チェンジングボーイ10
「おねえちゃん、ジュンの新しい彼女?」
ヨウの言葉に、ジュンは顔色をかえる。
「こらこら」
「こいつすぐ女、変えるんだよ」
「そう。捨てられるから」
シュリとヨウは、とんでもないことを言ってくれる。
「余計なことはいわないの」
ジュンはシュリの頭をつつく。シュリは、「フーンだ」と生意気に言って、走り出した。
ジュンは、静止モードに切り替わったアヒルを拾い上げる。
リュートは、戸惑い気味に聞いてくる。
「これどうしよう?」
「あっ、箱に入れて。部屋ん中走り回ってくれるのは、子供だけで十分だってのに」
ジュンは、箱に一匹戻した。リュートも側にくる。
「可愛いですね。子供達のために作ってるんですか?」
「暇つぶし兼、預かり中の子供の遊び道具、買い手がつけばマニアや子供にも売る」
ジュンはランの机の下に逃げ込んだ一匹を、机の下にもぐりこんで捕まえにかかる。
リュウはもう一匹捕まえて、しゃがみ込んでマルソーに触らせてやっている。
リュートに人見知りしてマルソーは、元通り女の子に戻っていた。
子供の時は、ちょっとした気持ちの変化で性別が変わる。意識をする思春期頃になると、動揺が収まるまで性別が変わらない。
二十歳を過ぎてやっと、自分の思いで変わった性別を戻すことができる。
シュリは寝そべり、ヨウはしゃがんでアヒルを覗き込み、つついている。
リュウが一匹手に持っているし、一匹ぐらい出しておいても平気か。ジュンは、捕まえた三匹目を箱に戻す。
ジュンは、
「ランが飯の用意してくれるって。二人とも食う?」
「俺はいい。腹減ってないから。この子達と遊んでるよ」
ワーイワーイと、ヨウとシュリが無邪気に喜ぶ。
あの二人は、男の時には仲がいい。両方女になった時は、大喧嘩をするので注意が必要だ。
「何か手伝わせてもらうのに、私が話してきます。キッチンは?」
ジュンは、奥に向かうドアを指し示す。
「幾つもある思わせぶりなだまし絵的扉は気にしないで、通路なりにいった突き当たりのが出入り口だから」
リュートは軽く頭をさげて、逃げるように扉に向かった。
リュウがアヒルを抱いてやってくる。
「ふーん。いい子だな」
ジュンは急に、不安になる。
「お前、彼女に変なことしてないだろうな?」
リュウはジュンと違い、まだ真面目そうだ。神経質なところも外見に表れているが、そこそこ顔もいい。
女のジュンは、リュウを心憎からず思っているふしもあった。真面目そうなリュートからすると、ジュンよりリュウの方がタイプなのかもしれない。




