団欒 4
「偉いな、ヨウ」
女もだが、子供というのも不思議な生き物だ。ジュンだって、昔は子供だったんだが。
ヨウはシュリと離れられ、大人三人に囲まれて機嫌を直している。
「ジュース、ちょうだい」
「あいよ」
ジュンは言って、冷蔵庫に向かう。リュウが、声をかけてくる。
「俺は、そろそろ帰るよ。仕事の前に、寄るとこあるから」
リュウは、酒場でバーテンとして働いている。
「あー。何か、ガキの相手だけさせたみたいで悪いな」
「汚い言葉、遣っちゃダメなんだよ」
「失礼しました」
女の子というのは、小さい頃から細かくて口うるさい。年下の面倒も、好んでみる。
「仕事上、関われないから面白くてさ。また来てもいいか?」
リュウは、何かをジュンに気付いて欲しがっていたという。同時に知られたくないとも。
よりを戻したいというのも、あながち冗談ではないのか。
「ランがいいなら、いんだろ? 働かされるだけ働かされて、金は出ないだろうけど」
ジュンとリュートが、付き合うと決まったわけではない。
向こうが望むのであれば、男のジュンはリュート、女のジュンは今のままでリュウと付き合えばいい。
「ランさんは来てもいいって。ランさんのご飯が食べられるなら、御の字」
「オンのジって知ってる。ありがたいってことでしょう?」
ジュン達は、何千年も続く言葉の歴史の上に立っている。
千年前の人間は生きていないが、千年前の言葉は今も生きている――時に意味も形も変えながら……。
ジュン達の時代に生まれた俗語も、千年先の未来に繋がっていくのかも知れない。それを思うと面白い。
リュウは帰り、ジュンとリュートはキッチンでヨウの相手をしていた。、
リュートは落ち着いたのか、少年に戻る。
幼いヨウは不安定な時期で、性別が変わったことにも気付かないで、男になったり女になったりを繰り返す。
シュリと一緒にいても、お互い自分の遊びに身を入れている時は、喧嘩にもならない。
十代になると、一つの性から別の性に移ることに、心が戸惑う。性差の少ない現代人でも、十代は性の発達する時期だ。
自分の体とそれに付随する心の違いを意識し、受け入れていく。
ジュンには覚えのない感覚だ。男でいるのが、普通だったから。
ヨウの帰る時間が近付いたので、キッチンからオフィスに移動する。
マルソーは買い物から帰ってきた親に、引き取られていた。
ヨウとシュリは先ほど喧嘩をしたことも忘れて、仲よく男同士で遊びだす。つまりはシュリに、ヨウが顎で使われながら。
女のシュリに命令されても、男のヨウは喜んで従う。




