表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/35

半神の子らは恋をする

「君は優しくて素敵だ。大好きでたまらない」

 リュウはベッドに隣同士腰かけたまま、ジュンを抱きしめた。ジュンは、オズオズと言ってみる。

「私の方が年上でも?」

 十八になるまでジュンには、少女として感じ、貯め込んだ思考の積み重ねがない。

 薬でずっと男にされていたからだ。

 女性体の時に死病や難病に侵されていた訳でも、先天的な病で男として生まれた訳でもない。

 親の勝手で、男にされた。

 愛されていなかったとは言わないが、歪めば愛も、愛ではない。ただの醜い欲望だ。

 

 ジュンはある日目覚めたら、少女時代を失っていたのだ。

 一つ一つ老いていったのなら、思い出は残る。

 十二の時の最初のキスだの、十六の時の恋だの。

 

 ジュンにはよすがになるものがない。

 その癖、ジュンに突き付けられるのは、二十を超えてしまった年齢だけなのだ。

 男のジュンには、この気持ちは分かるまい。リュウより年上だということが、どれほどジュンの不安と動揺を誘うかも。

 リュウは、問い掛けに問いかけで答える。

「僕の方が子供でも?」

 リュウは、悪戯っぽく笑う。

 臆病な女の自分を心底忌避し、男性役者としてだけあろうとする。

 年上のジュンを年下の少女のように扱うのは、リュウなりに大人らしさを出そうとした結果なのだろうか。

 リュウにとっては年齢差は、自分の未熟さを突き付けるものなのかもしれない。

 

 ジュンは笑いだし、すぐにリュウも一緒に笑い出す。

 二人の顔はどちらからともなく近づき、ようやく唇と唇が触れ合う。そう言えば今日は二度、キスを邪魔された。

 リュウは啄ばむように口づけながら、ジュンをベッドに押し倒す。

 リュウは深く舌を絡めながら、ジュンのシャツの着脱スナップを外していく。二つの性を行き来する時の肉体の変化をカバーする、形状記憶の着衣。

 

 リュウの唇が離れた隙に、ジュンは顔を背けた。

「待って、部屋の鍵」

「鍵ならさっきかけてたよ。ね、駄目かな?」

 リュウの優しいと同時に、強く恋い焦がれる視線が、ジュンをからめとる。

 ジュンはその瞳に抗しきれずに、首を横に振る。

 リュウは言葉を惜しむように、ジュンの口を塞ぐ。リュウの手はジュンの肌を余すところなく感じようと動き回る。

 ジュンはリュウの情熱的な口付けを受けながら、リュウの頭を抱くように両腕を回した。

 

 一つの体に二つの性を持ちながら、異なる姓を持った二人が一つになろうとしている。

 過去と未来で変わるものもあれば、変わらないものもある。両立できないと同時に、矛盾なく並び立つ。

 

 地球時代の後半、増加する両性具有者に前人類は、恐怖や愚弄だけでなく畏怖も覚えた。

 両性具有者は人より神に近い存在ではないかと、半神という呼び名がついたという。

 

 半分ずつのジュンたちは、溶け合いつつも決して一つにはなれない。もう一人の自分とも、リュウとも。

「リュウ君。好きだよ」

「僕もだ」

 先のことなど、どちらも考えない。考える必要すらない。

 分かり合えないものは、永遠に反発し、同時に求めあい続けるに違いない。半分ずつの二人が、一つに溶け合おうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ