変わらない日常が幸せだ
翌日、携帯電話の着信音で僕は目をさました。
「ねえ、今日図書館で勉強するって約束してたでしょ。
もう約束の時間から15分たってるんだけど」
怒った彼女の声。
ああ、まずった。そういえば、そんな約束をしていたような気がする。
僕は彼女に謝り、すぐに出かける準備をする。
そして、電話から1時間後、ようやく彼女の待ち合わせの図書館へ着く。
図書館の中を覗くと、真剣な様子で勉強をする彼女の横顔が見えた。
僕はそっと彼女に近づく。
「・・・気づいてるわよ」
「え」
「あなたがここに来た瞬間から、気づいてたの」
「・・・ごめん」
「許さない」
「どうしたら許してくれる?」
彼女はむすっとした表情で、そのあとは何も言わなかった。
ああ、だいぶ怒らせてしまったようだ。
そして、無言で勉強をする。
なんだか空気が重い。
「ねえ、あなたは、この勉強会、楽しみじゃなかったの?」
ふと彼女がそうたずねてきた。
「勉強だし・・・いや、君と会えることは楽しみだったよ。
ただ・・・」
「ただ、なに?」
「楽しみで、昨日寝れなくて、寝坊しちゃったんだ」
「・・・本当、嘘が下手ね」
彼女がくすりと笑う。
僕もつられて笑う。
この日常が、とても幸せだって、思える。
メリーは退屈さから、外の世界へ出て行こうとする。
けれど、僕はずっとこのままがいい。