのある顔に驚きを隠せないが、その場を動く事も出来ずにいた氷雪を下を向いていた燐火が険しい顔で睨みつけた

「氷雪、お前がいながら何て様だ」

「!」

「燐火! 彼だって思い出して…」

「相手は灯だ、咲耶を守る事ぐらいはできた筈だ」

 炭化は止まったがまだ赤黒く痛々しさが残る。燐火は咲耶を抱え上げると鬱蒼とする木々の方向へ歩き出した

「…どこへ……」

「進行は止めた 回復させてくる」



「……」

 燐火は氷雪ともう一人(沙智)を置いて林の中へ消えていく。燐火が見えなくなるまで二人は目で追っていたが、沙智がハッとして氷雪の方を振り返り焦りながら両手を前に出すと小刻みに左右に振った

「…あ…ご…ごめんなさい。咲耶の傷が深かったから動揺してただけで決してあなたが悪いわけじゃ…」

 不穏な空気を何とかしようと、沙智なりに弁解する

「…教えてくれないか、あんた達が何者なのか」





 ―――林の奥、綿帽子を付けた花の群生に辿り着いた燐火は、中央にまで足を進めると静かに咲耶を花の上に寝かせた。

 しばらくすると咲耶の周囲からシャボン玉の様な淡く光る玉が次々と現れては傷を癒し始める。咲耶の治癒能力と花々のエネルギーが共鳴し合い、幻想的な光景を燐火はずっと見守っていた。

 傷口が治り始め綺麗になっていくが、痛みのショックを伴った為か咲耶は一向に起き出す気配を見せず静かに眠り続けていた。

 燐火は苦しげな表情を見せ咲耶の頬を優しく撫でると、壊れ物でも触るかのようにそっと唇を重ねる


(咲耶………)





「五つの属性 木 火 土 金 水 にそれぞれ守り主がいるの。それが私達」

 沙智は簡単に説明しだすと側に落ちていた灰色の小石を拾い上げる

「見て 私は『土属の気質』だから」

 手のひらにあった小石がサラサラと砂に変わりだす

「今戦った灯は『火属の気質』これは燐火も同じ。ちなみに咲耶は『木属の気質』木や植物を操る事ができるの」

 先ほど火を自由自在に操っていた灯と、今までの咲耶の周囲には常に樹木、植物、木の葉が関連していた事を思い出す

「ああ、それは…わかる…」

「でも、それぞれ相性があって…」

「…その前に旺珠とは何だ?」

 灯が言っていた事が気になり質問してみる。身を乗り出していた沙智は一呼吸置いた後話し出した



「旺珠…個々の自然物の中で『陽』の気だけを集めた珠…二百年に一度、その珠をある場所に奉納するの」

「…その珠が壊れるとどうなる?」

「そ…そんな事になったら」

 動揺した沙智は立ち上がり祈るような形をしながら焦りだした

「陽は陰に呑み込まれて大変な事になるわ」

 座っていた氷雪は視線を沙智に合わせ見上げている

「…灯とかいう奴は旺珠を壊したがってたが」

「ええ…」

 手を組みながら目を伏せる沙智。今までの事を思い出した様で辛そうな表情に変わる

「灯だけじゃない…他の四属性も破壊又は消滅にやってくる…」

 一点を見据え徐々に声のトーンが上がっていく

「前にも失敗してるから今度を逃すと全てが終わってしまう。それだけは絶対ダメ!」

(前にも…?)

 沙智の言葉に疑問を覚えたが勢いに抑えられ黙って聞いている

「旺珠は咲耶が持っているから特に狙われるの…」

「……」

「だから咲耶は私達で守るの!! がんばりましょ!! 氷雪」

 組んでいた手を拳に変えると、氷雪の前に跪き意気込みを表す。

 が、氷雪は顔を顰め困惑気味だ



「…俺は守り主じゃ……」

「あ、そうだった。思い出してないんだ」

 ハッとした沙智は口元に手を当てうっかり顔。あわてて説明しだした

「氷雪、あなたは『水属の気質』」

「え…」

「いろんな液体を操る事ができるわ」



「………」

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