チェンジ
ドラマで幼稚園の教諭役をしたことを、リュウは念頭に置いているのだろうが。
「憎たらしいこと言ったりしたりするから、あまり可愛くないけどね」
話しながらジュンは、普段通りの道を住居フロアJ地区に向かう。
リュウの住む事務所が借りたアパートがあるのはB地区なので、ゲスト申請しなくても行き来はできる。
サテライト内の全貌を知る者は、いても一握りだろう。
生活区域や職業に合わせて、行ける場所が決められている。
地球時代の国ごとの民族ごとの宗教対立などを考慮して作られた区分け制度は、今の時代どんな意味や利益があるのかはわからない。
ジュン達市民に知らせないことで、飼い殺しにする必要でもあるのだろうか。そう言うものは見えてこないし、誰も今の状況を疑問視していないように見える。
すぐ背後で、排気音が爆発する。
改造して排気音を立てて、人を驚かせるような悪戯はなかなか収まらない。
後ろからバイクが数台、迫っていた。
乗り物は、ぶつからないよう設計されている。物損事故や人身事故による悲劇は、一掃された。
現在には過失などない。事故という名称は、人対人にしか使われない。乗り物のエンジンを切って、人力でぶつける当たり屋と言うのがいる。
怪我をさせれば、傷害罪だ。
振り向いた時には遅く、繋いでいた手をフェンダーで突かれる。ジュンはよろけて、壁に張り付く。
鞄からゴミ袋が飛んだ。封が開いて、床に虫が滑り出る。
「げっ、何こいつ、昆虫マニア!?」
外に飛び出て、息を吹き返したようだ。影や隙間を求めて、カサカサと動き出す。
虫が逃げる!
思わずジュンは、そちらにかかりきりになる。
ゴミ袋を進行方向に差し出し、進路を変えようとする虫を追い回し、ようやく袋の中に追い込む。二度と逃げないよう、今度こそしっかり封をする。
踏み潰すのが一番なのだが、ここでも振り回して気絶させるだけに留める。
一連の作業が済むとジュンは、大仕事を終えたようにホッとした。
動揺していて、完全に周囲が見えていなかった。
髪を引っ張られ、鋏を入れられる。
髪切りだ。
リュウを見ると、髪の毛がほとんど刈り上げられている。怯えきったリュウは、女になっていた。
ジュンは、激しい憤りを覚える。
「てめぇら、俺を誰だと思ってやがる!」
相手は五人。
バイク三台に分乗していた。年齢は十四、五歳の年中少年。
鋏は全て安全刃になっている。刃物の部分を手で掴んで、相手からもぎ取った。
鋏の背で、三本の縞を残して頭部を剃りあげた少年の、首筋を殴る。




