団欒 2
ボーガンの女性形は、ジュンは一度も見たことがない。ベルは女の時は少し太めと言える程度だが、男の時は肥満体もをいいところだ。
ボーガンがいつも男なので、役割分担は分けているのだと思っていた。
ボーガンは元々引きこもって、殆ど人と会わない。家の中では、女だったのかもしれない。
生むのはどちらが生んでもいい(と言うから上の子は妻から、下の子は夫から生まれるということもある)が、父親役と母親役は入れ変えないことが法律で定まっている。
女の時でも父親は父親、男の時でも母親は母親。
そうやって子供たちは、二つの性に慣れていく。
ランは平然と頷いた。
「それでベルが、俺んとこに来たわけだ」
夫が妊娠したんで、一人寝が淋しくなったのか。
パートナーの妊娠が、浮気のきっかけというのはよくある。
それで離婚に発展しても、子供を堕ろそうとする妊婦はまずいない。子供を産むと決めると、女は強くなる。
ボーガンの強さもそこからきていたのか。
「しょせん子供って、憐れまれたわけだ」
ジュンは納得していた。
オフィスの方から、キーッという金切り声が聞こえる。
ランが軽く肩をすくめた。
「おやおや、お出ましだ。一人こっちに連れてくるよ」
カウンターから離れて、キッチンの外に歩き出す。
「来るのはヨウにして。シュリは、女がいるとうるさい」
女同士のヨウとシュリは、掴み合いの喧嘩までする。
基本的に女の子は大人しいんだが、男の子と取っ組み合いをする子もいる。
「結構大変そうですね」
「だろう? お泊まり保育となるともう、勘弁って感じだぜ。あいつもよく、やいやい言いながらガキどもを追い掛け回してるよ」
「私は小さい子って触れ合わなんいぶん、苦手で。あの人は、うまそうですね」
「ああ、あいつは子供好きなんだ」
ジュンの仕事場を見たがる女もいるが、連れて行く相手は選ぶ。ジュンはふと気づいて、
「あー、もしこれからもジュンのところに来たいって思っても、子供の世話なんかはさせないから」と、言っておく。
女というのは小さい子供喜ぶことが多いが、若い男にとったら幼児なんて遥か彼方の生き物だ。
仕事でなければ、ジュンも好んで関わりたいとは思わない。自分の子供も、当分はいらない。
女のジュンは、子供が欲しいと思うだろうか。いつもその辺に一人か二人いる子供ではなく、自分自身の子供が。
リュートが微笑んで頷く。ジュンはさらに勢いを得て、言い募る。
「それから俺のことは気にしないで」




