data0 噂
新連載スタート
──ねぇ、知ってる?
──知らないの?ユメの噂だよ。
──へぇ、わかった。君友達いないね?
──ははは。そんな顔しないでよ。
──えーとね。どんな話だったかな。
──君の通う高校あるじゃん?
──そうそう。あの偏屈先生が有名なあそこ。
──あの高校の図書室に表紙も裏表紙も真っ白な本があるんだって。
──あぁ、違う違う。これはただの導入だって。
──そそ。噂の本題はここからだよ。
──その本にはこんな噂があるんだ。
──ふふふ。そんなに焦らなくても教えてあげるよ。
──実は本に触れると不思議な世界に行けるって言われてるんだ。
──うん。よくはわかってないよ?だって噂話だからね。
──あはは。その世界に行きたいって?
──いや、別にバカにしてる訳じゃないんだよ。でも、やっぱりそれを言うのはすこし面白くはあったかな。
──君がいますべきことはその不思議な世界に行くことじゃない。
──わからないかな?僕がいまこの話をしてる意味が。
──うーん。じゃあ、教えてあげるよ。
──君はこれからこの噂話を広めてほしい。
──そうだね。50人ぐらいに広まれば充分かな。
──広めなかったらどうするか?
──だったら別の人に頼むとするよ。君にはとりあえずこちらに来てもらうけどね。
──こちらがどちらかわからないならそれでもいいよ。
──まだ50人にしか広められてないんだよなぁ。
──まぁ、いっか。で?どうするの?広められるか?
──んー。そうか。友達がいないから無理か。
──え?いじめられてるの?
──だからその世界に行きたいと。ふーん。
──あははは!そんなこと言ってー。まさかその世界がないとか思ってるのかな?
──へー。そうかそうか。なるほどね。
──うん。わかった。じゃあ君を1人目にしてあげるよ。
──ありがとうって。そんなこと言わなくてもいいのに。
──じゃあ、とりあえず君は〝ユメ〟に来てもらうよ。
──うん。こちら側だよ。
──せいぜい最愛の兄との思い出に耽っていてよ。
──うん。たぶん一生の別れかもしれないよ。その兄が〝ユメ〟に来ない限りね。
──おっと。そういえば君の名前を聞いてなかったね。
──ん?兄のことを知ってたのに名前を知らないわけない?
──違う違う。これはただの確認だよ。君が君であるというね。
──ん。ありがと。
──じゃあ、行こうか。優ちゃん。




