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団欒 5

 面白いことに、女のヨウが男のシュリに命令しても、シュリはやだもんと言って逃げるだけで、喧嘩にはならない。

 

 ランはデスクで会計処理をしながら、リュートに笑いかける。

「子供の相手も面白いだろう。疲れはするけど、見ていて飽きない」

「ええ。結構、新鮮でした。僕等ぐらいの年って、小さい子と会う機会ってまずないから」

「ヨウはもう帰るし、アキが来るのは間があるし。あとはもういいよ。出かけたかったら夜も出ていい」

 部屋でいちゃついていても、邪魔はしないと言うジュンへのサインだ。

「帰っても暇だし、もう少しここにいてもいいですか?」

 リュートは、ジュンではなくランに了承をとる。

「なんなら、夕飯も食べていくかい? 夕飯はタンドリーチキンカレーを煮込んである。男の方が胃袋もでっかいから、食べ甲斐もあるだろう」

「うわっ、嬉しいな。あのお米と野菜の入ったお肉、僕ならもう一切れ食べられたのに、残念だったんですよ。おいしかったのにお腹一杯で」

「そう言っても、デザートは入るんだもんな。別腹とか言って」

「性転換の時に消化が早まるのと同じで、デザートを前にすると消化が早まる他に、女は最初から、デザートの分を分けて食べるんだろうさ」

 ランは大抵、女でいる。男の時でも背はスラリと伸びて、年齢を感じさせない。

 女のランと違って無口で、夜間保育もなく仕事も終わった時など、煙草を燻らせ酒を飲む時ぐらいしか男にはならない。

 ジュンが話しかけても頷く程度で、お喋りをする気にはなれないようだ。

 

 リュートが帰りたいと言わないのでジュンは、誘う。

「俺の部屋、見る? 好きな女の部屋って、見てみたいものじゃん?」

 リュートが頷く。

「右側の二番目の扉。俺の名のプレート掛かってる正面のは、実際は風呂とトイレだからな。先、行って」

 ジュンはリュートに教える。ランに近寄り、そっと耳打ちする。

「薬、飲んだ方がいいかな?」

「自分で決めな」

 ランの声は素っ気ない。

 女のジュンに、気を使っているのだ。女の気持ちなら、ランの方が分かるだろうに。


 リュートはオフィスを出ていく。ジュンも後を追う。リュートはジュンを待たずに、扉を開ける。

 中に入ろうとしないので後ろから覗き込んで、ジュンは己の額を叩く。

「ああ、しまった。女は脱ぎ散らかさないけど、出かける前にファッションショーするんだもんな」

 ベッドの上に、服が三着並べてある。

 前の日に着て行く物は決めているのに、朝になるとまたぞろ服を引っ張り出して、ゴチャゴチャする。


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