表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/35

団欒 1

 女をいたわれという意味で、ジュンは虫との遭遇をジュンに押し付けたがっているようだが、そうはいかない。

 男だって、気味悪いものは気味悪いのだ。


 食事が終わったのを見計らい、ランがデザートを出す。きょうはチョコレートのババロア。

 女の子らしくリュートの顔が緩んだ。ジュンの前には、緑茶のカップが出る。

 リュートが気付いて、

「甘い物、嫌いですか?」

「いや。そんなこともないけど、女の俺に怒られるから。大して好きでもなくて腹の足しにするぐらいなら、自分のために残しておけって」

 その気持ちは分かると、リュートが笑う。

 少し緊張がほぐれてきたようだ。会ってから、初めて見る笑顔だった。

 ジュンも一安心する。

「ボーガンさんが払いに来てくれたから、今のところ明後日は空いてるよ。保育の予約はミチル一人だ。他に一人か二人来ても、あの子なら誰とでもうまくやるから、休みにしてくれても構わない」

「今は何とも言えない。息子に怪我をさせたと、怒鳴り込まれないとも限らないし」

 相手に怪我をさせた時でも、こちらに非がある振る舞いはしていない。逃げられるのに腹が立って、持っていた鋏をぶん投げたら背中に当たりましたは、過失だ。

 バイクのブレーキに手をかけたのも同じこと。

 ランは、法律の裏の裏まで知り抜いている。ジュンも決してヘマはしない。

 明らかに意図的であり、起こることが確実に推定できても、それを立証するのは無理だ。

 ジュンは不起訴。しかしそれには、迎え撃つ準備もいる。

 ランとの仕事も予定が立てられない。その日になって子供が預けられることもある。祖父母が危篤だ、家族が緊急入院だの。

 女のジュンは予定が狂うのを嫌がるが、ジュンにはそれが面白い。


「それにしてもボーガンの野郎。どうした風の吹き回しだろう」

 自分から出てきて、しかも払いまで済ませているとは。

「子供ができたからね」

 ランはあっさりという。

「誰に?」

 聞いておいて、ああ奥さんにかと思う。

 愛人に、となったら問題だろう。しかし夫婦の合意があるなら別だ。

 男のあなたとは結婚したいが、女のあなたとは付き会いたくないとかある。女の時にも男の時にも、互いにぞっこんと言う例もないではないが。

「ボーガン」

 ランの返事に、ジュンは飲んでいた茶を吹きそうになる。

 両性具有が一般的な現代には、当然の帰結だ。

「もちろんベルの子、だよな?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ