半神の子らは恋をする
「君は優しくて素敵だ。大好きでたまらない」
リュウはベッドに隣同士腰かけたまま、ジュンを抱きしめた。ジュンは、オズオズと言ってみる。
「私の方が年上でも?」
十八になるまでジュンには、少女として感じ、貯め込んだ思考の積み重ねがない。
薬でずっと男にされていたからだ。
女性体の時に死病や難病に侵されていた訳でも、先天的な病で男として生まれた訳でもない。
親の勝手で、男にされた。
愛されていなかったとは言わないが、歪めば愛も、愛ではない。ただの醜い欲望だ。
ジュンはある日目覚めたら、少女時代を失っていたのだ。
一つ一つ老いていったのなら、思い出は残る。
十二の時の最初のキスだの、十六の時の恋だの。
ジュンにはよすがになるものがない。
その癖、ジュンに突き付けられるのは、二十を超えてしまった年齢だけなのだ。
男のジュンには、この気持ちは分かるまい。リュウより年上だということが、どれほどジュンの不安と動揺を誘うかも。
リュウは、問い掛けに問いかけで答える。
「僕の方が子供でも?」
リュウは、悪戯っぽく笑う。
臆病な女の自分を心底忌避し、男性役者としてだけあろうとする。
年上のジュンを年下の少女のように扱うのは、リュウなりに大人らしさを出そうとした結果なのだろうか。
リュウにとっては年齢差は、自分の未熟さを突き付けるものなのかもしれない。
ジュンは笑いだし、すぐにリュウも一緒に笑い出す。
二人の顔はどちらからともなく近づき、ようやく唇と唇が触れ合う。そう言えば今日は二度、キスを邪魔された。
リュウは啄ばむように口づけながら、ジュンをベッドに押し倒す。
リュウは深く舌を絡めながら、ジュンのシャツの着脱スナップを外していく。二つの性を行き来する時の肉体の変化をカバーする、形状記憶の着衣。
リュウの唇が離れた隙に、ジュンは顔を背けた。
「待って、部屋の鍵」
「鍵ならさっきかけてたよ。ね、駄目かな?」
リュウの優しいと同時に、強く恋い焦がれる視線が、ジュンをからめとる。
ジュンはその瞳に抗しきれずに、首を横に振る。
リュウは言葉を惜しむように、ジュンの口を塞ぐ。リュウの手はジュンの肌を余すところなく感じようと動き回る。
ジュンはリュウの情熱的な口付けを受けながら、リュウの頭を抱くように両腕を回した。
一つの体に二つの性を持ちながら、異なる姓を持った二人が一つになろうとしている。
過去と未来で変わるものもあれば、変わらないものもある。両立できないと同時に、矛盾なく並び立つ。
地球時代の後半、増加する両性具有者に前人類は、恐怖や愚弄だけでなく畏怖も覚えた。
両性具有者は人より神に近い存在ではないかと、半神という呼び名がついたという。
半分ずつのジュンたちは、溶け合いつつも決して一つにはなれない。もう一人の自分とも、リュウとも。
「リュウ君。好きだよ」
「僕もだ」
先のことなど、どちらも考えない。考える必要すらない。
分かり合えないものは、永遠に反発し、同時に求めあい続けるに違いない。半分ずつの二人が、一つに溶け合おうとしていた。




