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彼と彼女と彼女と

「リュウ」

 何気なく呼び掛けると、エレベーターの中のリュウも顔をあげた。ジュンは慌てて、

「あー、こいつもリュウなんだ」と、以前に付き合っていた相手を指さす。

 両性具有が一般化した現在では、性別を感じさせない名前が好まれる。時代も国も超えて、中性的な名前を集めた名付けのリストがある。

 男優または女優オンリーで活躍する俳優は芸名として、男らしい、女らしい名前を付けたりもする。

「どうしてたんだ。元気か?」

「まぁね」

「嫌じゃないなら、ランのところにたまには顔出せよ。ちびどもが喜ぶ」

「今から行ってもいいかな?」

「別に構わないだろう」

 ジュンはエレベーターに乗り込む。後からリュウも乗ってくる。

 名前が同じなので、ややこしい。元カノと今カノと言うことになるのだろうか。

 元彼女は、ジュンの頭と腕を見て、

「相変わらず、ボロボロの体ね」

「なんだよ。それ。今日はついてなかっただけだ。髪切りにはあうし、バグにはやられるし。ランのところで働いてたら、生傷が絶えないけどな」

 リュウは、顔を上げて不安そうにする。

「危ない仕事なの?」

 男の時でも女の時でもリュウは優しい。ジュンが答えるより先に元彼女が、

「こいつが馬鹿なだけ」

 男の時にはランにも、馬鹿だ馬鹿だと評される。

 女の時には、しょうのない子とは言われたことはあるが、馬鹿だとは言われない。

 女に向かっては、馬鹿とは言わないものなのか。男の時のジュンだけが、馬鹿なのか。

「お二人は、付き合ってたんですか?」

 リュウはジュンを見あげる。

 敬語に変わったのは、ジュンから気持ちが離れたというサインなのか。

 ジュンではなく、元彼女がそこでも答える。

「こいつもを二十二だし、この外見だよ。何? 女の時のこいつしか見てこなかった? この姿が想像つかないほど、真面目そうな雰囲気だもんね。頭もいいし」

 性別が違うと、遺伝子の表れる形質も変わる。男の時は太りやすいとか、女の時は髪と眼の色が違うとか。男女の時で、激変する者もいる。

 片方の性別で難病が出た時など、薬で健康な方の性に固定することもある。外見や、性の好みで一方に拠っている者もいる。

「俺はそんなに馬鹿か?」

「うん」

 遠慮も何もなく即答で返されると、言い返す気力も失せる。

「男になっても大人しそうな相手がいいなら、私がとっちゃおうかな。より戻すのに」

 元カノが言って、ジュンの腰に腕を回し、抱きついてくる。

 右に元カノ、左に今カノ。

 この状況って喜ぶべきなのか、まずいのか。

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