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男同士の根回し的な 2

「自分のことを言うのもなんだが、あいつはブスじゃないが、美人でもないだろう。頭はいいが、俺からすると糞真面目だし。女の時のあんたを思えば、大人しいから安心だと思ったぐらいか?」

「僕は女の自分が嫌いだ。自信がなくて臆病で。選ぶことすら許されなかった君の前で言うのも失礼だけど、僕はずっと男でいたい」

 リュートは思い詰めたように言う。

 真面目な相手は肩が凝る。

 ジュンには失礼でも何でもない。選択肢がなければ、それはそれで幸せだ。

「女の自分に似て大人しすぎるのも、押しが強すぎるのも苦手なのは確かだけどね」

 気の強い女が相手じゃ、尻に敷かれっぱなしだろう。

「本当にあいつのどこがよかったんだ?」

 見聞きしたものは一緒でも、感じる部分は違う。

 見た目が大人しそうで、猫をかぶっているわけでもないと分かるには、時間がいる。

 リュートとの間に、親しい知人としての付き合いはなかった。

「彼女に一番聞かれたくない問いだけど、彼女は一度も聞かないんだ。聞かれても困るんだけど」

 リュートは、浮かない顔だ。

「ファザコンで死んだ父親に似てるとか、前の彼氏に似てるって理由で俺と付き合いたがった女はいるが、お前もその口か?」

「一目惚れなんだ」

「何が悪いんだ。外見にひかれるようなのは、本物の恋じゃないとか言うなよ?」

「エキストラで、喫茶店で本を読む姿にひかれた」

 一目で性格に惚れるというのは信じない。普通は外見、というより佇まいや仕草というべきか。

 ドラマのエキストラというなら、実際の本人ですらない。

「次に高校生役をした時も、すぐに目がいった。雰囲気も違うし、場面にしっくり馴染んでいるのに、ああ彼女だってすぐ分かる。話したいなと思って声かけたはいいけど、そういうのも初めてで、緊張で頭が混乱して付き合って欲しいって言ってしまった」

 う。気持ちはよくわかる。

 ジュンも一生面倒見てやるだの、お前の為に危ないことはやめるとか思ってもいないことを口走ってしまうことがある。

 言わなきゃよかったとは思わない。

 気付かなかったが、それも本音かもしれないと言ってみて初めて気付く。

 もちろん遊びやプレゼントの約束をして、しまったと思うこともある。

 

 ジュンは一応危ぶみながら、

「後悔はしてないんだな」と、確認する。

「うん。彼女、びっくりしてたけど別にいいって言ってくれて、その時付き合えるなら 嬉しいなって思えた。付き合いだしたら、やっぱり成功だったし」

 リュートは本当に幸せそうに笑う。

 

 覚えとけジュン?

 その笑顔と言葉は、女のジュンにこそ聞かせてやるべきだろう。

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