チェンジングボーイ6
「あたしはここだよ。騒がしい子だね」
ホールのカウンターだった場所が、いつものランの事務所のデスクになっている。デスクの前で座り込んでいた三人の幼児が、ジュンを見て立ち上がった。
「おっさん、おせー」
「おっさんはやめろ、ジャリども」
「あんたのその言葉遣いも、おやめって言ってるだろうに全く」
駆けつけて来た子供たちに足にまとわりつかれ、ジュンは悶絶する。
足がしびれている時に、こいつらは。
「やったー、やっつけたぞー」
ワーワーキャーキャーと喜ぶ。
ジュンは怪獣か?
「俺に怪我させる危険なガキは、二度と預からないぞ」
ジュンが怒ると、子供たちは不貞腐れた。
保育で預けられている、近所の子供たちだ。
ランは金縁の眼鏡の奥の目を光らせて、
「確かに尾行の確認程度にしては、長くかかったね。あんた、目くらまし程度で、また迷ったんじゃないだろうね?」
図星だ。迷いかけた。
年齢は、七十歳にはなっていないのか?
銀髪で皺はあるが、年齢の読めない顔立ちに、年を感じさせない体の動き。頭も口も、達者なものだ。
「違ぇよ。家の前でボーガン夫妻に捉まったんだ。妻のほうが清算日はいつかって言うから、思い出して明日だと答えてたら旦那が来て。完済したって、本当?」
忘れないうちに、ここで聞いておく。
「ああ。でも明日じゃなく、明後日だけどね」
今、明日って言ったっけ?
「本人達には間違わずにそう言った。ゴチャゴチャしてたら、カイルまで来たんだ」
ランの顔色がハッと変わる。
ランの本業は便利屋ではなく、プログラマーだ。お陰で冗談や手すさび程度で、家の内部まで三次元映像を投射する。
前には朝起きて部屋から出たら、ジャングルだったこともある。その時ジュンはドアをバタンと閉めて、ランが呼びに来るまで食事にも出て行かなかった。
虫が飛んでいたんだぞ、虫が。
「あんた、何か言ったのかい?」
ランも不安そうだ。
後で声をかけてきた男は、カイルと言う。プログラマーなので、ランの同業者だ。
コソコソとランのことを嗅ぎまわっていて、ランもカイルの存在は気にしている。
ジュンが脅して片がつくならいいが、カイルはひ弱なヲタクではない。
今の時代には珍しく、戦闘訓練を受けている。ジュンも決して弱くないが、我流だ。
ランに言われずとも、つっかかって行く気はない。
「言いたいけど、言っても仕方がないし、向こうもボーガン達とのやりとりを説明しただけで離れていった」




