銀の里
「うわ――――真っ白だ――――! すごーい、きれー」
周りにある木、大地、山、地平線の向こうまでが全て白で統一。空は青く澄み渡り青と白だけの美しい世界が四人を囲んでいる
「そうか?」
「うん♪ 違う自然があるんだなって、改めて実感するよ」
先頭を歩いていた氷雪が不思議そうに後ろを振り返る。咲耶が嬉しそうにはしゃいでいるので氷雪もつられて微笑んだ
「…咲耶がそう言うならそうなのだろう」
「あはは」
少し控えめに燐火の間から沙智が顔を覗かす
「…あの……本当私達も来て良かったの?」
「もちろんだよ。束なら各地の里の勉強も必要でしょ?」
「“束代理”だ! 間違っても俺は束にはならない!!!」
「……」
咲耶の言葉に不服を感じビシッと否定
「沙智、いい機会だからしっかりこの里の情報を仕入れて行こう」
「うん…そだね」
沙智は咲耶にポソリ呟く
〈紅焔の里の束って特殊なんだ〉
〈え? そうなの?〉
特殊内容に少し興味を持ったが、不機嫌になった燐火を前に聞く事もできずその場で終了となる
「…にしても氷雪………」
「あたし…こんなに着込まなくても大丈夫だと思うんだけど……」
雪が確認できた頃から、咲耶は氷雪に色々と服を着せられ現状況では見た目咲耶かどうか疑わしいくらいの雪だるま状態になっていた。
沙智は苦笑いしているが、咲耶はやや困り気味
「……ダメ」
本当はもっと着込んで欲しいと呟きながら咲耶を見ている
「咲耶は暖かな土地の出だ、風邪を引いて貰いたくない。木は風邪を引くと聞いた」
「……いや、でも燐火くらいには…」
「俺も出来れば咲耶くらい着たいが…我慢してる」
「えっ!? まじで?」
一般的な防寒着を見につけた燐火はさすがに咲耶の様には出来ないと身を震わせ俯く
「で…でも燐火よりは……木だし…」
「家につけば上に着られる服がある、もう少し着て貰いたい」
「え゛え゛!?」
超過保護な姿勢を崩さない氷雪。一番平気な沙智は唖然とし眺めている
「氷雪、まさかとは思うが寝泊りする場所が氷漬けとかじゃないだろうな?」
不安が頭を掠め氷雪に問う燐火だが、隣の沙智は興味深々
「その心配はない、客人様に宿は暖をとってあるはずだ」
「そうか…」
「俺達はあまり関係ないから普通に氷のベッドや雪のソファだったりするが」
「すごい!! 太陽の光でキラキラ?」
「……ああ?」
「おおおお」
付け加えの一言に目の色が変わった沙智は期待に胸がふくらむ。その喜び様は団子以来の興奮だと咲耶は冷静に判断していた
「時々沙智は意味の分からない所で喜ぶな…」
「……」←咲
沙智の豹変ぶりに理解できない燐火。
ワクワクしながら『早く見たい、見たい』と喜ぶ沙智に咲耶は苦笑する
「着いた」
突然の冷たい風に歓迎され燐火は体が硬直、窪地になっているそこは小山が数個あり隙間から集中して冷たい風が舞い上がる。
小山には窓らしき物が見えるが生気が感じられない
「銀の里。何も無いが飽きるまでいてくれ」
窪地の中心へ向け歩く氷雪。
三人は後を追うが周りを見ながら違和感を覚えていた
「…何か」
「誰もいないね…」
「今は吹雪いてるし……普段でもこんなもんだ」
「……」
風を受ける度燐火が青ざめ苦しそうだ。
咲耶はゴーグル越しから見える里をぽかんとしてキョロキョロし、軽快に歩く沙智は燐火を気にしながら見慣れない土地を眺めていた
「大体家から出てこない。地深の様に下で道が繋がってるし」
「へー。そうなんだ」
「やる事と言ったら雪崩や雪融けの対応と旅人の案内くらいだろう」
「…ほとんど何もしない里があるとは……考えられん」
パカ
「お、氷雪!」
四人が通り過ぎた雪地から乾いた音がし、真四角の扉が上に向けて開く。
中から軽い足取りで一枚布を纏っただけの一人の青年が笑いながら駆け寄って来た
「振動で誰か来たのかと思ったらお前だったのか」
「霙」
「朔くらいは戻ってこいっての」
「来てるだろ」
「二・三年毎の朔だろ、それも一回」
白青の髪が胸元まであり、氷雪より少し背が高い霙は氷雪を説教した後側にいる三人に目を配る
「お、こちらのみんなが旺珠の使いをした人達かー。始めまして、俺は霙。氷雪とは同期なんだ、よろしくどうぞ」
軽く挨拶を済ませた霙は驚きの表情で顔を赤くした沙智を見つけ覗き込む様に体を屈ませるとにっこり笑いだす
「―――で、感情表現の乏しい氷雪を射止めたという嫁さんは君? かわいいね。愛想の無い奴だけどよろしく頼むよ」
「違う、こっち」
「え?」
戸惑う沙智。
勘違いした霙を氷雪は手を伸ばし、咲耶の方へ促す。
霙は見直すと一瞬間を置き言葉を詰まらせた
「…え~と……豊かな人だね…よろしく」
「……ども」
「着ぶくれだ」
あまり追及しない方が良いと霙は判断し氷雪へ向き直る
「先に二人に会いに行くんだろ? 俺も後から行くよ、みんなを案内してあげよう」
「わー。ありがとう」
沙智が嬉しそうに礼をする。
氷雪は霙を見て何か気になっていた
「…霙」
「ん?」
「見た目が寒い」
「あっ 悪ぃ、今風呂入ってたんだ」
ヒョオオオォと凍てつく風が霙に当たり肩に掛かっていた布がずり落ちる。
そんな事一切気にしない霙は大きく笑い平謝り
「着替えたら向かうよ、じゃあな」
「ああ」
出てきた扉へ素早く入り蓋。氷雪は少し先にある雪地に手を翳すと、霙が出てきた扉同様に上へ扉がパカと開いた
「ここから中へ行こう」
『至る所に入り口があるのか』と燐火は言い、氷雪の後を付いて行く。沙智は先程の霙の装いにドキドキしながら『色っぽいと思ったら風呂上り…』と独り言を発していた
「おおっ 氷の壁!!」
「氷でできた照明!!!」
内部は氷によって作られた照明から発する光によって、反射を受けた氷の壁がキラキラと眩い光を照らしている。
とても美しい内装に沙智は興奮マックス状態
「すごいすごい! 氷のお城みたい」
昔、そんな類の人間の本を読んだ事があった沙智は想像以上の出来映えにうっとりしていた
「そこの土地で作るのだから当然なんじゃないか?」
喜ぶ要素が分からないと困ってる燐火
「へー、石英で作ったのとも又違って綺麗だね」
沙智程の興奮は無いが咲耶は感心し眺めている
「氷河、シュンデイ、連れてきた」
通路上にあった数か所の扉の一つを開き三人を中へと招き入れる。
広間では氷雪の両親である氷河とシュンデイがゆっくり立ち上がり四人へと歩み寄った
「いらっしゃい。わざわざこんな遠い所まで大変だったね」
「まあまあ、今おいしいお茶出しますね。あ、その前にすぐ部屋を暖めますからしばらくそのままで♪」
ほんわかモードのシュンデイは暖炉へ行くと火打石でカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ……
見かねた燐火が暖炉へ近づき手を翳す
「…火属ですか? よろしければこちらに火を」
「…ああ」
「シュンデイ、その前に空気通さないと」
「あら、そうでした」
火が灯され勢いが増した頃、とっさに言った氷河の一言でシュンデイは顔を勢いよく暖炉へ突っ込み上を向いては積もった雪を外へ吹き出した
「温かいスープも出しますね」
「お茶はどこいったんだい? シュンデイ」
「あら、そうでした」
顔がコゲコゲになっても相変わらず笑っているシュンデイ
「お茶ができましたよ」
「スープが温まってないよ」
「あら、そうでした」
二人の動きが緩やかすぎて見ていた三人が戸惑い出す
「………何だろ…」
「テンポが……」
「焦げてるが大丈夫なのか?」
トレイに全員分揃った頃氷雪は間に入り皆に渡した
「シュンデイは土だから心配ない。動かない分ペースは遅いようだが」
「……」
数分後、暖炉の火が部屋を暖め壁に付いていた霜が溶けると溝へ溜まり外へ流れて行く。溶けた壁からは茶色のレンガが顔を見せていた。
沙智は家の仕組みを理解し出されたお茶とスープを堪能、燐火は緊張していた体が解れ一息吐いている
「やっと塩梅が良くなった」
「火属にはここの環境は厳しいからね」
「火属の近寄りたくない里NO1に選ばれてるんですよ♪」
「それを言うなら金属もだね」
「あら、そうでした」
楽しそうに笑ってる二人に沙智達は苦笑。
後ろの方では豪快に服をバサバサ脱ぎ捨て、体を上へ伸ばしストレッチしている咲耶がいた
「んー。やっと解放された」
いつもの装いに戻った咲耶に気付いた二人は目を輝かせて寄ってくる
「まあまあ、あなたが咲耶ね。話通り可愛らしい方だ事」
「本当だね。話通り華やかでフヨフヨでひらひらでお花の様な子だね」
「そうですね、さらさらでふわふわした細雪みたいですね」
「あの……どもです…」
(氷雪は一体どんな話を……)
咲耶は後ろへ一歩下がり二人の褒め言葉?に照れ笑い
「お邪魔しまーす」
「あら霙、いらっしゃい」
「おお」
咲耶を見て安堵したか胸を撫で下ろす
「良かったー。まじで雪だるまみたいな子かと思ったよ」
「着ぶくれだって」
「この二人みたくずれてる所あるけど、氷雪の事面倒見てくれよな!」
「…………はぁ…まあ………はい…」
代表して氷雪を任せたと言う霙。氷河とシュンデイもにこやかに『氷雪をよろしく』と嬉しそうだ
「ところで氷雪は?」
「…? 部屋じゃないかな」
霙は段を上がり氷雪の部屋へと向かう。扉を開けると氷雪は何やら忙しそうにしていた
「氷雪、俺は宿と里の案内するけどお前どうする?」
「俺達も宿に行く」
「あら、こっちにはいないの?」
「宿の方が咲耶には居心地がいい」
「咲耶」
『まぁそうだね』と二人は残念そう。氷雪は手招きして咲耶を部屋へと呼び込む
「さっきの服の上にこれくらい着てほしい」
「え!!?」
咲耶の視線先には部屋一面に広がった大量の上着が絨毯と化していた
「今は中だしそんなに寒くは……」
「通路は空気を取り入れてる分外より冷える」
「いやでも…大丈夫…だか…」
「これは動きづらい…ならこれ」
「氷雪…聞いてる?」
抵抗する咲耶をよそに氷雪は忙しなく脱ぎ捨てた服を拾っては咲耶に着せ、部屋で用意した服を拾っては着せての繰り返しで咲耶の体は次第に巨大化していった
「わかった…つ…通路……通路は着るから他は動きやすくさせてっ」
「……大丈夫なのか?」
「大丈ー夫、大丈夫だから」
咲耶を思っての事なので強く出られない本人は譲歩交渉に入ると不満気味の氷雪は仕方ないと諦めた。外から見ていたギャラリーは唖然としたり笑ったり
《ギャラリーのお声》
燐〈気持は分からんでもないが…〉
霙〈相変わらずずれてんなー。嫁さん木だろ…?〉
シ〈心配性ね〉
氷河〈笑〉
沙〈狼狽中〉
「んじゃ、先に宿から行ってみよう♪」
霙を先頭に宿へ向け出発する五人。名残惜しげに氷河とシュンデイは見送っている。
普通に歩く四人だが、一人だけヨタヨタと歩きにくい咲耶が氷雪と手を繋ぎ進んでいる。先程の雪だるま以上に大きくなった咲耶の姿はもはや塊だった
「おお…!」
「……」
広く大きな空洞に出ると沙智が感嘆の声を上げる。辺りは陽が射しているかのように明るく、あちこちに店があり人々で賑わっていた
「宿は俺が管理してるんだ」
空洞内に一際大きな建物が目立つ所に建っている。外観は洋風で窓が多めの宿を霙は指差した
「広間の中央と宿には温泉を引っ張ってるから寒くないし、ほとんど外から来た旅人や頼渡なんかはこの場所から動かないかなー。唯一銀の里で活気のある場所なんだ」
見ると中央には丸く切り取られた窪みに温泉が流れ、上には丸いテーブルと周りに丸く連なった椅子、数十個ある足湯付テーブルの周囲には話し合う旅人や銀の人、店で売買する人等が確認できる
「束もここに来て話し合いする様になったしね」
「温泉という事は火山があるのか?」
「大分遠いけどあるよ。近場には湧き出た温泉があって、そこは銀が管理してるね」
火山に反応した燐火
「興味があるなら行ってみる? 温泉までなら案内するよ」
「そうだな、後で頼むかもしれない」
霙と燐火が会話してる頃、咲耶は必死になって着てる服を一枚一枚脱いでいた
「氷雪…薄着でいる人達って銀の人かな?」
「大体そうだな」
周りをずっと見てた沙智は気になる人達を見つけると、大きい袋に咲耶の服を入れてる氷雪に聞いている。
薄着の銀里人達はお使いしながら楽しそうにワイワイしていた
「…舞も来れば良かったのに……」
(美形が多い…霙さんもだし…氷河さんもだった……)
舞にとってはパラダイスだったのではと考える
「舞…連絡取れなかったしねー」
沙智によそ見してた隙に氷雪が『ここまで』とフードを被せられ咲耶はハッとした
「どこか旅にでも行ってるんじゃない?」
「…そだね」
「俺同様舞にとってここは厳しい……連絡が取れたとしても来ないだろう」
会話を聞いていた燐火の疲労ぶりを霙は察知し、部屋は一番あったかい所を選んでやるよと言う配慮をした。燐火は礼を言っている
霙の案内の元、雪があまり積もらない場所や冷風がひっきりなしな所、氷が張った水辺に泳ぐ生き物達などを見せて歩き回った
「―――ま、ざっとこんなもんかな」
一通り里の配置も教えた後、霙は宿の前で別れる事になり、手を振って広間へと向かう
「俺に用がある時はほとんど広間にいるか、いない時は氷雪に言ってくれればいいから」
礼を言い四人は宿へと入っていく。
霙は広間にいる人物に気付き笑いながら中央へ走って行った
「あれー、巡回視じゃないか。今日は賑やかだなー」
ぴた
霙の声に立ち止まる氷雪。こちらからは巡回視の姿は霙の陰になり見えるのははみ出たひらひらの服だけで、小柄な人物らしい
「束呼んでくる?」
「今日は陽も傾いたので明日にでも」
「伝えとくよ。んじゃ、部屋こっちで」
「ええ」
「白湯」
「まあ、あなた方ですか」
「え? 白湯!?」
二人の所に近づく氷雪に白湯と聞き驚いて振り向く咲耶達
「ん? 知り合い?」
「お久しぶりです」
氷雪同様踵を返し霙達の所へ歩き出す
咲「白湯って銀の巡回視だったの!?」
氷「ああ」
咲「氷雪と面識あったんだ」
燐「…巡回視は無属でないのか?」
沙「あれ…白湯は水……??」
霙「あのー、分かる様に説明して欲しいのだけど…」
「…立ち話もなんですし、座ってお話しましょうか」
四人の会話に『?』の霙、白湯は微笑み真ん中の足湯へと皆を誘った。
各自燐火以外は足湯でほっこりし、白湯も一息
「簡単に説明しますと、私は混血の水でして生まれた地は無属の地です。
この周囲近隣里の巡回視として無属へ報告しております(約八百年くらい)」
にこやかな笑みを零し楽しそうな感じの白湯に五人は真面目に聞き入っている
「ここだけの話ですが、笙粋殿に氷雪を推薦したのは私です。真面目な氷雪には好感を持ちましたので」
新事実に五人はびっくり。白湯は立ち上がると深々お辞儀する
「本当に皆様には辛く大変な旅路であった事深くお詫び申します」
「混血なら巡回視として問題ないという事なのか?」
「本来は無属なのですが、ある事件をきっかけに無属の出入りが制限されました。無属が出入り出来るのは今では染だけで他の里は混血や無属に縁のある五属になっております」
「事件?」
先程気になった事を聞く燐火に対し、白湯は事細かに説明
「鶯綺事件」
「無属の間ではとても有名です」
「一体どんな…」
少し言いにくそうにしていた白湯だが、話すべきだと思い語り出す
「………無属のトップである十天のうちの一人、鶯綺殿が……」
深刻そうにしてる白湯を息を呑んで見守る五人
「木属の青年を見染め拉致・監禁。無属が居所を突き止め二人を見つけた頃には鶯綺殿にはお子が宿っておりました」
「……」
「混血は五属の能力、無属の能力を扱う事ができ能力も秀でる為自然界のバランスが崩れる恐れがある。その上鶯綺殿は十天の一人…これ以上混血を五属の世界に生存させるのは危険と判断し、無属は染以外の出入りを完全禁止」
五人は固まっていたが気にせず一気に話す。
沙智は手を口に寄せ考え込む様に『何か凄い話…』と呟く
「その事件以降は混血は産まれなくなりました」
「じゃあ、白湯の娘さんは? 無属の血入ってるよね?」
「無属の能力は一子で終わるので娘は五属です」
「そうなんだ…」
「元々五属は無属と言うしな」
五属と無属の関係について納得する燐火。
白湯の隣に座っていた霙が新たな事実に目を丸くしている
「娘いるんだ。名前も知らなかったし」
「ええ」
「旦那は鋼だしね」
「鋼!!?」
三人は今まで以上の仰天振りで一瞬言葉を失ってしまった
咲「……」(やっぱこうなるよね…)
沙「鋼に奥さんと子供!!?」
霙〈はがねって人も知ってんの?〉
氷〈紫珠の使いだった〉
「ダメ夫で申し訳ありません…」
「一番ありえない、奇怪すぎる」
白湯が鋼の不逞振りを陳謝し、咲耶の一言で動揺した皆は騒然となっていた
「そういう事でしたので 混血は咲耶、あなたが最後の一人です」
「…! 咲耶も混血だったの?」
気を取り直しニコリと再び会話を続行。
又ビックリ発言をした為に沙智は咲耶を見た
「ああ…そういえばそんな事聞いた様な……うっすら…無属の能力なんて使えないけど…」
燐・氷「………」
右側と左側にいた燐火と氷雪がじっと咲耶を見つめた
氷「…最後の混血……」
「え?」
燐「鶯綺事件が最後……」
二人の言葉に沙智も気付く。咲耶も今までの会話を思い返し考え込んだ
「……………」
「あの……白湯………もしやと思うけど、あたしがその……鶯綺って人の子とかって言うんじゃ……?」
「はい」
身を乗り出し真向いにいる白湯に困惑しつつ訊ねる。
白湯はニコニコしながらあっさり回答
「情報通の無属ならば咲耶、あなたの名は広く知れ渡っています」
「すごーい、無属だと咲耶って有名なんだ―――」
「なるほど。無属の部屋から出られたのは旺珠ではなく無属の能力だったのかもしれんな」
「……」
「すげー子嫁にしたな」
「ああ」←咲耶は咲耶だしあまり関係ない氷雪
咲耶を中心に再び賑やかになるが、当の本人は絶句し立ったまま動かなかった
「一度…見てみたい気もするが…拉致監禁したくらいの鬼女を」
「出入り禁止じゃムリだね」
「あたしは会わなくていいよ…」
「お父上なら染周囲の巡回視をなされているので」
氷〈咲耶には鬼女要素ないな〉
咲〈ないよ…〉
「旅先で出会えるかもしれませんね」
難しい顔をして項垂れてる咲耶に対し真面目顔で言う氷雪。ギョッとして咲耶は氷雪を見ている。
白湯は両手を合わせて機嫌よく立ち上がった
「随分話が弾みましたね、私はこの辺りでおいとまします。久々に楽しい時を過ごしました、またお会いしましょう」
霙と一緒に行く白湯を見送る四人。自分達も宿の中へ入ろうと動き出す
「そういえば、地深から遊びに来てくれと度々届いているな」
「うちにも来てるよ。でも中々行けないんだよねー」
燐火に腕組みしながら『うんうん』と頷き咲耶を見る沙智
「頃合いを見て行ってみるか?」
「おー、賛成―――」
咲耶と沙智が手を挙げて満場一致。燐火と氷雪は二人が行きたいのならと言う感じだ
「計画は燐火に任せるよ」
「分かった」
「その間、木達の肥料やら刈り入れやら済ましとかないとね」
「ああ」
笑顔で同意を求める咲耶に微笑んで返事する氷雪
「明日俺達は温泉に行ってみるがお前達どうする?」
「…どうしよ?」
「……籠る?」
「じゃ、あたし達籠るから別行動で!」
「……分かった」
別段何かしたい訳でも無かったか、銀独特のスタイルが出た氷雪に頷く咲耶。
燐火と沙智は困惑気味に部屋へと進む
その間四人の談笑と大きな袋がずりずり引きずられる音が聞こえていた




