三角関係?
五歳と三歳ぐらいの男の兄弟が、きょとんとジュンを見あげてくる。
うーん。いいのか。
ジュンは抱き付いたままの二人に、両腕を巻き付ける。すると状況を見守っていた老人が、
「いっぺんに、二人は突っ込めねぇだろ」
おいおい。子供の前だぞ。じいさん。
だが、リュウ(元の方)が、まだジュンと付き合うつもりでいてくれるのは嬉しい。
リュウが別れるといって、元カノが復縁を望むのなら、そっちのリュウと付き合うのも嫌ではない。
エレベーターが目的地に到着すると、ジュンはホッとした。
「ついた。行くぞ」
その区画では、年寄りとジュン達が下りた。
歩き出したところで、もう一台エレベーターが到着する音を聞きつける。
ジュンは元カノとリュウをくっつけて、サッと前に押し出す。
「お前、道、分かるよな。先、行っててくれ。つけられてないか確認するから。ついでにこれ、ランに渡して」
鞄から虫入りのゴミ袋を出して、元カノに抛る。
男になっても、虫は苦手だ。
でかい図体でと思われるが、こればかりはしょうがない。
ちなみに女のジュンは、ローラーで壁乗りはできない。
元カノが、袋を開けて覗きこもうとするので、
「馬鹿。顔、刺されたいのか」と、叱る。
何を考えているんだか。
元カノは ランのところで働くジュンの役割も弁えていて、リュウの腕を引っぱって先に進み出す。
ジュンは、エレベーターから出てくる人間を観察する。
J地区の住人(名前は知らないが)と、その彼女に。最近離婚したセイ(ジュンに気付いて手を振るので、手を振り返す。ランの弁当を届ける常連だ)あと一人、見知らぬ十代の少女。
ジュンをチラリと見る。こいつだろうかと一瞬、思う。
少女はすぐにジュンから目を逸らし、何かを見つけると踵を返して駈け出す。
「おじいちゃん。お土産忘れてどうするのよ」
なんだ。ジュン達と一緒に下りた年寄りの縁者か。
呼び止められた年寄りは、いま気付いたというように頭を掻いている。
少女は、家までの道分かる?ついて行こうかと、念押ししている。
それ以上誰も出てこず、エレベーターは去った。
ジュンは一応、元カノがとった道と変えて、ランの家に向かう。
ラン自身、闇討ちを懸念して、家を見つけにくいようにしてある。見方を心得ている者なら、カモフラージュも効かない。
最悪なことにジュンは見方が分からないため、自分の家となった場所を探してしょっちゅう迷う。
リュウは一人でもランの家に行ける。だからこそ任せたのだが。




