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国家認定魔物調査員  作者: 腕時計
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1話

転機はいつ起こるか分からない。


僕の場合は今日だ。盗賊見習いの僕は川で洗濯をしているとドンブラコ、ドンブラコと男が流れてきた。


成り行きで男を助けたのはいいが、この男盗賊的にはあまりよろしくない男だったらしく、

訳も分からぬまま僕ごと弓の雨に打たれ命からがら逃げてきた。

そして今現在。原因である男から職業案内を受けている。

「なので、俺は調査員となった」

「なのでを付ける理由も分かりませんし、調査員になった理由もわかりません」


僕は今、年齢不詳の男の説教?を受けながら近場の町に向かっている。

今さっきの説教で理解した事はこの男が調査員である事。

調査員とは分かりやすく言うと、

昨今増え続けている魔物の情報を収集するものである。

何の因果か知らないがそんな職業の男の手下に僕はなるらしい。


人生とは常ならぬもので何が起こるか分からない。

ほんの三ヶ月で僕の人生は無茶苦茶になった。

村が襲われ、盗賊になり、パンツ丸出しから、この男の手下となった。手下となったと言っても、この男の素性は分からない。

極端な話、コイツが奴隷商人で僕はまさに町に売りに出されに、自ら足を進ませている可能性だってあるのだ。


「あ、あのー身分証明出来るものとか…」

「ない!」


一蹴である。この顔は爽やかだが、言動は剛胆であり若干の

理不尽さを感じる男を信じても良いのだろうか。


思案している私の頭と少し離れた腹が音を挙げる。

頭は思考を働かせ、こんなにも頑張っているのに、もう少し頑張れないのか我が腹よ!


「飯にするか?」


僕が返事をするより早く腹が音をたてる。


「下品な手下だ」


男に笑われるが、グゥの音も出ない。いや出てるけど…


「ほい」


ブロック状の石のような塊の物体を差し出される。

色は土色、見るからに固そうだ。

村から出たことがない僕が、知らないだけの食料なのだろうか。

ジッとそれを見つめる僕に


「要らんのなら、しまうぞ?」


その言葉を聞いて腹も再度音を鳴らし主張する。


「い、頂きます!」


考えるのは後だ、そう思い塊を口に入れる。

…思っていたより、味は甘く不味い訳ではないが慣れない食感とよく分からない後味に少々ビビる。

そのビビったのが顔に出ていたのか男が笑う。


「変な食感だろ?それ。まぁ、慣れりゃ上手く食える」


そう言いながら、男も塊を口に放り込む。

男も食べている所を見るに毒の類でないことは理解したが、こんな食感は初めてだ。外ではこれが流行っているのだろうか?


「これ、流行ってるんですか?」

「これ?…ああ、この塊な。いや新商品つうか軍用の携帯食料のお試し品」


???何で軍のお試し品が手に入るんだ?調査員って軍関連なの?

軍と言えば、言うなれば国が設立した簡単な治安維持部隊だ。

当然、賊は縛り首だ。

もしや、この男元盗賊の僕を拷問して…顔から血の気が引いていく事が分かる。


「なんだ?表情コロコロ変わる奴だな。調査員の仕事は冒険者が国に派遣されてるものが殆どなんだよ。有能じゃないといけないしな!調査員である時点で、柄の悪い職でも優位にたてるわけだ!理解したかな?元盗賊のボウズ」

「一ヶ月しか盗賊やってません」

「でも、それも縛り首だ。」


…軍怖すぎだろ。


「話を戻すぞ。で、たまに報酬だけじゃなく、こう言う実験品みたいなもんも渡されるワケ」

「…怪しまないんですか?」

「ゼンゼン」


男がニヤリとする。


「だって、俺らは必要な人間だからな。用済みになるまで何十年かはかかる。それまでは丁寧に国も扱うさ」


確かに冒険者に依頼する理由なんて、手に負えないか、単純に人員が足りないかだ。少なくとも当分は下手な扱いはされないかも知れない。

男が笑顔を辞め、真顔になる。さっきまでの爽やかな笑顔をしていた人物とは考えられないくらいに威圧感がある。


「改めて、自己紹介する。俺の名はライネス。王国と契約している調査員だ。都合の良さそうな部下を探している」


都合の良さそうなとか…真剣な顔して言うなよ。

ーーライネス。と語った男は続ける。


「確かに調査員の活動は危険だ。単身未踏の地に入る場合もある。依頼主は国だ。だから報酬はたんまりだ。やりがいもある」


たんまりって、若干下品だな。言い方他にあったろう。


「なにより、カッコイイ!女にもてる!!」

「数十秒真面目になるのもダメなんですか………」


堪えきれずに心の声が出てしまう。しかし、不思議と目の前の男のアホらしさに不信感も消えていた。


「オ?あれか?お前クールにしとけば勝手に女が群がると思ってる奴か?」

「そ、そうだとしたら?」

「甘い、甘い。んな事してて女は寄ってこんわ!もっとガッツリだな」

「分からないじゃないですか!内面も見てくれるかも知れないし!」

「内面だぁ?バッカ内面が最初に見えるわけないだろ!親しくなるうちに見えるもので」

「あ、もういいです」


騒いでいる上司になる男の話を適当に誤魔化しながら、内心僕は喜んでいた。正直仕事内容はどうでもよかった。


自分の居場所が創られる事がただただ嬉しかった。

続きは4日以内で出します。

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