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サテライトガール2

 今日は、学習チャンネルのコマーシャルの仕事だった。ナレーションの仕事はこれまでにも何度かやったが、顔を出すのは初めてだ。

 白いスーツにベージュのローヒールのパンプスというありふれた格好も、ジュンには物珍しい。

 化粧室のドアには、サテライトスタジオにようこその文字が躍るボードが張られている。いかにもアマチュアや 半プロ向けという感じで、ジュンは空しさを覚える。

 もっと上を目指せるとか、目指したいと思っているわけではない。

 今までと違う自分、違う生活がしたいだけだ。

 

 ジュンは襟付きシャツとパンツの私服に着替え、さっさと第3フロアを後にする。

 そのあとエレベーターで、カードスロットに差し込み、第6フロアに移動した。

 スタジオ内部でも、行ける場所は限られている。

 エキストラや外部スタッフが、スタジオ入りを利用して、他のフロアで有名人に近づいたり、愉快犯が悪戯を仕掛けられないようにするためだ。

 と言ってもそこまで厳密ではないので、撮影がある日であれば、出番がなくてもスタジオには入れる――ジュンがこうして、向かっているように。

 ついた先は、フロア6の3スタジオだ。

 中に入ると、何かいつもと様子が違う。

 何かと思うと、人気司会者のマサが、ドラマの紹介をしている。

 アポなし取材が入ったらしい。

 台所のセットを撮っていて母親役の女優ケイが、細部までこだわって用意された食器棚の下の棚を見せていた。

 二千年紀ふうのホームドラマ。

 今のところ視聴率は安定していて、もうしばらく打ち切りの予定はない。お陰でジュンも仕事をもらえるチャンスがある。

 最初にエキストラ出演したドラマなどを、打ち切りが決まってエキストラ枠が空いていたのに潜り込んだぐらいだ。

 ジュンは、フリーのエキストラだ。俳優養成事務所に入ると、時間の自由が利かなくなる。

 どうしても、現在の生活を捨てるわけにはいかない。その点エキストラなら(次に指名してもらえない不安はあっても)都合がつかなければ断れる。

 エキストラ出身の実力俳優は、珍しくない。

 場面を把握する天性の才と演技力がなければ、エキストラでは生き残れない。

 エキストラは、時には場面しか指定されない。

 例えば喫茶店の客、だのスーパーの買い物客、など。

 自分が思う相応しい服装、動きでリハーサルに臨む。

 ディレクターの望む外見・動きができていれば、本番にも使ってもらえる。

 喫茶店の客、銀行の窓口嬢、幼稚園の教諭に女子高生三回、買い物客と。今のところ依頼のあった回は、一度も落としていない。

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