data1 神崎
違和感は膨れ上がり、教室の隅に座って授業を受けている今も僕の目線は黒板でチョークを削っている教師なんかに行かず、目の前に広がる多くの空席に向いていた。
少なくとも10人分はいる空席に対し、誰も騒ぐことなどなく、ただ普通に授業を受けている。その光景ははっきりいって異常だった。そして、同時に僕自身が異常であり、みんなが正常なんじゃないかとも思った。それは当然だろう。僕は1人でみんなは20人以上いる。普通と表現されるなら多数であるみんなに当たる。
なのに、僕はみんなに対して異常と表現している。
なぜ?それは根拠があるからだ。みんなが異常であるという決定的な証拠を知っているから。自覚しているからだ。
昨日の夜。唐突に忘れたなにか、誰に聞いても分からない。
僕はそれを自覚している。つまり、『何かを忘れた』という記憶がある。なにかがあったのにそこに何があったのか思い出せない。したことがあるのにしたことを思い出せないことを覚えている。
ひどい矛盾のように感じるが、しかし、事実であるなら信じる他ない。僕は昨日の夜に何かをしていて、その直後に僕は『なにをしていたか』についての記憶を無くした。
このおかしな現象は一体どういうことか。僕だけでは分かりそうもなさそうだった。
この学校には掲示板がある。匿名で書き込むことができる代物で、誰が運営しているのかは知らないが、一昔に流行っていた裏掲示板のように悪口なども蔓延っているが、しかし、そのような書き込みは公開されないように設定されているらしく、僕は掲示板を使ってしばらく経つが、そのような内容の書き込みを見たことがない。
掲示板に書き込む際、利用者にはナンバーが1~1000からランダムで抽出され、当てられる。そのナンバーは掲示板に入る事に代わり、誰が何番なのか全くわからないシステムである。
しかし、そんな中、1人ナンバーでないユーザーがいる。『神崎』というユーザーである。彼だけは名前が変わることはなく、利用者の間では『神崎』が運営者ではないかと噂されている。
そんな『神崎』だが、彼は基本的に日本語を書き込まないことで有名だ。
例えば今月最初の日には「hatari」とだけ書き込んだ。
そして、今日。彼は再び掲示板に書き込んだ。
「absenteeISincrease」
神崎は予言する。
「▒▒▒は▒▒▒」




